どうやらハッピーエンドらしいです
これで「どうやらうちの妹が魔王に取り付かれたようです」完です。最後まで読んでくださりありがとうございました。長編で初めて完結出来たお話です。感想やアドバイスなどドシドシ送ってもらえると嬉しいです。
「クッ、デ、デテクルナ!オマエハワタシナノダゾ?」
⁈どうしたんだ?またいきなり自分一人で苦しみ出した。
「ヤメロ、デテクルナ。コノカラダハワタシノモノダ」
頭を抱えて一人で唸っている。
「にいちゃん、ねえちゃん……」
こ、これは愛莉の声⁈
「愛莉!愛莉なのね?どこにいるの?」
光莉はもう怪我のことを考えていない感じだ。僕も愛莉の声を聞き、冷静になれた。やっぱり、愛莉はまだ魔王に負けてないんだ。
「愛莉!頑張れ!」
僕に出来ることはこれくらいだ。声をかけて頑張ってもらうこと。
「コレハワタシノカラダナノダ。オマエハデテイケ!」
「ちがう!これはあたしのからだ!にいちゃんとねえちゃんいじめるやつはてきだ!」
声がコロコロと変わる。愛莉と魔王が身体を取り合ってるようだ。
「お兄ちゃん」
光莉は僕の方を見る。
「大丈夫、愛莉に任せよう」
愛莉なら絶対に勝てる。僕や光莉にない心の強さを持っている。魔王になんて負けるとは思えない。僕はうちの妹を信じれば良いんだ。
「にいちゃん、ねえちゃん。あたしをきって!そうしたらこいつはきえるよ!」
愛莉は僕と光莉に言った。
「光莉、やるぞ」
僕は光莉に手を貸し立たせた。
「うん、それで愛莉が助かるのなら」
光莉は頷き、僕の手をギュッと握る。
「ソンナコトシタラ、コイツモシヌゾ?」
「え?ど、どうしよう、お兄ちゃん?」
僕は光莉の手をしっかりと握り返す。
「愛莉とカリナ、それか魔王の言葉、どっちを信じる?」
僕たちは三大妖精の三人とも死なせてしまった。それは僕が弱かったからだ。でも、三人とも最期まで僕を守って、信じてくれた。だから今度は僕たちが信じる番だ。絶対大丈夫。
「そんなの、みんなに、決まってる!」
光莉も覚悟を決めたらしい。目の色が変わる。
「いいよ、やって」
「ヤメロ、ヤメルンダ。ソンナコトシタラドウナルカワカッテルノカ?」
魔王はここに来てもなお、言い張る。
「そんなのわかってる!」
僕は強く、はっきりと答えた。
「こいつのうごき、すこしとめるからそこねらって」
愛莉からの注文が入る。
「わかったわ」
光莉が答え、剣をギュッと握る。
「イインダナ?ドウナッテモシラナイゾ?」
まだ粘るかこの魔王め。
「行くぞ、光莉!」
「うん!」
僕と光莉は手を繋いだまま愛莉、いや魔王に近づく。
「ヤメロ、ヤメテクレ」
魔王はここに来て命乞いをする。
「愛莉、頼む!」
僕は愛莉に魔王の動きを封じるように頼んだ。
「はいっ、これでいいよ、やって!」
愛莉の身体はピクピク動いているが、それ以上は動かない。
「これで!」
「終わりよ!」
僕と光莉の剣が魔王の斬りつける。
「「死ねぇ!」」
そして、二人の剣が心臓を突き刺す。
「ウガッ、クッ、クソッ。ゼッタイ、ゼッタイユルサン。オボエトケヨー!」
そう言って、愛莉から邪悪なものがなくなっていった。
ガクッ
「愛莉!」
愛莉が倒れそうになると、光莉が支えた。
「大丈夫か、愛莉?」
僕は優しく頭を撫で、愛莉に聞いた。
「うっ、うん。ながいあいだ、くらいところにとじこめられてたよ」
良かった、良かった。愛莉だ、僕の妹の愛莉だ。もう間違えない。絶対にそうだ。
「良かった、愛莉。無事で何よりよ」
光莉は大粒の涙を流す。僕も泣きたくなかったが、目から涙が溢れ出す。
「なんで、ないてるの?」
愛莉は不思議そうに僕と光莉に聞
いた。
「嬉しいんだよ」
「そうよ、愛莉が戻って来て嬉しいの」
それを聞くと愛莉はふっと笑って言った。
「うれしいなみだもあるんだね」
僕と光莉は愛莉を抱きしめたまま、少しその場にいた。
