I will stay here with you.
1.I will stay here with you.
「ただいま~」
「おかえり」
廉が買い物からマンションに帰ってくると玲音がリビングのソファの背もたれから乗り出して何かしている。
「ん?」
何か大きな物が、廉の視界の隅を過った。
「ん?玲音!!なんだ?それ!」
「やだな廉、ゴールデンレトリバー知らないの?」
「知らない訳は無いだろう?いや、そうじゃ無くて、なんでそのゴールデンレトリバーがここに居るんだよ?」
「可愛いだろ?【シャーロット】って言うんだ。俺、この子に恋しちゃった。
おいでシャーロット。ここにおいで」
玲音は自分の居るソファの隣を叩く。
賢い子のようで素直に玲音の隣に座る。
「シャーロット、いい子だね~」
玲音は愛くるしそうに、シャーロットの頭を撫でて抱きつく。
「ねね。廉、ウインナーとかない?」
「玲音、この子はどうしたんだ?ちゃんと説明しろよ?」
「シャーロットちゃんだよ?潤の知り合いから預かったんだ。急な不幸があって九州まで行かなくちゃ行けないから誰か預って欲しいって。可愛いだろ?すごくお利口なんだ。おいで」
玲音がソファから立ち上がると、すぐに玲音の横について歩く。
玲音は廉の横に来て「ウインナーちょうだい」と笑う。
「ねね、廉ちょうだい」と冷蔵庫覗きウインナーを取り出す。
そしてまたソファの背もたれごしに向かい合い
「シャーロット!おすわり」と言って見つめあってる。
「待てだよ?いいね?まってよ?」と言ってウインナーを取りだしシャーロットの目の前にかざす。
シャーロットは早くちょうだいとしっぽを振り舌を出して催促している。
「はい、いいよ!おたべ!」と言うとシャーロットは玲音の手からウインナーを取りたべる。
「可愛いでしょ?シャーロットこっちおいで」とまた玲音の隣に座るように合図している。
「お前、本当に可愛い、いいこだな~」と玲音はシャーロットを抱きしめている。
「玲音?ね、玲音君?」
「何?君付けなんかして気持ち悪いな?」
「いつまでいらしゃるのかな?シャーロットちゃんは?」
「一生いて欲しいなぁ~」
「おい、誰が世話するんだよ?」
「ちゃんと、俺が世話するよ!俺のシャーロットちゃんだもん」
「ただいま~」と千景が帰って来てたじろく。
「なんだ。あれ?」と千景は廉に聞く。
「失礼だね」と玲音は怒る。
「シャーロットちゃんだって……」
廉が言う。
「シャーロットちゃん……?」
「恋しちゃったんだって……」
「誰が誰に?」
「玲音が、シャーロットちゃんに」
「パンダとゴールデンレトリバーとは報わない恋だな?」
廉と千景の会話をよそに玲音はシャーロットに夢中になってる。
「で、いつまでいらしゃるの?シャーロットちゃんは?」
「一生いて欲しいって……」
「…………。パンダもゴールデンレトリバーもたいして変わらないか?俺、着替えてくるわ」と千景は部屋に入って行った。
「ねね、廉!ドッグフード買ってくるよ。
シャーロット一緒に行こう」
「おい、待て、店には動物は入れないだろ。置いて行けよ。連れ去れるぞ!」
「えー、俺達の仲を割くのかよ!」
「あほか!何でそうなる」
「大学行っている間やバイト中はどうするんだよ?」
「一緒に………」
「盲導犬では無いんだから、無理に決ってるだろ?」
「!!俺サングラスかけて目が見えない振りするよ?」
「ダメに決ってるだろ?」
「何処で寝かすんだよ?」
「勿論、俺の部屋」
「片付けろよ?」
「!!!」
「正直、いつまで預かるんだ?」と言ったが玲音は自分の部屋を片付けに部屋に戻っていた。
仕方ないので廉は潤に電話して聞いた。
「多分、一週間くらいだよ?」
「いつも食べてるドッグフードはなんだ?」
「多分、玲音先輩に預けたよ」
「散歩は?」
「朝晩2回って聞いたような?」
「何か注意することは?」
「特にないと思うよ?」
「そうか、潤、今度から玲音に相談する前に俺にしろよ?」
「ごめん、なんとなくそんな気がしたけど、玲音先輩シャーロット見たらそのまま連れて帰ったんだよ。よろしくね」
翌日バイトの秘書室
「藤堂先輩」
「ん?何?今日は玲音様は?」
