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10.再会か襲来なのか

「いやー、クロードにはびっくりしたな。お前ら知り合いだったの?」

「私もびっくりしたわ。あそこで声かけて欲しくなかった。先日出かけた時にたまたま知り合っただけよ」

「あの瞬間、広間が凍りついたよな。お前が何かやらかしたのかと思ってヒヤっとしたわー」


殿下との対面も終わり、候補者達は順番に下がらせてもらえることになった。王城の中に用意してもらった自室にユージン兄様と移動しているところだった。お互い緊張が解れて、お喋りしながら王城の廊下を歩き進める。


「やらかしたって兄様と一緒にしないでよ」

「俺はまだ王城ではやらかしてないからな」


まだって…やらかす予定あるのですか…



「エルレナ!!」


突然大声で私の名前を呼ぶ声が聞こえ思わず振り返ると、黒い髪に金色の瞳、殿下とは違う種類の美男子が私を追いかけてきた。その後ろからは焦った様子のピーラポック侯爵が追いかけている。

殿下は男らしい体つきのキリッとした美男子だが、彼は背は高いが線の細い、気だるげな雰囲気が漂う美男子だ。そして瞳の色が殿下と同じ色なのは、彼の母親が皇帝の妹、元皇女が公爵家に降嫁したからだと思われる。


「おい、何でお前がここにいんの?」

「クラウス!さすがに皇太子妃候補に『お前』はダメでしょ」

「いや、何でお前が皇太子妃候補なんだって!」


彼はかなり怒っているようだ。どうやらさっきのクロード殿下との対面の時に広間にいたらしい。緊張で前しか見てなかった私は気づかなかったけど。そして久々に会っても私の心は思ったよりかなり凪いでいた。


「クラウスちょっと落ち着けって」

「いやいや、この状況でどう落ち着けって!?」


ユージン兄様とピーラポック侯爵が落ち着かせようとしているが、クラウス様は大分怒っているようだ。ピーラポック侯爵なんて控室で「びっくりして腰抜かすの楽しみー」とか言っていたが、クラウス様が想像以上に怒っているせいかかなりビビっている。


「お久しぶりでございます。クラウス・ランカスター公子様。今更私に何かご用でしょうか?」


この1年の修行の成果を見せつけるために、優雅な礼をした。もうあの頃のじゃじゃ馬娘はいないのだ。


「お前は俺の婚約者だろ」

「あらやだ公子様、私達婚約書面も書いておりませんし、婚約式もしておりませんわ」


社交用の満面の笑みで返してやった。


「お前いい加減にしろよ。何、その話し方?いつも通りに話せよ」

「何のことでしょう?私達特に親しくもないではありませんか」

「すげえ親しいって。ほぼ毎日あってただろ」

「それは幼い頃の話です。勘違いさせるようなこと言わないでいただけます?」

「ストップストップ!クラウス、エルレナ殿下、こ

こで言い合ったら目立つから場所を変えよう」


ピーラポック侯爵が焦りながら話を中断させた。

城のど真ん中で言い合っていたからかなり目立っている。ましてや、皇太子妃候補と筆頭公爵家の嫡男がだ。ユージン兄様が即、談話室の使用許可を取ってくれて場所を移動させた。


「そもそも親同士の約束でほぼほぼ婚約してるようなものだっただろ」

「ずーっと婚約先延ばししてたのはそちらではありませんてしたか?」

「こっちは去年申し込んだだろ。さっさと皇太子妃候補辞退しろよ。今すぐ!」

「もう皇太子妃選定の同意書にサインしてしまいましたわ。手遅れですわね、残念ですね」


話しは全くクールダウンせず、即ヒートアップした状態に戻った。


「クラウス」


さっきからこのヒートアップし過ぎた会話に入り損ねていたピーラポック侯爵が勇気を出して入ってきた。ユージン兄様は未だにビビって入り損ねている。


「エルレナ殿下と結婚するつもりだったんならなんで大事にしなかったの?」

「いや、だってこいつ俺のこと大好きだし…」


わたしが幼い頃から好き好き言ってたから放っといて良いってか。私が婚約の申し込み断った時も、バルディリス領まで会いに来ることもなかったもんね。どこかのご令嬢達と遊び呆けてたのはどこの誰だ!?


「クラウス様」


いつまでも追いかけてると思わないでいただきたい。私の恋はもう終わったのだ。


「私、もうクラウス様のこと好きではありません。クロード殿下をお慕い申し上げております」

「は?」

「殿下の男らしくて真っ直ぐな所に惹かれました。そして何より、私この帝国で一番位の高い女性になりたいのです。邪魔しないでくださいませ」

「本気で?」


睨みつけて話すと、クラウス様は信じられないという顔をしている。私のこの数年の鬱憤が晴らされた気がする。


「クラウス様も他の女性とお幸せになさって下さい。どうぞお元気で」

「あーあクラウス、もう取り返しつかないやつじゃん」


ピーラポック侯爵の呆れた声が部屋の中にポツンと響き、ユージン兄様は私の隣でウンウンと頷いている。


「では私失礼いたします。今日は色々と疲れましたので。ではご機嫌よう」

「まだ話は終わってない!」

「エルレナ殿下、ご機嫌よう!お疲れ様です!」

「お疲れ!お疲れ!クラウスとジェラルドまたな!」


ピーラポック侯爵がクラウス様を抑えてくれているので、私はユージン兄様を連れて談話室を出た。ユージン兄様もピーラポック侯爵もこの話を一刻も終わらせないとマズイと判断してくれたようだ。


本当に今日は色々あった日だなあ。私は王城に用意してもらった自室のベッドにダイブした。

ついにクラウス登場です!2人の話の掛け合い、書いてて楽しかったです。

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