それから僕たち三人は魔王の城から出た。そして元の世界に戻る方法を探していた。
「どうやって戻るんだろうな?」
僕は二人に聞いた。
「そんなのわかるわけないじゃない」
光莉にはスパッと言われてしまった。
「なにあれ?」
愛莉については話すら聞いていなかった。
こんな三人でどうやって元の世界に戻るんだよ……。全く、あの三人がいればな……。いやいや、あいつらにはもう頼れないんだ。僕がしっかりしなくては。
「あっ、こんなところになんかあるー」
愛莉が見つけたのは
「「ワープゲート?」」
僕と光莉は首をかしげて言った。
「これおもしろそうだからやろっ」
と言って勝手に入って行く愛莉。するとシュンッといって愛莉が消えてしまった。
「愛莉!」
光莉も愛莉を追いかけワープゲートの中に入っていってしまった。
「お、おい!はぁ、仕方ないなぁ」
結局わけもわからないようなところに僕も入って行った。
「うわぁぁぁぁぁ!」
案の定の回転して何処かに飛ばされる感覚。
ドテッ
「痛ってぇぇぇ!」
僕は何処かに腰から落ちた。
「もう、お兄ちゃん遅いよ!」
「にいちゃん、きたー」
そこには先にワープゲートの中に入った愛莉と光莉がいた。
「あれ?ここは?」
何やら見たことある風景だ……。何だろう、ずっと前から知っているような……。
「うちだよ」
「え?」
「だから家に帰ってきたの」
「あ、マジ?」
だから見覚えがあるのか。納得だ。って覚えてない方がダメだ。大丈夫か自分。
「あっ、帰ってたの?三人でどこ行ってたの?」
そこに現れたのは母さんだった。
「あ、え、えっと、それは……」
僕が困っていると光莉が横からにょきっと体を出し言った。
「友達と遊んでたの」
「そう。あっ、そういえば、お友達が来てるわよ、三人」
ん?誰だろう。それに結構留守にしていたはずなんだが……。全然気にしてないな……。
「居間に居るから、早く行ってあげなさい」
「「「はーい」」」
僕たちは同時に返事をして、三人で居間に向かった。誰なんだ?こんなにいろいろあったあとに訪ねて来る失礼な奴は。
ガラッ
「お待たせー」
居間の障子を開けるとそこにいたのは、
「おっ、遅かったね」
「遅すぎるで!」
「おかえりー」
三大妖精の三人だった。
「えっ?ユウナ、ローナ、カリナ?な、何で生きてるの?」
何でだ?三人とも死んでしまったのではないのか?
「失礼だな。ローナはしっかりと言ってなかったの?」
ユウナはローナをギロッと睨み言った。
「あ、あれー、おかしいなぁ。言ったはずやったんやけどなぁ」
怪しい。目が泳いでる。確実に言ってない、ってか聞いてない。
「僕たちはねー、あっちの世界で死んじゃうとこっちの世界でもう一度やり直せるのさー。こっちで死んじゃったら終わりだけどねー」
カリナは笑って言った。
「良かった、良かったわ。みんな無事で」
光莉は三人に抱きついた。そして涙をポロポロと流し始めた。
「もう、どうしたのよ」
「泣くなや」
「良かった、良かったー」
三人も光莉を抱きしめ、頭を撫でた。
「ってことは今、人間なのか?」
妖精から人間に進化なのか退化なのか……。
「そうよ?あっ、それでいきなりで悪いんだけど、私たち住む場所ないのよね」
はい?
「だからここに住まわせてもらうわ」
え、えぇぇぇぇぇ⁈
「な、何でだよ!嬉しいけど、何でだよ!」
ただでさえ、狭いのに三人も増えたら確実に家がパンクだ。
「お母様にも許可は頂いているわ。これからよろしくね、優莉、光莉、愛莉ちゃん」
ああ、そんなってるのかよ……。
「よろしくー!」
愛莉も光莉も真似て三人に抱きつく。
「これでみんな一緒ね」
光莉は涙を拭い、笑った。
こうして僕らの家にユウナ、ローナ、カリナの三人が加わった。一緒に魔王を倒した仲間であり、今は家族だ。これからはずっと一緒だ。もう、あんな思いはしない。これから毎日楽しいぞ!