67
「そ、そちは、我の手が汚いと申すのかっ!」
「そう言う意味ではございません。赤子というのは、人にしても龍にしてもデリケート。余計な菌をつけるわけにはいきませんから、当然の常識として申しているのです。」
って、消毒ってのが、この世界の常識にあるかどうかは知らないけどね。
「重ね重ね失礼な・・・いくらドラゴンマスターと言えども、庶民のくせに~。」
なんだろ、この小物感漂う、男は・・・。
誰かに似ていると思ったら、学生時代に孤児院育ちだからって、馬鹿にしてたあの子供の親だ。
「私の客に、何か御用ですか?ダンカン伯爵。」
低いドスの聞いた声。
私にかかるその人物の影は大きい。
「セ、セイラン殿。」
男は、セイランに、親切心で声をかけたのに、汚い手でドラゴンを触るなと言われたこと、私の態度が貴族に対する不敬に当たることなどをまくし立てた。
「えーと、子ドラゴンを消毒しない手で触れることは、禁止されていることですし、聞いていた会話の内容からすると、汚いなどとハッキリ言ったわけじゃないと思いますがね。」
セイランはニコニコしている。
ごつい男の笑顔って迫力だね。
「それに、このドラゴニアでは、貴族は庶民を守るためだけに存在するもの。むやみに虐げてはならないと書かれてますからね、国王に対する言葉でもあるまいし、不敬じゃないでしょう。」
男はワーワーと喚きながら去っていった。
「何なの、あれ。」
「ドラゴニアでは珍しい選民思想の貴族様だ。ま、気にするな。あいつは、国王にも嫌われてる。」
「そなの?だったら、出世もしないね。」
「だな。・・・で、それがドラゴンの子か。」
セイランが覗き込むと、先程まで伯爵に威嚇していた子ドラ達が、可愛い声を上げた。
「子ドラってのは、可愛いもんだな。」
セイラン曰く、ドラゴンは、自分の子供がある程度大きくなるまで秘密裏に隠すらしく、このサイズのドラゴンはホントに珍しいとのことだった。
あの連れて行かれた白ドラゴンもきっとこの子達を育てたかっただろうな。卵のあった彼女の巣は、空から見たとき、分かりにくい地形を利用しているようだった。
「この子達どうなります?」
「うーん、とりあえず、谷に連れて行って、王にお伺いを立てるしかないだろうな。暁、お前も来いよ。」
一瞬、硬直する。
「いや、私はいらんでしょ。私は、りうを探さなきゃならんし。」
「ネコってヤツか。んな珍しい生き物、谷の王くらいしか知らんだろうよ。」
谷の王!
「ドラゴンの王様なら、りうのことを知ってるっての!!」
私の勢いにセイランが押される。
「私、とにかく、りうに会わなきゃならないの!連れてって!!って言うか、行くっ!」
部屋を飛び出しかねない勢いの私をセイランが止める。
「ま、まあ待て。俺も久しぶりだからな、一緒に行こう。」
よし、セイラン、道案内せよっ!
「なんか、暁って、偉そうだよな。」
ぼそりと呟いたセイランのことは、放っておいた。
つづく