「その事で相談が………」
「え?また問題?今度は何をやらかしたの?」
「う~ん、玲音がある子にベタ惚れして、夢中になりすぎて傍から離れようとはしないんですよ?」
「え?彼女できたの?」
「う~ん、彼女と言えば彼女かな?」
「どんな子?」
「シャーロットちゃんといってすごく可愛い子なんですけどね」
「統轄長に相談してきます」
藤堂は最後まで廉の話を聞かず明らかに勘違いをしてこれは一大事と言わんばかりに踵を返し統轄長室に向かう。
「え?藤堂先輩?待って!」
「統轄長大変です!」といきなりノックもせず統轄長室に入る
「何?騒がしい。藤堂君らしくないノック位しなさい」
「玲音様が………」と言いかけて藤堂の後を追って来た廉がこれまた凄い勢いで駆け込み「藤堂先輩!勘違いしてますよ?」と言う。
「2人とも、落ち着きなさい。何があったの?」
時宗は呆れながらその2人を見ながら言う。
廉はシャーロットの事を説明した。
「犬ですか……。ビックリしました」
「でもベタ惚れですよ?あの玲音がシャーロットの為に部屋を綺麗に片付けたんですから。片時も傍から離さないし」
「それは、それで面倒なことになりそうだね」と時宗は深い溜め息をつく。
「そんなに、可愛いいのですか??」
藤堂は興味津々に聞く。
「まぁ、俺から見てもかなり可愛いです。従順ですし、無駄吠えしませんし。あの千景でさえもメロメロですから………」
「しかし、玲音は?今日はバイトだろ?」
「ええ、そうなんですが、今日は休むと………」
「困った子だね。藤堂君、玲音を呼び出してくれないか?」
「はい。シャーロットちゃんは?如何いたします?」
「一緒でないと来ないんだろ?」
「多分……」と廉は言った。
時宗は溜め息をつきながら
「一緒に呼んで………」
「何?親父?」とゴールデンレトリバーを連れて統轄長室に玲音がやって来た。
「シャーロット!おすわりだよ」
ゴールデンレトリバーは玲音の言葉に反応し玲音の真横にぴたりと座る。
「本当に、よく言うこと聞くんですね」と藤堂が目を輝かせながら廉に言う。
「玲音。犬の世話の為にバイトを休むのは感心しないね?バイトでも仕事に責任はあるだろ?」
時宗は玲音とゴールデンレトリバーを交互に見渡しながら言う。
「ずっと一緒居られるわけで無いんだから居られる時はずっと傍においておきたいじゃん」
玲音は真っ直ぐに時宗を見ながら言う。
「しかし、社会人として無責任だろ?」
「でも、誰も居ない知らないマンションにひとりぼっちは可哀想だろ?親父にはこの気持ちは分かんないよ!」
「玲音……。あんまり情を移すと別れが辛くなるよ?シャーロットは私達の家族では無いだろう?客人として預かってるんだろ?居なくなった後の気持ちの切り替えは出来るのかい?」
「………出来るよ………」
「まぁ、今日は仕方無いから帰っていいから家でよく考えなさい」
「おいで、シャーロット。帰ろう」というと玲音の横について歩きだす。
「本当に愛らしい犬ですね」
藤堂は玲音と息を合わせたように歩調を合わせて歩く犬に見惚れる。
反対に時宗はそれをみながら大きな溜め息をつきながら廉に向かって言う。
「あれは飼い主の元に戻ったら大変だよ?廉」
「え?俺?」
「あぁ、甘える相手、廉しか居ないからね。玲音には、愛玩動物は溺愛し過ぎるから敢えて与えなかったんだよ。
かなりの寂しがり屋だからね、ペットに依存度が高くなりすぎるのは目に見えて分かるからね。感受性も強いし。だから、そのペットが死んだりすると立ち直るのにかなり時間がかかるのは分かりきっているからね。
まぁ、廉よろしく頼むよ」
「ええ、頼まれても…。俺は、愛玩動物じゃ無いですから」
廉は嫌な予感を感じながら渋々仕事に戻って行った。
別れの時は案外と早くきた。
シャーロットは迎えに来た飼い主に一直線に駆け寄り大喜びし、別れ際も玲音の方は見て居なかった。
飼い主は、お礼言い、シャーロットを連れて去って行った。
シャーロットの居なくなった部屋の隅で玲音はいじけていた。
廉は、玲音の部屋に入り、玲音の隣に腰をおろして言葉をかける。
「お前の大好きなシャーロットは、大好きな家族の所に帰って行ったんだ。よかったんじゃないか?
