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神から聞いた事情、闇ギルドの本当の狙い

 


『まったく……本当まいっちゃうよ。今回のは結構やばいなぁ』


 見覚えのある光の男? 女?(声からして男っぽくはある)の神様は何も無い空気の裂け目から飛び降りた。

 不気味にピクリとも動かないシュパースの町を見渡して、何かを探している。『あ! あれだ』と見つけたのは俺がぶっ壊した兜から不気味なものを噴出させてそのまま止まっている、ハオの姿。こわい。不気味すぎる。


『くっそ、原因はこいつかぁ……どこまでどうしたものかなぁ』


「あの、お前、神だよな? これって一体――」


 ブツブツと呟く神に、意を決して話しかけた。神は『え』と振り向き俺を見ると一瞬二瞬固まり、俺を指差してプルプルと震えた。


『ぎゃああああああ! ななな、何で動いて、え? おま、あれ? あいつらの息子じゃないか』


「え、何でと言われても……こっちが聞きたい」


 言われてみれば、確かに何で俺だけ止まってないの……? この不気味な状況も怖いけど、一人だけ動けているのもそれはそれで怖い。よかった、神がいてくれて。どこにもいかないでね……


『やっぱりお前、特異点なのか……』


「特異点……?」


『前々からおかしいとは思っていたんだよな。ジャスミンが悪役令嬢として処刑された時も大変な事になっていたからなぁ』


 うんうんと頷く神の言っている事はイマイチぴんと来ないが……もしかしてそれって俺が居なかった未来の話か……? 何で知ってるの。


『まぁ急いでもどうせある程度リセットしなくちゃいけない訳だからな。この際だ、私の話を聞いて貰おうか』


「俺に話を……もしかしてお前も悪役令嬢だったのか」


『誰が悪役令嬢だ。というか、その辺も全部話してやるから座れ』


 その辺をちゃんと話……? ついに655話にしてその辺がちゃんと話される日が来たってコト?!



 俺と神は近くのベンチに腰を下ろした。神がほれ、と何も無い所から飲物らしきものを差し出してきたのだが、妙にうっすら光っていて怖い。これ、飲めるの?


『何だ? 怪しいものじゃないぞ。家から持ってきただけだ。今この場に……いや、この世界の殆どのものは恐らく動かないからな』


 そう言って神は近くの通行人が持っていた飲物を持って逆さにするも、それはそこで零れることなく止まっていた。

『逆さにする位は出来るけどな、体の中で止まったら最悪だろ』


「基準が分からないが……それは確かに怖いな」


 試しにちょびっと舐めてみたら甘くてちょっと酸っぱいようなしゅわしゅわとしたような、あまり飲む感じのものではなかったのだが美味しかった。


「で、まず聞きたいのだが、この状況は一体何なんだ……?」


『これはな、フリーズバグだ。それも、回復不可能の、ちょっと重めなやつだ』


「フリーズバグ……? とは?」


『ああ、こういう時に異世界人がいれば話が早いんだがな……お前ここの現地人だったな』


「ああ、異世界の何かなのか。バグって何だっけ……何かどっかで聞いたような。異世界のゲームか何かだっけ?」


『お前は現地人にしては妙に話への理解が早くて助かるよ。そうだ、お前にとっての異世界人がいう【ゲーム】という奴は色んな情報やシステムを元に出来ている。本と一緒だ。本が文字で構成される世界ならば、ゲームは複雑な情報で構成される世界だが、その一部に不具合が生じて、全てがおかしくなったり止まってしまうのがバグだ。魔法使いで言うと、魔法文字が一部違っていて大変な事になるようなものといえば分かるか?』


「ああ、なるほど」


 確かに、魔法文字も仕組みが分かってしまえばぶった切れたりするからなぁ。


「まぁ、何となくは理解した。でも、いままでこんな変な現象なんて無かっただろうに、何で急にこんな事になっているんだよ」


『無かった訳では無いんだが……まぁえーと、どこから話したものか。お前は、この世界には何故こんなに物語だことのゲームだことのと言うやつが多いのか考えた事はないか?』


