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第12話 未完成の証明 〜ここにいる それ以上の理由がどこにある〜

「撃てええええ!!」


 兵士の指がトリガーにかかる。


 その瞬間──


 悪魔が、消えた。


 一瞬の静寂。


 ドドドドドドン!!


 銃声よりも先に、打撃音が響く。


 帝国軍の兵士達は──宙を舞った。


 ズドン!! ズドン!!


 叩きつけられる。


 絶命。


 デビルズ達は、自分達の拳を見た。

 リーダー、マイクも。


「このガキ……デビルズを、動かしやがった……」


 デビルズ達の視線がウィーニーに向く。


 ウィーニーは、下を向いたまま呟くように言った。


「ダイスは……返す……」


 ウィーニーはサイコロを差し出した。


 受け取ったサイコロを見つめるマイク。


「ダイスはいらない……オレも……ストリートデビルズに入りたい……」


 視線が、今度はマイクに向く。


 マイクは、ウィーニーの顔を覗き込んだ。


「無理だ」


 そう言うと、マイクは手を挙げた。


 悪魔達がウィーニーを囲む。


 パチン。


 マイクが指を鳴らす。


 ドン!


 悪魔が胸を叩く。


 ドン! ドン!


「鳴らしてみろ、お前の音。それからだ」


「え」


 ドン! ドン!


「ここにはオレを入れて9人の悪魔がいる。5人以上がお前を認めたら──デビルズを見せてやる」


 ドン! ドン!


「やってみろ、ガキ」


 ウィーニーは拳を握った。


 ドン!ドン!


「一度だけだ」


 唇がわずかに震えた。


(ここだ……ここが最後のチャンス……)


 ドン! ドン! ドン!


(聞いてくれ、デビルズ。何もない、オレのビート)


「Hey……Yo……」


 悪魔達の視線が突き刺さる。


(……やる!)

────────────────────

Yo……Yo……

今ここで声を上げる


Yo──

オレはウィーニー 誰も呼ばねえウィーニー


でも消えねえ この名 ここで刻む意味に

ゴミって言われてきた その全部 燃料に


未完成 それがどうした まだ伸びる余地

ここで折れねえ意思 それがオレの価値


Yo──

ネズミと刻んだビート それがスタート

猫にディスられ チョークアウト

言われたよ 場違い モップが似合い

お前の夢がファンタジー


でも消えねえ この名 ここで刻む意味に

ゴミって言われてきた その全部 燃料に


見てろ 逃げねえ それだけで十分

この一歩が嘘じゃねえ それがオレの証明だろ


ここで終わるか ここで変わるか

その境目 今ここでぶち破るだけだ


Yo──デビルズ

憧れたよ 背を向けねえデビル

オレも曲げねえ信念 だからここにいる

見てくれよ オレのソウル


ブチかますオレのブロー

刻むぜ ここで オレのフロー


見てろ 逃げねえ それだけで十分

この一歩が嘘じゃねえ それがオレの証明だろ


──ここにいる

それ以上の理由がどこにある

────────────────────


 沈黙。


 いつの間にか、デビルズの刻んでいたリズムは止まっていた。


「はぁ、はぁ……」


 マイクは右手を横に伸ばした。


「合格」


 次に左手を伸ばす。


「不合格」


 ウィーニーは顔を上げた。


「お前ら、並べ」


 悪魔達がマイクの横に並ぶ。


(1、2、3……)


 ウィーニーは、声に出さずに数えた。


 マイクが目を見開いた。


「合格4人、不合格4人、か」


 ウィーニーは、恐る恐るマイクの顔を見上げた。


 マイクは大きく息を吐いた。


「ちっ……仕方ねえ。見せてやる、デビルズを」


 肩がビクッと動いた。


 ウィーニーは何も言わず、静かに頷いた。


 マイクは、ウィーニーに黒い名刺を手渡した。


「陽が沈んだら来い。もう戻れねえぞ。本当の地獄はここからだ」


 そう言い残すと、デビルズは去っていった。


 本当の地獄。

 その言葉の意味を、ウィーニーはまだ知らなかった。


 ウィーニーは、ボロアパートに走った。


「マジか! オレ、デビルズに認められた! 信じられねえ! やった! やったぞ!」


 勢いよくドアを開ける。


「ロッキー!! やったぞ!! オレ、やったぞぉ!!」


 部屋の穴から、ロッキーが顔を出した。


「お前のおかげだ! ついにデビルズに入れたんだ!」


 ロッキーは首を傾げていた。


「何してんだよ! お前も一緒に行くんだ! まだオレにはお前との練習が必要だ! お前と刻むビート──」


 ロッキーは、浮かれるウィーニーの言葉を遮るように、穴の中に戻っていった。


「な……。そっか。そうだよな……。お前の家は、ここだもんな」


 ウィーニーは、穴を眺めながら呟いた。


「もうここには戻らない。じゃあな! 達者で暮らせよ!」


 ウィーニーは、静かにドアを閉めた。


 トン。トン。トン。


 部屋には、ロッキーのビートが響いていた。


 アパートの出口。


 塀の上から猫がウィーニーに声をかける。


「おい、便所掃除! てめえここを出るのか?」


 ウィーニーは答えない。


「ギャハハハ、ついに終わりだな! ここを出たらお前は野垂れ死に確定だ! 大人しく便所掃除してりゃいいのに! あばよ! ギャハハハ!」


 ウィーニーの足が止まった。


────────────────────

Yo──

まだ聞こえるぜ その声

そこにいるのもスタイル

でもオレは違う道を選んだだけ

否定しねえよ お前の声も


噛みつくな 戦わねえ お前とは

ここで終わり それでいい


──じゃあな

────────────────────


 猫は──黙った。


 ウィーニーは、そのまま歩き出した。


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