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そして旦那様はわたくしの頭を優しく撫でながらそんな『おすし』という料理について説明してくれる。
旦那様の説明からするに『おすし』という料理はお酢で味付けしたご飯の上へこの『おさしみ』を乗せただけの料理だと言う。
お酢で味付けしたご飯がどのような味であるのかいまいち想像もできないのだけれども、その『おすし』という料理が美味しそうと言われると疑問に思ってしまうのだが、それと同時に楽しみであるとまだ見ぬ未知の料理に胸躍らせる。
きっと美食家達の気持ちは、今のわたくしと同じ様な気持ちなのだろう。
彼ら彼女らが食の探求者でもある美食家となってしまう理由が分かる。
そもそも王国では、例えお酒が入っていたとしてもお酢を使った料理でここまで皆様が喜ぶ様な料理は食べた事がございませんし、お酒が入っているからこそ素直な気持ちが現れるというものである。
もし『おすし』という料理がそこまで美味しい料理ではない場合は喜ぶのではなく、そこかしこからブーイングが飛んでいたであろう事が容易に想像できる。
「まぁ、一応ちゃんとした職人が作るお寿司は高級料理だからな。回転寿司ができる前は庶民はお店で気軽に食べれる様な物では無かったくらいには位の高い料理ではあるな」
そして旦那様が『おすし』について更に詳しい内容を教えてくれ、職人が作るお店はとても高い値段である料理だと教えてくれる。
旦那様の話を聞けば聞くほどわたくしは明後日食べに行くと言うお寿司が待ち遠しくて仕方がなくなってしまうではないか。
そしてわたくしはまだ見ぬ『おすし』という料理に思いを馳せながら、お刺身をフォークで食べてみのだが『お寿司』という料理の話を聞いてからは、最早生の魚の肉に対する嫌悪感等は全く無くなってしまい、今では純粋にこのお刺身を堪能できる。
そしてわたくしは見てしまう。
『おさしみ』をおかずにして白ご飯を食べる使用人達の姿に。
雷が落ちる様な衝撃の後、わたくしは迷うことなく即座に使用人たちを真似て『おすし』擬きを実践してみると、そのおいしさたるや、今まで感じた事の無い新たな扉が開いた瞬間であった。
そもそも王国ではこの『おさしみ』を食べられないどころか『おしょうゆ』を手に入れる手段も無ければライスすらなかなか手に入らない食材である。
これ程までに美味しいと思える新しい料理を、公爵家時代に仲が良かったご友人たちにも食べさせてあげたいと思ってしまう。
きっと、今のわたくしには幻滅しているでしょうし、もともと当たりがキツかったと自分ですら思える態度を取っていたので許される事ならば手紙では無く面と向かって謝りたい。
そしてこの喜びを、発見を、驚きを教えてさしあげたいし、一緒に共有したい。