「え? まぁ……多すぎてそういうものだと思っていたのだけど、それに理由があるのか」


『ああ、大有りだ。そしてそれが今回の現象に繋がっている』


 何でこんなに多いのか、という疑問は昔は思っていた。というか悪役令嬢に出会いたて初っ端に言っていた気がする。


『これはお前には少々難しい話になるかもしれないが、この、今居るこの世界を構成する為に、異世界の物語を拝借している』


「異世界の……物語を? 確かにワンダーの書いた話に沿った人生の人が多いなとは思っていたけど……それってそういう事なの」


『ああ。ワンダーとかいう小説家な。あいつは本やゲームと良質な物語を生み出すので、それだけ重厚な人生が作り出される。そのイメージは力を持ち、ここの次元に存在しているという訳だ』


 なるほど、つまりは悪役令嬢が沢山転生してきたのも、そもそも元がそういう物語で作られた世界だったからって事……?

 俺も何かの物語だったのかなぁ……怖いから考えるのは止そう。


「……よく分からないがなるほど。じゃあ、これもワンダーの小説とかと何か関係あるのか?」


『いや……そうじゃないんだ。ワンダーはこの世界に転生してから小説を新しく生み出してはいない。殆どが過去に生み出されたものだ。それを少しずつ流用していたのだが……ここ最近になって代わりに力をつけてきたものがあってな。それが……クソゲー、クソ小説なんだ』


「クソゲークソ小説」


 作った人が聞いたらとんでもなくお怒りになりそうだが、その表現は大丈夫なのだろうか。


「クソゲーというのは聞いた事があるぞ。ワンダーの生み出した話から作られたゲームだって、そう呼称されていたものもあったような気がするが」


『お前が体験したのだったらそんなものはクソには入らない。そうじゃないんだ、単純に話がつまらないとか、展開が面白くないとか、そういう話をしているんじゃないんだ』


「じゃあどういう話なんだよ……むずかしすぎるだろう」


『そう……お前も知っているかもしれないが、異世界人というのは常識を超えた文化を生み出すだけでは飽き足らず、面白いの対極にあるぶっ壊れたものにある種の中毒性を生み出し、クソであればあるほど面白い、という訳の分からない娯楽を楽しむようになってしまっている』


「クソであればあるほど面白い……?」


 どういう事だ……? クソって事は蔑称だよな……? つまらないって事だろ? それが何を間違ったら面白くなるのだろう。


『特にそれに特化されているのがゲームの方で、あちらの文化が進むにつれゲームという存在が簡単に作れるようになってしまった反面、予期せぬトラブルやぶっ壊れ、バグといったものが発生するようになってしまったんだ』


「あー、なるほど。ドートンって奴が確かそのゲームとかいう物を作るとか言っていたけど、あいつの作ったであろうゲームとかはそういうのまともそうだったな。じゃあこの止まっているのはそのゲームのせいか……あれか、DGOとかいうやつ」


『そうだ。そのダークギルドなんちゃら、というゲームはな、開発期間と費用をめちゃくちゃかけた割りにバグや穴が多く、途中で突然のサ終をしてしまったというものだ。大々的に宣伝したからプレイした人は多かったのだろうけど』


「クリスティアのおっさん達もプレイしていたって事かー」


『で、ここからが本題だが』


 神は声色が少し真剣になった。顔は光っていてよく分からないが……


『変なバグや落とし穴が存在しているだけなら、別に良いんだよ。余程の確立でなければ同じ条件なんてほぼ出しようがないからな』


「たまたま偶然出てしまうって事もあるんじゃないのか?」


『たまたま……偶然な。一度や二度ならそういう可能性も無いとは限らないだろうが、私の把握している限りだと、そんなレベルじゃない。これはここ最近頻繁に起きている。で、それが先ほどのクソを娯楽としているという話に戻るのだが』


