003
「くっ……凄まじい破壊力だ」
宮殿内部は残骸の山と化していた。
「そうだろう。俺はなんたって天下のポセイドンとガイアの間に産まれた子供なんだぜ!」
アンタイオスは自身に満ち溢れた顔をしている。もはや勝利を確信していると言っても良いほどだ。しかし、ここで諦めるヘラクレスでは無かった。彼は脳内をフル回転させて、この状況を打開する方法を考えつく。
「だがなんだ」
ヘラクレスは尋ねていた。
「俺は正真正銘のエリートだということだよ!」
「浅深だな」
考え方が浅く深くまちまちなのだ。この男は。
「なに?」
「どうやらお前は筋肉ばかり使って頭は使っていないようだな」
そう確信するヘラクレスだった。
「ハハっ、そういうお前はどうなんだよ!」
アンタイオスは尋ねてきた。自分自身はどうなのかと。
「俺は違う。打開策を見つけた」
「打開策だと? そんなものねえよ!」
「それがあるのさ。見せてやるよ」
アンタイオスが接近してくるが、ヘラクレスが跳躍して攻撃を躱したと思うと、アンタイオスの首を両手でガッチリと掴んだのだ。
「てめえ……何をする気だ」
「こうするのさ!」
すると、アンタイオスの体が宙に浮き始めた。ヘラクレスはアンタイオスを持ち上げたまま天井高くまで飛んでいるのだ。これにより、奴の体が地面から離れて行った。
「なんということだ」
自身の体を持ち上げて空を飛んでいるヘラクレスにも驚いたが、それ以上に本当に打開策を見つけ出したヘラクレスのひらめき力にも驚きを隠せないでいた。
「滅せよ。この世界からな」
「ぐうううおおおおおおお!」
アンタイオスの顔が青白くなっていく。地面から足が離れたことにより、パワーが低下していく。それにより首を絞めるヘラクレスを払いのけることが出来なかった。
「冥界へ落ちろ」
アンタイオスが白目を剥いたことを確認すると、勢いよく地面に放り投げた。これで暴利を貪るアンタイオスは死んだ。しかし、この世を貪る権化は大勢存在する。ヘラクレスの贖罪の旅はまだ終わらないのだ。
「ふん。我が息子を殺したか」
「!」
ポセイドンだ。ヘラクレスのすぐ後ろに立っていたのだ。ヘラクレス自身もまったく気が付かなかった。これにより身構えるヘラクレスだったが、
「そう警戒するな。馬鹿息子の一人殺されたぐらいで怒りはせんよ」
神故の落ち着きか。
「……海神ポセイドン」
ヘラクレスに負けない威圧感を放っている。
「贖罪の旅をしているようだな。ゼウスのせがれよ」
威厳のある声で語りかけている。さすがは神だ。
「そうだ。俺は過去に犯した罪を償わなければならない」
「頑張れよ」
「当たり前だ」
こうして、ヘラクレスの贖罪の旅は続く。今回はほんの寄り道に過ぎないのだ。本当の戦いはこれからである。




