第44話 歴戦の老紳士、疑惑の眼差し
これは西暦9980年のはるか未来のお話。
行方不明になったケイを探しに惑星ドルフレアに降り立った、マイ達三人。
この星特有の不思議なチカラ、マナに目覚めてしまった。
この星の集合意思であるイデとも、心通わせてしまう。
これはもしかして、この作品のジャンルが変わってしまうのだろうか?
そんな事はないと、人型変形戦闘機まで持ち出してしまった。
これが著名なアニメ作品なら、間違いなく劇場版でやるべき内容だ。
でもこの作品はまだ無名だし、このケイ捜索編は後に重要な要素になるはずなので、やらなくてはならない。
マイ達三人は、ローラスの馬車でロトリアの町へ向かう。
ちなみにローラスはローレンスという都市の貴族の娘。
向かうロトリアには別荘があった。
馬車内で、メドーラが体調を崩してしまう。
先の人型戦闘機での戦闘と、目覚めたマナの取り扱いで、疲弊してしまったのだ。
ロトリアの町は、4キロ四方を城壁で囲まれていた。
そのはずれの方に、ローラスの別荘があった。
別荘に着くと、ユアはメドーラをだきかかえ、別荘の一室に通される。
その部屋のベットに横たわると、メドーラは深い眠りについた。
「これ、大丈夫なんだよね?」
マイは額のチップを通じて、サポートAIのアイに呼びかける。
「大丈夫なはずです。初めて使ったマナに、あてられただけですから。
一晩ぐっすり眠れば、元通りですよ。」
マイはその言葉に安心する。
「まあ、穏やかな寝顔だこと。」
ローラスはメドーラの寝顔を見て、クスリと笑う。
「私も今夜はもう眠いですわ。詳しい話しは、また明日でって事で、よろしいでしょうか?」
ローラスの言葉に、マイもユアも異論はなかった。
「では、また明日。おやすみなさい。」
ローラスは部屋を出ていった。
この部屋に残ってるのは、寝ているメドーラの他に、マイとユアと、そしてセバスだった。
「二、三、お伺いしたい事がございますが、よろしいでしょうか、ユアシルクどの。」
セバスはユアに話しかける。
「えと、そう言う事はマイの担当なんで、マイと話してもらえませんか?」
「え、僕?」
突然振られたマイは、少し驚く。
ユアはセバスに背を向けて、マイのそばまで近づき、小声で話しかける。
「私があのセバスさんと話して情報収集するより、マイの方が適任なのよ。」
「なんでよ?」
マイはユアにそう言われても、理由が分からない。
「セバスさんのあの眼、武人の眼だわ。私と戦いたがってるのよ。」
「戦ってあげればいいじゃん。」
「ダメよ。私が圧勝しちゃったら、ここに居づらくなるわ。」
マイも、ユアがあからさまに手加減しない限り、勝負にならないと思った。
「それに、話しの内容なら、私達のパートナーのユウとアイを介して共有出来るけど、ユウってアイの事嫌ってるじゃん。」
「あ。」
マイにも、ユアの言いたい事が分かった。
「ユウからだと、話しの内容がちゃんと伝わるか、分からないって事ね。」
「そう言う事。メドーはマイに近くにいてほしいと思ってるだろうけれど、ここは私が見てるわ。
セバスさんとの事は、頼むわね。」
マイはセバスのそばに近づくと、笑顔で話しかける。
「セバスさん、私とでは駄目でしょうか。」
「マイアミン殿とですか。」
セバスの顔色は一瞬くもる。
だけどすぐに、そのくもりも消える。
「分かりました、マイアミン殿。ではこちらの部屋へ、お越しください。」
セバスはマイを先導するように、部屋を出て廊下で待つ。
マイはユアにメドーをお願いと言い残し、セバスの後に続いた。
隣の部屋には、豪華なテーブルとソファーがあった。
マイはセバスに勧められ、ソファーに腰掛ける。
セバスもマイの向かいのソファーに腰掛ける。
マイの目の前にティーカップがおかれ、紅茶が注げられる。
「さて、あなたにまずお伺いしたい事は、あなた方の故郷についてでございます。」
セバスは重い口を開く。そこには、返答を間違えたらどうなるか分からない、そんな威圧感があった。
「エティコが、どうかなさいましたか?」
マイはセバスの威圧感を受け流しつつ、それを気にしないそぶりで応える。
「エティコに縮緬問屋なんて、存在しないのはご存知ですかな?」
セバスは睨みを効かせ、殺気のこもった声で問いかける。
エティコの縮緬問屋。
メドーラが咄嗟に名乗った肩書きは、お着替えステッキを振るった時に、お着替えと同時に付与された設定だ。
マイ達の長ったらしい名前も、同様にお着替えと同時に付与される。
行方不明のケイもお着替えステッキを使ったなら、ケイネシア・ヤーシツ・メドローアと名乗ったはずである。
「あの、おっしゃる意味が分からないのですが。
あなたは僕を、怒らせたいのですか?」
マイは引きつらせた笑顔を演出して答える。
「ほう、あくまでしらばっくれますか。」
セバスも笑みを持って応えるが、凄味を効かせるのは忘れない。
「さあ?メドーラがエティコの縮緬問屋の三女で、僕はメドーラのお抱えメイド。それ以外の何者でもないのですが。」
マイはそう答えると、ティーカップの紅茶をひと口すする。
「ふはー、はっはっはー。」
突然セバスは笑いだす。
「何がおかしいのですか?セバスさん。」
マイは笑顔だが、眼に力を込める。
「いや、すまない。あなた方のやりとりを拝見していると、確かにあなたはメドーラ殿を慕ってはいます。
だけどそれは、メイドとして仕える主人に対してのそれではない。」
「さっきからあなたは、何が言いたいのですか!」
マイは笑顔を消して声を荒げる。
セバスは、明らかにマイを挑発している。
相手がユアだったら、普通に決闘になってた流れだ。
「では、単刀直入に、お聞きします。
あなた方は、公儀の隠密ではないのですかな?」
「こーぎのおんみつ?」
知らない単語に、マイはめんくらう。