「つまり……誰かが意図的にそのクソゲームのバグを再現しようとしている、という事か……?」


『そうだ』


 神はモニュメントのように不気味なものを頭から噴出させているハオを指差した。何度見てもこわい。


『ここまで酷いフリーズバグが起きる条件は実に複雑だ。偶然起きるものではない。私が把握している限りだが【増殖バグによる同一キャラクターの大量増加】【悪役令嬢キャスカを存在させる事】【配布中止になったチートアイテムの再現】【アイテム無限使用による高負荷】これだ』


「それって……」


 おれはDGOをよく知っているはずのおっさんの言葉を思い出した。あのアイテムは存在するはずが無い、キャスカがいるはずが無い……


『仮に、キャスカが悪役令嬢に生まれ変わった転生者として偶然存在したとしても、他のものが同時に起きるはずなんてないだろう。そのせいで世界が止まってしまったんだよ』


「いやでもそれを誰かが意図的になんて――」


 そこまで言いかけて俺は思い出した。ハオも、キャスカも、そしてこのゲーム、ダークギルドオンラインと名前が似ているあの……


「闇ギルド……?」


『そうだよ。その最近台頭してきた怪しげな集団の中に、このクソみたいなバグを意図して起こしている奴が居るんだよ……それだけじゃない、このゲーム以外にもゲームが元になっている場所における変なバグを確認していて、それらは多少の修正で済んでいたから何とかなっていたけれど、今回のこれについてはこの有様さ。他の事件についてもやはり、その変な団体が関わっていたって訳だ』


「でも、何のために……いや、それがつまり、訳の分からない娯楽を楽しむやつらって事か」


『ああ。それが何人の転生者によって引き起こされているかは分からないが、少なくとも1人は確実に意図して人を動かしている』


「それは……また……」


 闇ギルド……最近になって調査に動いていたのだけれど、そう大きな被害は出ていないから緊急性は無いかと思っていたのだが……そんな事企んでいたの……?

 今まで世界を滅ぼそうとかそういうベクトルの人あまり居なかったんだけど、いや、別に滅ぼそうとしている訳じゃないのか。クソみたいなバグを再現したいのか……なんなの目的。


「事情は分かった。だが、貴方の力で何とか出来るのだろう。それならば早く――」


『そんな便利な訳無いだろう。私に制約があるのを忘れたか? 正直、ここを特定して降り立つのだって相当なペナルティなのに、干渉なんてもっての外だ』


「え……ならばどうやって」


『今の私に出来るのは少しの時間を戻す事と、ちょっとの変化を与える位しか出来ない。それくらいの干渉しか出来ないんだよ、ペナルティが痛いからな。本当は何度か時間を戻して、奇跡的にフリーズしないような流れになるまで続ける覚悟でいたのだが、お前が居てくれてよかった。これからお前を少し前に戻すから、こうならないように動いてくれ』


「え……俺が?」


『お前以外に誰がやるんだよ。それに、こういうバグも、今回はリセットする事で何とか再起動出来るが、下手したら世界がぶっ壊れるからな。だから、そうならないように闇ギルドを何とかしてくれ。頼んだぞ、ジャスミンの息子、漆黒の騎士ジェド・クランバル』


「ちょ、ま――」


 俺が返答するのを待たずに神が光に包まれた。光の中で『ギエエエエ』というなんらかの罰を受けたような声を微かに聞いた気がしたのだが、その声と光が晴れると同時に、俺は時が不気味に止まっていたシュパースの新エリアではなく


「ジェドさん、まーた遠方に出かけているんですか? いよいよ陛下の婚礼が決まったんじゃなかったんですか」


 と俺に声をかけるゲート都市の職員がいる、シュパースのゲートカウンターの前に居た。

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