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市民会館には土足で入っていいとのことだったのでそのまま入ると、数十人は中にいた。少しばかり見渡すと母に似ている女性を見つける。
そのまま駆け出して、ろくに確認もせずに飛び込んでしまった。とはいえ、ほぼほぼ確信していた。
「お母さん」
声をかけながら座っていたところに飛びつくと懐かしい感じがした。体感時間では一日と少しくらいのはずだがとにかく懐かしかった。
「再開の挨拶を済ませているところ申し訳ない、少しいいかな?」
先のおじさんが声をかけてきた。それはそうだ。むしろ失礼なことをしたと思いなおして、
「すみません。でもよかったです。お母さんと再開することが出来て」
「うん。聞いているよ。未来ちゃんだったかな。お父さんも無事だ。今、うちの若いもんと一緒に食料集めに出てもらっている」
こんなに人数がいるのにも関わらず、名前や生い立ちを知っているのだろうか。そんな思いが顔に出てしまっていたのだろう。
「まぁ、時間はたっぷりあったしね。それに娯楽みたいなものだよ」
そんな感じでしっかりと疑問は解消された。
「ところで君はどっちかな。私の勘だと超能力みたいなのが発現していると思うんだけど」
出来るだけ考えないようにしていたことをあっさりと聞かれた。ただこう言う聞かれ方をしたということは珍しいものでもないものでもないのかもしれない。ただ、それが良いことなのか悪いことなのか。
そんな風に返答に少し悩んでいると
「別に悪い想像はしなくても問題ないよ。こんな世の中だからね。戦力として数えられるかどうかだけでなく、生活を豊かにすることにもつながる。うちにも水をきれいにしたり、電気を作り出すことのできるのがいる」
道理でここの施設では外より快適なわけだ。それに天井の電気もついている。
「まぁ、逆に電気をため込んでしまうらしくてね。消費しないといけないらしいから完全に便利というわけでもないんだけどもね」
そこまで明かされれば、大丈夫かと母の方を見るとそんな心情が伝わったのかうなづいて背中を押してくれる。
「えぇと、予想の通り、私も何か力があるかもしれません。ただ、詳しく分からないんですよね。能力を持っている人たちってみんな身体能力の向上ってありますか?」
そう、今のところ便利そうな能力も魔法じみた能力も確認できていない。どうせなら、魔法みたいなのが使いたいななんて
「あぁ、なるほど。その感じだと身体能力向上系な感じかな。確かに能力持ちは多少は肉体的にも強くなっているね。うちにもいるしね。どこが強化されている感じかな?」
「今のところは足の部分かなって感じですけど。良く分からないです」
ふむと右手をあごに当て、考え込むような仕草をしたとき入口の方から声がした。
「ただいま帰りました」
私と同じくらいだろうか。先頭の男はビニール袋を片手に元気に挨拶していた。後ろには見覚えのある男の人も見える。
「お父さん」
どうやら食料集めから帰ってきたらしい。
「うん。まぁ、今は両親とも積もる話があるだろうし、私も今帰ってきたのと話があるからね。また後で話そうか」
入れ替わりで父が私たちの方に来たので、とりあえずは家族の時間となった。