メイが見えるようになったのは。
私はたぶん、一族で言われるような6歳の6月6日までに、ミトリ様を見ていない。
ただ、7歳の誕生日が近づいたある日、店番をしていて、いつの間にか居眠りをして夢を見たことがある。
「鸞鳳堂」は、祖母が営む村で唯一の雑貨屋。日用品から食料品まで一通り揃っていて、駅から近いので、地元の人だけでなく旅人も立ち寄る。
だから、客が途切れることは滅多にないのに、あの日に限って閑古鳥が鳴いていた。
ぼんやりしていたら、外からすごく明るい光が差し込んできて、
「どうして今日はこんなにまぶしいんだろう」と不思議に思っていた。
その時、引き戸のすき間から一人の子供が鬼ごっこの最中なのか、店に駆け込んできた。
その子は私を見て、「寝てるよ、寝てるよ」とからかうように笑った。
顔は、日差しがまぶしすぎて見えない。
私は、その子が転んだら危ないと思って捕まえようと手を伸ばした。すると、
その子がサッと身を伏せて、バランスを崩した私は、肩から地面に落ちかけた。
その時「パタン」と音がして光が消え、私は薄暗い店に一人で座っていた。
店には誰もいなくて、外はもう薄暗くて、まぶしい日差しなんかどこにもなかった。
それはそれで、寝ぼけたんだと思っていた。
しばらくして、人を見ると、小さな黒っぽい細長い何かが見えるようになった。
でも、見える人と見えない人がいたし、最初はぼんやりした姿だったから、
それが黒い蛇だとわかるまで時間がかかった。
だんだんはっきりと見えるようになったある夜、祖母に聞いた。
「三鳥の家で、黒い蛇の話を聞いたことがある?」と。
祖母は驚かなかった。そういうのが見える話を聞いたことがあると話してくれた。
「ミトリ様には別の姿もあって、闇の世では「黄泉鳥様」というの。
死後の世界に通じるというけど、見て戻った者がいないのでわからない。
黄泉鳥様は、黒い蛇を好む。
黒い蛇は、妬みや憎悪、嘘、悪意から生まれる。
誰かをあざむいて金を騙し取ったりすると、その人に小さな黒い蛇が棲みつく。
最初は、小さな細い黒蛇。
小さいうちは現れたり、消えたりし、心のあり方と振る舞いで、簡単にはらうこともできる。
でも、悪意を抱き続けると、やがて魂そのものが黒い蛇の巣窟と成り果て、
ついには、人そのものが蛇になる。
黄泉鳥様はその黒い蛇が好物。美味しそうな黒い蛇を見つけると、くちばしで地の底へとひきずりこむ。
そのあとのことは誰も知らない。