玲音が他人の家で、どんなにもてなしてもらっても俺達家族と一緒の家の方が良いだろ?」
玲音は目から鱗が落ちたように表情を変え「うん、俺。廉の傍を離れない」と廉に飛び付く。
「………。玲音、どうしてそうなるんだ?」と玲音を払いのけながら廉は言う。
「廉、俺がシャーロットに掛かりきりで寂しかった? 」
「おい、こら離せ玲音!俺は、犬ではないぞ!」
まとわりつく玲音を避けながら廉は逃げる。
"You are my treasure.!"
玲音は目を輝かせながら言う。
シャーロットが居なくなって、もうひとり密かにショックを受けている人物がいた。
「えー、帰ってしまったの?お土産にビーフジャーキー買って来たのに。俺と別れの挨拶くらいはさせろよ?」
「仕方ないだろ、千景。お前はその場に居なかったんだから……」
「彼女は俺の心のオアシスだったのに………。
廉、明日から俺は、何を楽しみに生きて行けばいいんだ?」
「俺に聞かれても………。代わりの彼女でも探せよ!」
そこに「玲音先輩~」と悠貴がやって来て来た。
「シャーロットちゃんは?ゴールデンレトリバー居るんだよね?」
「帰ったよ?悠貴、少し来るのが遅いよ!」
「えー。会いたかったのにぃ!玲音先輩、早く教えてよー」
「潤から聞いてるんじゃないの?」
「今日、聞いたんだよ?」
「そうそれは、残念だったね」
2.Misunderstand.
藤堂と齋藤が電話で話している。
「十碧。犬騒ぎで大変だったんだって?」
「あぁ、すごく可愛いかったんだよなぁ~。俺も犬を飼いたいな~」
「無理だろ?十碧には」
「出張が無ければなぁ~。事務所限定勤務に希望出そうかな?」
「おい、おい。自ら左遷を志望するのか?」
「見た目も愛らしいし、きちんと言うことは聞くし、ずっと傍に居ても邪魔にならないし、何より心を癒してくれそうだしな」
「おい、十碧?それはそのシャーロットって犬がちゃんと訓練が出来て居るからだろ?全部が全部、そんな犬ばかりではないぞ?」
「小型犬なら出張に連れて行けないかなぁ?」
「おい、血迷うなよ?十碧?おい!聞いてるか?」
「そうだ!俺が出張………」
「ダメだ!絶対俺は、引き受けないぞ!!」
「まだ、全部話して無いだろう?拓哉」
「分かるさ。十碧の考える事をなんて。ここはペットホテルじゃないぞ!」
「番犬にいいんじゃないか?」
「お前。分かっているのか?半年とかざらに日本居ないくせに、俺に預けておいて、俺の方になつくに決まっているだろ?そうなると十碧はやきもちやくに決ってる。それに、お前の事だ。やたら血統書のいいバカ高い犬を買って来て、食べ物とかに拘るに決ってる。ここは孤島なんだ。そんなに物が有るわけがないだろ?」
「拓哉……。拓哉は見てないから……。あの子みたら傍に起きたくなるって。この前拓哉が言った
"There is more pleasure in loving than in being beloved."(愛する喜びは、愛される喜びよりも、はるかに優るものである。)
その言葉が、俺の心で鳴り響いたんだけどなぁ~」
「十碧、意味はき違えてるぞ?俺の言ったのはそう言う事じゃ無いんだが?
とにかく、玲音君同様お前にも、ペットはダメだ!分かったな!絶対にダメだからな!」
(しかし、シャーロットちゃんはある意味、玲音君より周りを魅了する犬なんだな………)と藤堂から話を聞きながらシャーロットと言う犬を見損ねた事に齋藤は残念に思っていた。
こうして恋の嵐は去った。




