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11 .恐怖の晩餐

パーティー会場に入るとすぐに黒髪の男性が目に入った。しばらく会ってなくても見間違えるはずがない。あんなに心焦がれてたのに。隣にいる妖艶な女性に顔を近づけて笑顔を向けているのを見て、私は見つからないようにすぐに会場の外に出た。


「だから手紙も返事はくれないし通信も出てくれなかったのね」


心がガラガラに砕け散った感覚に陥る。何も考える力が湧かない。私がいるのがバレる前に早くここからいなくならなきゃ…これ以上惨めな気持ちになりたくないから。







「エルレナ様、エルレナ様!」

「んー?」

「ドレスのまま寝てしまってはダメです!このドレス、最高級品ですよ!」

「あ!まずいっ!」 


私は急いで飛び起きた。さっきのは夢だったみたい。

あー遅かった。ドレスはしっかりシワになっている。私が今までで着た中で一番高級なドレスが…


「とりあえず脱ぎましょう。手入れしておきます。それより、実は皇室専属の侍女さん達がいらっしゃってて。エルレナ様にご挨拶したいそうです」

「分かったわ。じゃあ人前に出れるように整えてくれる?」

「はい了解です」


アリーに髪型やメイクを適度に整えてもらい、ドレスも少し手軽だけど地味ではないものに着替えると、皇室専属の侍女達が3人並んで入ってきた。 


「エルレナ殿下にご挨拶申し上げます。この度、殿下に仕えさせていただきます」

「そうよろしくね。じゃあ私の習慣とか好みとかは、こちらのアリーに聞いてもらえる?アリーが私のことを1番詳しく知っているから」


申し訳ないけどこの娘達に私の弱点を見せるわけにはいかないから、親しくはできない。基本的には私に近い部分はアリーに手伝ってもらう以外にはない。


「エルレナ殿下、夕方から皇太子妃候補者様達の晩餐会が予定されております」

「ええ、じゃあ早速準備を手伝ってもらってもいいかしら?」

「他の候補者様に負けないように美しくいたしましょう」

「腕によりをかけて頑張らせていただきます」




さすが皇室専属の侍女達、流行に詳しいし腕が確かだ。本当に腕によりをかけてくれて、肌はツヤツヤだしメイクも髪型も流行のものにしてくれた。3人とも満足そうにニコニコしている。


「ありがとう。すごく素敵だわ」

「元々の素材が良かったからです」

「エルレナ令嬢が美しいからです」

「腕を振るえて楽しかったです」


下手したらさっきの殿下との対面より綺麗になっているかも…ハッとアリーの方を見ると、アリーはこっちを悔しそうに見ている。


「エルレナ様、私悔しいです。こんなにエルレナ様をもっと輝かせる技があるなんて」

「アリーの腕も素晴らしいわよ!」

「私、王都でいっぱい勉強して帰ります!バルディリス領にその技術を持ち帰ります!」

「アリー様、素晴らしい意気込みです」

「私達にできることがあったらいつでも言って下さいね」

「王都にはこういう流行を紹介してくれる本もあるんですよ」


私、皇太子妃になるからバルディリス領に帰る気ないんだけど…そう考えている傍でアリーと皇室専属の侍女達は楽しそうに盛り上がり始めた。アリーが楽しそうで何よりだ。




そのまま皇室専属の侍女に案内してもらい食堂に入ると、短い赤い髪に赤い目のご令嬢と緑色の髪に茶色の目のご令嬢がもう着席していた。赤い髪のご令嬢はアルタナ侯爵令嬢、緑の髪のご令嬢は特徴的にルーライ伯爵令嬢のはずだ。

私がお辞儀をして座るとすぐに金色の髪に青い目の圧巻的な華やかさを持つ令嬢が入ってきた。よくその美しさを噂に聞く、アントワープ公爵令嬢だ。よくユージン兄様が手紙でアントワープ公爵令嬢がどれだけ美しいか語っている。

アルタナ侯爵令嬢は知的な雰囲気のショートカットが似合うスマートな美人で、ルーライ伯爵令嬢は清楚そうな雰囲気の美人、まだ来ていないマクロン侯爵令嬢はピンクの髪の可愛らしい雰囲気の美人だ。

さすがみんな皇太子妃候補、帝国の中でも圧倒的な美人ばかり集まっている。私の茶色の髪の毛なんて地味に見えてくるわ。心の中で勝手に自虐して、勝手に落ち込んでしまった。


そういえば、さっきから考え事をしながら待っているけど、まだマクロン侯爵令嬢が来ていないみたいだ。侍従の人達がそわそわし始めたので、そろそろ様子を見に行っているのではないだろうか。


「遅いですわね、マクロン候爵令嬢はまだですの?」

「本当ですわね。先に始めてもよろしいのでは?」


アントワープ公爵令嬢とルーライ伯爵令嬢が笑いながら上記の会話をしている。普通は心配しながら話すのではないだろうか。そう疑問に思っていると、食堂の扉が開いてマクロン侯爵令嬢が入室した。


「申し訳ございません。時間を勘違いしていました」

「時間の管理もできないなんて、あなた皇太子妃になれると思っているの?」

「以後気をつけます。ご迷惑お掛けいたしました」


マクロン侯爵令嬢が私達に向かって頭を下げた。

これは…

この状況を見るからに、アントワープ公爵令嬢とルーライ伯爵令嬢のどちらかまたは両方が裏で手を回して、マクロン侯爵令嬢に違う時間を教えるように仕向けたというとことじゃないのだろうか。怖っ!怖すぎる。男兄弟の中で育った私には強烈な女同士の戦いだった。


マクロン侯爵令嬢が席に座り、晩餐が始まったがかなり重い空気が流れている。アントワープ公爵令嬢とルーライ伯爵令嬢は元々知り合いなのか2人で盛り上がっているが、私はアルタナ侯爵令嬢は同じ派閥だけど1、2度会ったことがあるかないかだし、マクロン侯爵令嬢は本当に初めましてだ。

とりあえず隣で泣きそうな顔をして食事をしているマクロン侯爵令嬢に声をかけておこうか。私は小声でコソッとマクロン侯爵令嬢に声をかけた。


「マクロン侯爵令嬢、大変でしたね。」

「はい。実は皇室専属の侍女から伺った時間が違っていまして…私が連れてきた侯爵家の侍女も一緒に聞いていたので間違いないはずなのですが、彼女達は正しい時間を伝えたと言い張っていまして…」


あー…やっぱりそういうパターンか…

ライバル令嬢達が裏で手を回したのか、それともこれも皇室からの試練?結局どこまで信用したらよいのか分からない。怖すぎる…


「マクロン侯爵令嬢、また間違えがあったら大変なことになりますし、何か連絡事項があったらお互いに確認し合いましょうか?」

「良いんですか!?私、これからどうしようか悩んでいたところだったんです!」


マクロン侯爵令嬢が嬉しそうに目を輝かせている。2人で恐怖を分かち合っていると、アントワープ公爵令嬢がこっちをじっと見て声をかけてきた。


「そういえばバルディリス辺境伯令嬢はランカスター公爵令息とご結婚されると噂になってましたが、ここにいるということは違っていたんですね」



次のターゲットは私かー!!!


すみません。今日も19時に間に合わなかった…

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