第55話 はるかな記憶を辿って
これは西暦9980年のはるか未来のお話。
行方不明になったケイを探しに、惑星ドルフレアの地に降り立ったマイとユアとメドーラの三人。
三人はこの星で出会ったローラスとともに、この星の伝説の騎士、かげろうおケイが使ったとされる剣を求めて、森の奥のほこらを目指す。
途中で少女と出会い、熊さんとも出会った。
ただほこらに剣を取りに行くだけで、何話消費するのだろう?
「あれがおケイの剣を納めたほこらですわ。」
森の奥の開けた場所に、目指すほこらはあった。
ローラスの指差すそれは、あまりにもみすぼらしく、とても価値あるほこらには見えなかった。
ここに大切な物を隠しても、誰も見向きもしないだろう。
森が開けたこの場所は、ある種の神聖さは感じる。
このほこらも建てられた当時は、さぞ立派だった事は、想像にかたくなかった。
マイ達がほこらに向かって歩きだすとともに、辺りに霧がたちこめてくる。
ズシーン、ズシーンと、何かが近づく音がする。
近づいてきたのは、緑色のドラゴンだった。
このドラゴンは、以前メドーラが戦闘機で倒した召喚されたドラゴンよりは、小さかった。
とはいえ、マイ達よりも数倍はでかい。
ドラゴンはマイを見ると表情がゆるみ、尻尾をバタつかせる。
メドーラは冒険者の腕輪を使って、ドラゴンのステータスを覗き見る。
「グリーンドラゴン、レベルは測定不能ですって。」
ドラゴンはメドーラの言葉に、メドーラの方に視線を向ける。
そして表情はひきしまり、尻尾の動きは止まる。
「なにこのドラゴン。」
その様子を見て、ユアは思った。
「ひょっとして、マイに懐いてるんじゃない?」
「だったら丁度いいわ。」
マイは意を決してドラゴンに話しかける。
「ドラゴンさん、このほこらに納められてる剣を、僕達に見せて下さい。」
「お、お願いします。あの剣は、私のご先祖さまから伝えられた剣なのです。このほこらに隠しただけのつもりだったんです。
か、返して下さい。」
マイに続き、ローラスもドラゴンに頭を下げる。
「これは困りましたね。」
なんとドラゴンは、マイ達に話しかけてきた。
これにはローラスとマイはびっくりだ。
だけどメドーラとユアは、そうでもなかった。
「この剣は我が友に、絶対護りぬいてくれと、頼まれたものですから。」
ドラゴンの声は、優しい女性のような声だった。
「我が拒んだら、ちからずくでくるのかしら?」
「そんな物騒な事、言わないで下さい!」
ドラゴンの言葉に、マイは少し怒った。
「護りぬくための理由があるのでしょ?
僕達もその剣が必要なのです。
ここはよく話し合って、お互いの打開策を見つけるべきでしょう!」
「あら、話し合うより、ちからずくの方が手っ取り早いですよ?
あなた方三人が一斉に襲いかかったら、我はひとたまりもありません。」
ドラゴンはマイの言葉を拒絶するような発言をする。
「そんな事言っていいのかな?私達がその気になったら、どうするの?」
ユアは剣の柄に手をそえる。だが、剣を抜きはしない。
「三人って、私は含まれてないのね。」
ローラスは悔しさまみれに、つぶやく。
「ええ、残念だけど、あなたが何人いても、我には勝てません。」
「そうよね。」
ローラスも、マイ達とのレベル差は痛感している。
三人がいる場所に、自分はいない事を、よく分かっていた。
「それで、あなたはお友達と、いつまで剣を護りぬくってお約束したのです?」
ここでメドーラが、戦いたがっている様にしか見えないドラゴンの気勢を制す。
「そうね、確か、あれは、えと、」
ドラゴンは何やら考えこむ。
「ひょっとして、忘れたの?」
慌てふためくドラゴンに、マイは突っ込んでみる。
「そ、そんなわけないぞ。我は神武七龍神がひと柱、グリーンドラゴンなるぞ。」
慌てるドラゴンは、求められた答えではなく、聞いてもいない事を口にする。
「あら、こんな所に神武七龍神様がいらっしゃるなんて、思ってもみませんでしたわ。」
メドーラは素っ頓狂に驚いてみせる。
「知ってるの、メドーラ。」
そんなメドーラに、マイは問いかけた。
「はい、マイお姉さま。神武七龍神とは、この世界を守護されてるといわれる、七匹のドラゴンにございますわ。
詳しい事は後ほど、パートナーのアイさんから、ダウンロードして下さい。」
メドーラはマイに対して満面の笑みで答えるが、視線をドラゴンに向けるのにともない、笑顔は消える。
「今は、その様なお話しをしている場合ではございませんですわ。」
「うむ、偉大なる我の功績を讃える刻ぞな。」
「ちーがーうーでーしょ。」
自分がど偉い龍だとバレたのをいい事に、調子にのってしまうドラゴンに、メドーラが突っ込んだ。
「あなたがお友達と交わした、約束についてでしょ。
いい加減、私も怒りますわよ。」
「い、今、記憶を遡ってる最中です。少し待ってください。」
「やっぱ忘れたんだ。」
そんなドラゴンを見て、マイはボソリとつぶやく。
「仕方ないよ。」
ここでユアがフォローを入れる。
「だって神武七龍神って、この世の始まりから存在すると言われてるドラゴンよ。
色んな記憶がありすぎて、整理がつかないのよ。」
「その通りです!」
ドラゴンはユアの言葉に、激しくうなずく。
「我は忘れたのではありません。無限の記憶から探し出してる最中なのです!」
それを忘れたと言うんだけどな。
マイはそう思ったが、口には出さなかった。
「僕達、ただ確かめに来ただけなのになぁ。
ここにある剣が、これと同じかどうかを。」
そう言ってマイは、ソウルブレイドのクダを手にする。
「それです!」
ドラゴンはマイのソウルブレイドのクダを見て、思わず叫ぶ。
そんなドラゴンを見て、ユアとメドーラもソウルブレイドのクダを取り出す。
「思い出しました。我が友、ブルードラゴンの言葉を。
いつかこのほこらに、ロトレンスの名を継ぐ者が剣を奉納する。
そしたら、これと同じ剣を持つ者が現れるまで、護りぬいてくれ。
そう、あなた達がブルードラゴンの言っていた者達なのですね。」
ドラゴンはそう言うと、その姿を変える。
その姿は、森で出会った緑色のドレスの少女だった。
「まあ、あなただったのね。」
マイは、少女との再会に感動する。
「いきなりいなくなったから、心配してたのよ。」
「その節は、ありがとう。マイ。」
少女はほこらから剣を取り出す。
それは千年間の伝説の剣士、かげろうおケイの使っていた剣だ。
少女はその剣を、ローラスに手渡した。




