朝日を浴びて
6日後。
目覚め。
あの日、師匠が居なくなった日から、もう一週間が経った。
未だに実感が湧いてない。
あんなに強くて、かっこよくて、優しくて、ぐうたらで朝寝坊で泣き虫で・・・は余計だが、そんな師匠が死んだなんて信じられない。
しばらくしたら、ひょっこり帰ってくるんじゃないかなんて、思ってしまう。
その時、部屋の戸が乱暴に叩かれた。
「あんた、今日学園に行くんだろ?寝坊助なのは師匠譲りかい?」
気づけば部屋にはかなり陽光が真っ直ぐ射していて、夜明けから割と時間が経ったことが分かった。
師匠に貰った服に着替えて部屋を出る。
荷物をまとめた僕はロビーに居た。この一週間で女将さんから鞄やら非常食やらを貰って自分の荷物は完成させていたのだ。
師匠のものだった荷物の一式を女将さんに渡す。
「いいのかい?私が貰っちまって。」
「僕が持っててもしょうがないですし。大事に持っといてください。」
「後であの女がどんな物持ってたのか鞄の底まで漁ってあの世のあいつを揶揄ってやるわ。」
冗談か本気か分からないが、まあ友達だったらしいし良いか。
「早く行きな。」
夜明けの陽射しは今日も差し込む。
「また、いつか。」
女将さんはため息を吐いて言った。
「その時まで生きてたら、ここで待ってるよ。薄情なあんたの師匠と違って、私はここに居る。旅人を迎え入れ、見送る。それが私の生き方なんだ。」
両手で僕の肩をバシッと叩いて、彼女は言った。
「あんたも見つけなよ?自分の生き方ってやつを。」
自分自身の属性と、生き方。それを僕は、学園へ見つけに行く。
「それじゃ!」
勢いよく外へ出る。
ほの蒼い風が、僕の背中を押した。
街を歩いていく。
「んで?結局お前の師匠は何者だったんだ?」
左手をぶっ叩く。
「痛ってぇな何すんだ!」
(念話で話しかけて来い阿呆誰かに聞かれたらどうする!?)
(たまには声出したくなったっていいだろ〜。)
リーフは相変わらずうるさいが、最近少しずつこいつが元人間だったというのに納得してきている。何というか、人間臭い。
(で?何の話だっけ?)
(いやぁ、お前の師匠って何者だったんだろうなって。)
(見たまんまだろ。)
(それでいいのか?だって、ナントカの付き人だったらしいし、あの女に関することでお前が知らなかったことだってあったんじゃないのか。)
(それの何が悪い?)
自分に言い聞かせるように話し続ける。
(どうだって良いだろ。今僕がするべきは師匠がくれたチャンスを無駄にしないで学園に入ること。それで強くなって、現実世界に戻る。その目処が立ってからでも遅くはないだろ、多分。)
(やけに冷静だな。)
そんな事は自分でも気付いてる。
(今ただでさえ僕の面倒を見てくれる人が居なくなったんだ。僕がヘマして死んだりしたら、それこそ師匠は無駄死にだろ?だって僕の為に外に出て陽を浴びてしまったんだから。)
(あのなぁ。)
リーフが呆れたような声を上げる。
(誰がお前に眉間に皺寄せろなんて頼んだんだ?)
(それは・・・。)
(胸張って、妄想してろよ。その方が、お前らしいぜ?)
(出会ってひと月も経ってないのに図々しい奴だな。)
でも、気付けば肩の力は抜けていた。
(なんか、ありがとうな。)
目指す学園は、もう目の前だった。




