表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジデント・サーガ   作者: サンダル先生
1/24

① 夏が来る


 メガネっ子の冴えない女医は、車の中でずっと待ってた。自分が出るのを。引っ込み思案だから、いやしかし、今度こそ自分を変えないといけないのに。でも、あたしはアタシだ・・・。


 エンジンを止めてカチャ、と出たらもう春じゃなかった。GWはとっくに終わってた。長期休暇は、おそらくもうない。ふと、目の前を童顔の白衣が横切った。


「真っ白な白衣・・・あれは同類よね。たぶん」

 ついていくのは嫌だったが・・・彼?とは同じ方向でもあり、吸われるように後ろに従った。自ずと、いろんな数の白衣が入り口に吸い寄せられていく。


「始まるのね・・・始まるんだ」

建物の中に入って暗くなったとたん、はっと気づきやっと白衣を羽織った。目の前の童顔がいきなり立ち止まった。

「うっ」「あっ」


ぶつかりはしないが、エレベーターの前だった。しかし、他の新人医師らはためらうことなく非常階段を駆け上っていく。有り余るパワーが、2段3段と駆け飛ばしていく。


「う・・・」前の童顔の男性は、ちょこっとそっちにつられた。が、何度か振動し結局止まっている。

「・・・・」女医は、この間宮という女医は・・・


 そうだ。これは彼女がまだ生きていた時の話だ。しかし、この小説の主役は彼女ではない。ただ、どうしても欠かせない人物だ。小説によくあるように、なるべく客観性のある人物の視点で描くべきだ。少なくとも導入部に関しては。


 内科医、特にこの呼吸器・循環器科の合併した「胸部内科」。まだ平成始まって間もない、平成6年。


 間宮は病棟のカンファレンスルームを開けようとしたが・・いや、開けないのではない。


「(だだって、だってこの医者が・・・)」


「童顔」が、緊張して開けられないのだった。いや、押してるようだ。スライドなのに。


「(フーン・・・この研修医。同じ医局だったんだ。1人、よそ者が来るって話だったけど)」

間宮は楽になった。自分のようなもじもじ君が嫌いで、同じかそれ以下っぽいレベルであると安堵した。いや、受験では痛手を食らったこともある。いかにもできない素振りをして、実力テストで上位を取るやる。そもそも、彼女がそういう噂だったのだが。


 彼女はぬっと手を出し、横へスライドした。


「うっ」童顔・・・ユウキは、びくっと萎縮してそっと・・いや、例も言わずいきなり入っていった。ざわめく室内。タバコの匂い。誰もこっちを見てもない大勢。きれいな白衣が3人ほど待ってる。知ってるもと同級生たち。童顔だけが、自分には<よそ者>だ。ともあれ、研修医らが5人、揃ったわけだ。


 乱雑な椅子つき机が多数。いろんな方向に身をよじらせた医局員20余りが、ガハハワハハと笑う。隅に、窓を見やっているノッポがいる。この人だけ何か違う。転校生のような雰囲気。彼女は、自分の心の重箱隅の、王子様願望の引き出しを少しだが、開けておいた。


 何か、何か歌っている・・・?

「んが、くるぅ~、つがくるぅ~」


「はいはい!」突然、一瞬の沈黙。医局長の橋口、一見じいさんのような40代医師が黒板の位置へ。

「はいはい!静かに!」

「(一同)ガヤガヤ」

「揃いましたよ!こりゃこりゃ!静かにせな、やめられてまうでーこっち向かんかい!」


しゅん、と静まった。みなの視線が、後方の5人に集まった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