@6…幽雅に咲かせ、墨染の桜【後編】
ドドドドド!!
「流石に…強いな…!!」
咲夜さんの忠告は間違いなかった、明らかに押されている俺。
弾の量、正確さ…何を取っても相手より劣っている。
一方、相手はかなり余裕そうだ。
「そんな弾じゃ私は倒せないわよ?」
「まぁそうだろうなっ!」
連射数を上げて相手に対応する!
「やるわね〜。」
口だけだと直感が言う。
まだまだ余裕のようだ。
「砲符『エキセントリックバルカン』!!」
これでなら崩せるか!?
「亡舞『生者必滅の理-死蝶-』」
なっ!?
黒い蝶…だと!?
俺の弾は黒い蝶に阻まれ、目標に当たらない。
お返しに黒い蝶達から放たれる弾丸!!
「ぐぅっ!!」
防御体勢を取り、なんとかやり過ごす。
「敵から目を離しちゃ駄目よ?」
いつの間に接近していたんだ!?
魂を抜かれては終い、故に距離を取る!
「かかったわね。華霊『ゴーストバタフライ』」
突如、俺の周囲に現れた黒い蝶!
「一斉掃射〜♪」
全方位、360゜からの射撃!
「ごふっ!」
流石に守り切れない、ダメージは蓄積する一方だ。
「そろそろお終いにしましょ?『反魂蝶』」
幽々子の周りに集まる、黒い蝶達。
「やるしか…ないか…!砲符…!!」
俺は蝶を消し去る為の最善策を取った。
「『一分咲』」
「『リヴァイバル』!!」
蝶達が俺に迫る!
そして俺は蝶を撃ち落とす!
「面白いわね…!あら?」
幽々子は気付いた。
長年咲かなかった桜が…蕾を付けている。
「(もしかすると、この桜は…)」
「余所見してんじゃないぜっ!!」
隙を突いた!!
…はずだった。
「…釣られすぎよ。『反魂蝶-八分咲-』」
蝶…!?
弾が見え…
目の前が、光になった。
「…やっとやられたのね。さて、貴方の魂、頂くわ。」
幽々子は地に伏した玲奈に少しずつ迫る。
「(賭けだ…!照準『ハイパーグラビトンレンズ』)」
小さく…小さくレンズを作る!
「強靭な貴方の魂はきっと綺麗だわ…ずっと私の側に置いてあげるから、恐れる事はないわ。」
そっと玲奈の頭に手を置く幽々子。
「…砲符…『リヴァイバル・改』…!」
「綺麗ね、貴方は…っ!?」
幽々子が光に包まれる。
「…決まったな…!」
「あ…貴方…!?何をしたの…!?」
逆に仰向けになった幽々子に、レナは種明かしをする。
「レンズで俺の力を収束した…!」
「やるわね…!だけど、私は倒れないわ!」
「まだか…!!」
レナは能力で傷を癒し、立ち上がる。
「私の勝ちよ。貴方にはもう勝ち目はない。今のが貴方の切り札みたいだし、私はまだ切り札を切ってないわ。」
「…だろうな!逆に言えば、その切り札を潰せば俺の勝ちだ…!」
…後は俺の体力に賭けるしかない。
スペルカードは使い尽くした。
ならば、後は己の身体のみ。
「桜符『完全なる墨染の桜-開花-』」
弾という厚く、高い壁に生身一つのみで立ち向かうのは無謀かもしれない。
だが、そうでもしなければ倒せる算段はなかった。
「突破してやるよ!うぉぉぉぉぉ!!!」
真正面から突っ込む!
「愚直過ぎるわ…!よりによって1番弾の密度が分厚い場所に突っ込むなんて!」
確かに真ん中は弾の密度が高く、とてもかわせるレベルではない。
「もってくれよ…!俺の身体!!」
全身、ありとあらゆる場所から痛みが走る。
それでも彼は進む、弾の波の中を!
「自殺願望なの!?死ぬわよ!?」
「『普通の』…『人間』…なら…そうだろうな…!」
弾を掻き分け、一撃の用意をする!
「死にたいなら勝手にしなさい!」
さらに弾の密度が増える!!
「だが…残念ながら…俺は普通じゃねぇ…!」
「!貴方…もしかして…!?」
幽々子はやっと彼の正体に気付いた。
「…俺は人間だ…けど…『普通の事じゃ死なない』人間なんだよ…!」
「くっ!」
距離を取り、幽々子は自らが創った弾の壁を注視する。
壁から出て来た…
火傷だらけの相手!
しかし、その火傷はまるで生まれ変わるかのように元の肌色に再生する!
「…そう、貴方も死ねない人間なのね…」
「なんでかは知らんが、死ねないな。…切り札、突破したぜ?」
「そうね…此処からは同じ土俵に立つのね…!」
お互い、後は体力の戦い。
「どっちがタフか、白黒つけようや…!」
「…そうね…!」
同時に地を蹴る2人!!
扇子の一振りで皮膚が裂け、鮮血が舞う。
一発の殴打で、身体の内側にダメージを与える。
「俺は…!」
「私は…!」
「「貴方を倒す!!」」
「…俺の…勝ちだ…」
「まだ…私は動けるわよ…」
二人は向き合い、止めの一撃を加えようと相手に向かう。
が…
両者の体力は限界をとうに越え、これ以上戦える状態ではなかった。
レナと幽々子は同時に、地に崩れ落ちた。
ドサリ。
そして永かった冬も…
終わった。
「玲奈さん!?」
「幽々子様!?」
両者に駆け寄る妖夢と美鈴。
二人共倒れている…それは、両者の力は互角だったと言う事であり、勝敗は付かなかったという事であった。
咲かなかったはずの桜が、蕾を開く。
新たな季節の始まりを示していた。
次回予告
「Extra-1…小さき魂は主の為に」
魔理沙、ついに八雲紫を発見!
霊夢を救うべく奇襲を掛ける!
お楽しみに!