〜言葉で暴動 ビートで行動 奪うこの王道 これが新章〜
便所を磨いていた。
それがオレの仕事だった。
腐臭が、鼻の奥にこびりつく。
バケツの水は、最初から灰色だった。
「オレも流れていけばいいのに……」
オレの名前は、ウィーニー。
親は、いない。
気付いたら、ストリートで暮らしてた。
孤児院にいた記憶もあるが、もうはっきりと思い出せない。
オレの名前は、Weeny。
ちっぽけ。そんな意味しかない。
誰かが呼ぶ度に、笑いが起きた。
名前なんて、呪いだと思った。
この夜までは。
ドン。
ドン。
その音で、顔を上げた。
路地裏の奥。
──角。
──黒いジャージ。
──赤い目。
悪魔が、立っていた。
そして、オレを見て──ラップした。
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その目、weakじゃねえ むしろキー
winに変えりゃ全部ひっくり返る
名前は奪うもんだ 覚えとけ
渡されるもんじゃねえ 奪って残せ
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意味はわからなかった。
でも。
胸の奥で、何かが鳴った。
世界は今、巨大な戦場だ。
その路地裏にいたのは、便所掃除の少年。
誰にも、相手にされない。
誰にも、見向きもされない。
誰にも、声すら聞かれない。
武器なんて、何もなかった。
だけど、あの夜。
悪魔が叩きつけた、ラップ。
それだけが──”可能性”に思えた。
肩書きなし。所属なし。後ろ盾なし。
何者でもねえ。
だから──何にでもなれる。
笑われた名前で世界を黙らせる。
路地裏のウィーニー。
ここから、全部ひっくり返す。




