幕間:明治に送られた男たち
【後島慎二】
おいおい、明治天皇の御前にタイムスリップって、なんの冗談だ?
俺たちはただ、温泉旅行を楽しんでたはずなのに。
それが目覚めたら、怖い連中に囲まれていて、びびったのなんのって。
最初はテレビか何かのイタズラ企画かと思ったけど、俺たちにそんなことする意味なんてない。
そんなことを考えているうちに、祐一が勝手に話を進めはじめた。
「それはこの国がアメリカと戦争になって、300万人もの死者を出す歴史です」
うわ、いきなりそういう事、言うか?
もうちょっと様子を見てだな……
ええっ、山本海相と長岡次長について調べろって?
お前、それ暴走しすぎだろ。
陛下と殿下も驚いてるじゃん。
え、なになに、彼らは日露戦争において、背信の疑いがあるだって。
ほんと、こいつ、よく調べてあるな。
そんなこと知らねえだろ、普通。
あ~あ、とうとう陛下を説得しちゃったよ。
こういうの上手いんだよな、祐一って。
その後、部屋をあてがわれ、これからどうするかで盛り上がってたら、諌められた。
「おいおい。あまり突っ走るんじゃないって。それよりも基本方針を決めようぜ」
「自分が最初に突っ走ったくせに……」
「いや、確かに基本方針は必要だな。それはほら、あれだろ? どこまで介入するかとか、どこまで情報を出すかみたいな」
ちょっと不満はあったけど、祐一の言うことはもっともだ。
なんだかんだで、みんなの認識がまとまったかな。
それにしても、これからどうなるのやら。
【中島正三】
目覚めたらそこは、明治時代の皇居でした。
ってなんだよ、それ。
もうメチャクチャじゃん。
でもジタバタしたところで、何が変わるわけでもない。
あれ、祐一が勝手に話を進めはじめた。
彼は説得とか上手いから、まあいいか。
結局、陛下や殿下に信用されたみたいだし。
なるようになるでしょ。
その後、別室で相談したら、歴史知識を活かして活動する方向でまとまる。
「コソコソやれるのは、せいぜい第1次大戦までだと思う。そこからは違う歴史になるものと思って、やってくんだろうな」
「第1次大戦か……9年後だな。それならやれることも多いか」
「せやな。まあ、これだけ人材が揃ってるんや。なんとかなるんちゃう?」
「いやいや、みんな楽観的すぎじゃない?」
そんなに楽観的で、大丈夫?
でもなんとかしていくしか、ないんだよなぁ。
【佐島四郎】
朝おきたら、明治やった。
なんやねん、それ!
誰や、こないなことしたん!
せやけど、実は夢やったとか、そういうオチでもなさそうや。
ひょっとして、マジなんか?
ああ、俺の人生設計が……
そんなこと考えとるうちに、祐一が話を進めはじめた。
まずは戦争を回避すべく動いて、もしも戦争になっても、簡単には負けない国力を養成する、か。
まあ、妥当やな。
あん?
山本海相と長岡次長について調べろ?
うわ、こいつ。
そんなことに首つっこまんでも、ええやん。
ほいでも、結果的に信用は得られたみたいやな。
まあ、祐一に話を任せたんやから、しゃあないか。
それにしても、これからどうなるんやろうな。
「実は上手くやれば、樺太の全島を分捕れたらしいな。その点はぜひ、助言しようぜ」
「おっ、それええな。北部には油田があるさかい」
そうや、オハ油田がある。
史実ではソ連に振り回された、いわく付きの油田やけどな。
他に大慶油田もあるし、上手いこと立ち回れば、石油を自給できるようになるかもしれへん。
なんかこう、ワクワクしてくるもんがあるわ。
そう考えると、タイムスリップも悪くないかもしれへんな。
【川島健吾】
なんだ? 一体なにが起きている?
目が覚めたら、明治の皇居だったなんて、まるでラノベじゃねえか。
しかも周囲を殺気立った男たちに囲まれ、下手をしたら、投獄や拷問もされかねない。
このヒリつくような緊張感、久しぶりだな。
ゲリラに拉致されかけた、南米出張以来か。
しかし幸いにも荒事にならず、祐一が淡々と事情を説明する。
普通なら信じられっこないが、スマホを見せたら納得してくれた。
本当に今は、明治時代ってことか。
ん、祐一が変なことを言い出したぞ。
山本海相と長岡次長について調べろ?
また余計なことを。
後でとっちめてやる。
その後、別室に隔離されたので、さっきの話を持ちだす。
「祐一、なんであんなこと言ったんだよ? 実際に必要だとしても、先に相談するべきだったんじゃないか?」
「ああ、相談なしでやったのは、悪かった。だけどこの件だけは、早く片づけておきたかったんだ。何度も考えてきたことだからな」
「そういえば、前からそんな妄想をしてるって言ってたっけ」
「ああ、おそらく大日本帝国が道を誤る、最大の転換点なんだ。ここは」
「たしかに、この後はひどいからな」
彼は謝りつつも、その意図を明かして悪びれない。
まあ、すでに取り返しようがないし、結果的に信用も得られた。
悪いようにはならないか。
どうせ、みんなで力を合わせて、生き残らなけりゃならないんだ。
それにしても、世の中には不思議なことがあるもんだな。




