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死に戻りに疲れた傾国王子、生存ルートを模索する  作者: 沓子
第一章

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傾国王子の秘密



 ツェーレンが珍しく体調を崩した。

「医者! いややっぱダメだ他人に素肌を見せたくない! 女性医師? ツェリを好きにならない保証はない!、っいてえ!?」

 ガーシュは今日は脛に蹴りをお見舞いした。頭へのダメージでこれ以上アホになられたら面白すぎるから。

「落ち着け。ツェリ様が不要だと仰るのを聞いただろう」

「遠慮してるんだよ!」

 遠慮する人間は大皿料理用の皿をもらってワンプレートにビュッフェ全乗せとかしない。

「あっまたツェリって、いてててて!!」

「愛妻が呼んでんだよ!! 待たせんな!」



「……ツェリ、」

「悪い。心配かけたみたいで」



 ベッドに腰掛ける妻の顔色が青白い。いつも元気なツェーレンのそんな姿はアレスターをひどく動揺させた。



「医者、呼ばなくていいって? 自己判断はダメだ、今からでも」

「あのなアレス、話がある」

 ごく改まった口調に渋々ながら従う。早く医者にかかって貰いたいのだが、不要な理由を説明するつもりなんだろう。

 だがツェーレンからは予想外の言葉が飛び出す。



「……俺さ、男ばっかりと結婚してるだろ」

「───うん?」

 今なぜその話を。

「なんでかと言うと、俺、子供産める」

 とても言いづらそうに俯きがちに、手遊びをしながらの告白。



「……は? 子ども?」

「夫の能力に応じて確実に優秀な子ができる。うちの初代国王がその子供だった。王がまだいない、国というより群雄割拠の時代まで遡るんだけど。ある男に同性の恋人がいて、孕んじゃって家族ぐるみで隠匿した」

「───」

「慌てて女の人と結婚して、妻が産んだことにした。その赤子が偉大なる建国王」

 王家にはそれ以降も二人、孕める男が産まれている。かなり古い話だ。



「俺の求婚者は産めるかもって望みにかけてんじゃないかな。まあ男同士のアレじゃ絶対出来ないが」

「ど、ど、どーいうこと?」

「隠蔽かけてるがアレスなら判るよ、俺が両性具有だって。胸ないけどな。あーこれ話したら兄上に殺されるかも」

 頭を抱え込むツェーレンを見ながら、アレスターは混乱の極みにぶち込まれていた。



「ツェーレンの……あそこを、見れば……? い、いや、ムリだ。はしたない……第一僕は白い結婚を約束して、え? ツェリは子どもを産め……、」

「だからさ、あの。今日は月の障りで体調を崩しただけで。ちょい痛むけど」

「…………」

「大人しくしてりゃ大丈夫だから」




 アレスターが部屋を辞してしばらく後、最新だという生理用品が山ほど届いた。吸水性に優れ肌触りが良いらしい。

 この華やかな個別包装はなんだ。



「……うちの女性陣愛用の異世界品を真似た製品。義姉上に聞いて一番肌にいいやつ……それとお腹あっためると良いからってこれ、魔石が入っててじんわり温かい器具、」

 真っ赤になり俯くアレスター。秘密は話してないらしいがどう説明したんだろう。

「アレスが信用してる人なら話していいよ。それでなくてもグレイシアは秘密だらけだろ」

 可愛い。優しい。カッコいい。

 面白くて少し怖くて、でもそれは俺を思ってのことで。



 好きだなあと思う。

 ───俺、アレスが好きなんだ。



 「あ、あと体を温めるものを用意させてるから。お茶も」

「───期待したくない」

「え?」

「あんまり優しくすんな。俺、どうせ出てくんだ。辛くなる」

「ツェ、」



「ツェリ。ツェーレン。きみを拒んだ理由を今話すと言い訳みたくなるから言わない。けど僕は、ぼくはね」

「……アレスター。ひとつ頼みがある」

 始めに交わした約束の時の言葉だ。思い出したからアレスは同じように答えた。

「……内容によるよ」



「俺からプロポーズしていいか」

「!?」

「誓約書があるし解呪したら一度別れよう。それで俺、その日まで努力する。アレスターにそういう対象と見てもらえるように」

「─────」

「アレスは女の子がいいんだろ、ごめん。初恋の子がいるんだって? だから解ってるんだ、無理なの。けどきちんと振られたい。だから頼むよ───、アレス?」



 歓びがあまりに大きすぎて逆にアレスターは冷静になる。同時に罪悪感が襲ってきた。

 この生活を終わらせるのが嫌で後回しにしていた。ツェーレンの気持ちを考えなかった。不安で怖くて仕方なかったろう。

 解呪に今すぐ取り掛かろう。

「待ってね、今解呪の、──────?」

 調べればすぐにこの違和感に気づけた筈だ。

「ツェリ、閨の記憶は細かい所まであるの」

「……いや、あんまり」

「なるべく思い出して。夫たちがおかしくなるのって秘密がばれた後じゃない?」

「あ、で、でも隠蔽」

「僕の隠蔽なら質感まで変えられるけど、普通の魔術では見た目を変えるだけだ。触ってなんだろうと疑問を持ってから見直したら、普通に看破される」

「……」

「気づいた彼らはどうするか。みんな建国王の逸話は知ってる、なら?」

「──多分問い合わせる。海外ならうちの国に。国内貴族なら、王家に……。何も連絡してこないのは、無いと思う」



「もうひとつ。隠蔽をかけたのは誰」

「ヴィーダ第二妃。俺の母親だ」




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