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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
プロローグ
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1/112

〜言葉で暴動 ビートで行動 奪うこの王道 これが新章〜

 便所を磨いていた。

 それがオレの仕事だった。


 腐臭が、鼻の奥にこびりつく。

 バケツの水は、最初から灰色だった。


「オレも流れていけばいいのに……」


 オレの名前は、ウィーニー。

 親は、いない。

 気付いたら、ストリートで暮らしてた。

 孤児院にいた記憶もあるが、もうはっきりと思い出せない。

 

 オレの名前は、Weeny。

 ちっぽけ。そんな意味しかない。

 誰かが呼ぶ度に、笑いが起きた。


 名前なんて、呪いだと思った。


 この夜までは。


ドン。

ドン。


 その音で、顔を上げた。


 路地裏の奥。

 ──角。

 ──黒いジャージ。

 ──赤い目。


 悪魔が、立っていた。


 そして、オレを見て──ラップした。


────────────────────

その目、weakじゃねえ むしろキー

winに変えりゃ全部ひっくり返る

名前は奪うもんだ 覚えとけ

渡されるもんじゃねえ 奪って残せ

────────────────────


 意味はわからなかった。

 でも。

 胸の奥で、何かが鳴った。


 世界は今、巨大な戦場だ。


 その路地裏にいたのは、便所掃除の少年。

 

 誰にも、相手にされない。

 誰にも、見向きもされない。

 誰にも、声すら聞かれない。


 武器なんて、何もなかった。


 だけど、あの夜。

 悪魔が叩きつけた、ラップ。

 それだけが──”可能性”に思えた。


 肩書きなし。所属なし。後ろ盾なし。


 何者でもねえ。

 だから──何にでもなれる。


 笑われた名前で世界を黙らせる。


 路地裏のウィーニー。

 ここから、全部ひっくり返す。

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