第89話 期待の超新星墜ちる?
これは西暦9980年のはるか未来のお話。
この時代に召喚されたマイは、激戦の北部戦線への参戦を前に、仲間のメドーラとユアとともに、特訓していた。
その場に、謎の巨大戦艦が現れる。
この戦艦は、レドリア合衆国が北部戦線に投入した最新鋭の巨大戦艦だったが、謎の襲撃者に撃沈されてしまう。
それを改修再利用して、マイ達の前に現れたのだが、マイ達がこの事を知るのは、だいぶ後の話しであった。
この謎の巨大戦艦は、マイ達に攻撃を仕掛ける。
絶体絶命のピンチに陥いるマイ達であったが、マイは謎の声の導きで、巨大な人型機体を投影する。
そして見事、巨大戦艦を撃ち破るのだった。
「凄いよ、マイ!」
「やりましたわ、マイお姉さま。流石ですわ!」
巨大戦艦を退けたマイの奇跡な大活躍。
ユアとメドーラはマイを讃え、マイの近くへと機体を近づける。
だがマイは動かない。
マイのヒューマノイドシルエット、巨大な人型は沈黙したままだ。
両手両足を大の字に広げ、開かれた手足の装甲内部からは、発射されたミサイルの熱量による、煙が上がっている。
「マイ、どうしたのよ、しっかりしてよ。」
機体を人型に変形させているユアは、人型機体の腕で、マイの機体をゆする。
と同時に、マイの投影した巨大な人型はかき消される。
「いやー!」
突然アイが叫びだす。
アイはマイのパートナーのサポートAIだ。
サポートAIならばこそ、今のマイの状況がよく分かる。
「マイ、あなた死なないって約束したよね、なに破ってんのよ!
私をひとりにしないでよ!」
「落ち着け、アイ。おまえは既に四人死なせてんだろ。
ひとり増えたくらいで、取り乱すな。」
「なんですって!」
アイはユウの言葉にきれた。
アイは専用カプセルを飛び出すと、ユウの専用カプセルを感情任せに叩き続ける。
「出てきなさい、ユウ!
私が今まで、どんな気持ちだったと思ってるのよ!
四人じゃないわ、九人よ!」
「やめろ、アイ!カプセルが壊れる。」
「カプセルが何よ!壊れたっていいじゃない!
マイはもう、帰ってこないのよ!」
アイはカプセルを叩く腕に力を込めるため、大きく振りかぶる。
その腕を、専用カプセルから出てきたアイツウが止める。
「おやめなさい。」
アイツウは短くそう言うと、アイを見つめる。
アイツウの瞳を見つめるアイ。
「う、う、うわーん。」
アイは泣き崩れる。
そこがユウの専用カプセルの真上である事に、気づいてはいない。
カプセル内のユウの目の前には、アイの泣きっ面がせまっている。
「ち、悲しかったなら、ちゃんと感情表現しろよ。
冷血なヤツだと思っちまうだろ。」
「うそ、マイ死んじゃったの。」
ユアがボソリとつぶやく。
召喚者は、パートナーであるサポートAIとつながっている。
つまり、パートナーではないサポートAIとは、つながっていない。
「ユアお姉さま、今なんておっしゃいました?
マイお姉さまが死んでしまわれただなんて、悪い冗談ですわよね。」
メドーラの声が震える。
「ユウとアイが、喧嘩してる。マイが死んじゃったって。」
ユアも最後は涙声になる。
「そ、そんな。なんでマイお姉さまが死ななければならないのよ。」
メドーラの瞳からも、涙があふれる。
「いいえ、あきらめるのは、まだ早いですわ。」
「アイツウ?」
ここでメドーラのパートナーであるアイツウが、メドーラに通信してくる。
「マイはおそらく、無理な立体映像の投影で、生命力を使い果たしたのでしょう。」
「それって、どういう意味なのですか。」
アイツウの説明を、メドーラは理解出来なかった。
普段なら理由出来ただろうが、今はそれだけの余裕がなかった。
「今なら、まだ間に合うかもしれないという意味です。」
「マイお姉さまは、死んでないのね!」
メドーラの表情も、パッと明るくなる。
「ですが、それも時間の問題です。
生命力が完全に尽きる前に、連れ帰って下さい。急いで!」
「はい!」
マイお姉さまは生きている。
メドーラは戦闘機を人型に変えると、マイの機体のコックピットをこじ開ける。
メドーラの行動に、驚くユア。
メドーラは説明する。
「マイお姉さまは、生きてます。
急げば、助かります!」
メドーラはマイをコックピットから引きずり出すと、自分の膝の上にマイを乗せる。
「私がマイお姉さまを連れ帰ります。
だからユアお姉さまは、マイお姉さまの機体をお願いします!」
メドーラは人型機体を戦闘機に変形させると、急いで宇宙ステーションへと引き返す。
ワープは出来ない。
超空間を移動する衝撃で、マイの魂がどうなるのか、分からないからだ、
同じ理由で、マイの脱出用ポッドでの転送は出来なかった。
メドーラは光速ブースターの立体映像を投影させ、帰路を急ぐ。
「マイお姉さま。
以前私は、あなたの膝の上に乗せられ、救われました。
今度は私が、あなたをお救いする番です。
マイお姉さま、あなたがいなくなったら、私はどうすればいいのですか。
私はもう、ひとりは嫌ですわ。
他にもお姉さまはいらっしゃいますが、マイお姉さまが居てこそです。
あの絶望の底から救ってくださったのは、あなたなのですよ、マイお姉さま。
マイお姉さま。マイお姉さまは絶対死なせません!」




