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もうすぐ休日



「命中率も上がってきましたね」

「ええ、搭載できる艦載機は少ないですから、嬉しい結果です」


 雲龍さんと俺は湘南基地から五十キロ地点海上で双眼鏡片手に、二キロ先の目標に急降下爆撃を行う九九式艦上爆撃機を眺めながら、目標への命中判定に俺は笑みを浮かべる。ひたすら、艦爆を急降下爆撃させるのはやっぱり疲れるが、結果が出ると嬉しいな。


 搭載できる艦載機が少ないので、一機落とされれば戦闘力低下につながる。

 それ故に、艦載機の遠隔操作の訓練はかなりハードだ。

 目標は防衛軍の駆逐艦を想定している。最初の頃は外れ判定が多かったが、今は大分当たるようになってきた。


 ただ、エイリアン相手だと、まだまだ未熟だ。

 俺が最初に戦った王女級のエイリアンの護衛の下位エイリアンは、大型の戦闘艦型のエイリアンだった。


 だが、エイリアンの形はかなりの種類がある。海上のことを考えると戦闘艦だけではなく、サメやクジラの形を模したエイリアンも存在している。

 大きさは元となった生物に近く、少なくても駆逐艦よりも小さい。

 それらのエイリアンと戦う場合は、より精密な爆撃が必要になる。

 戦女子同士の模擬戦は、そう言う意味ではかなりハードな物だ。


 だって、艦載機をラジコンサイズにして小回りを利かせているとは言え、人間サイズに急降下爆撃を当てて来いって、かなり無茶だ。

 まあ、大鳳さんの時は運良く一発当たったけれど、その後は……。


「時間ですね。訓練を終了します」

「了解です。基地へ帰還します」


 艦載機を戻るように指示を出すと、雲龍さんがつーっと海面を横滑りしながら、俺の左隣へ近づいてきた。


「ところで、次の休みはどうするの?」

「どう、とは?」


 興味津々な表情をしながら、小声で俺に問いかけてくる雲龍さん。


「いやぁ、俊和君と会うんでしょう?」

「ええ、久しぶりに会いますよ」

「二人きりで?」

「え、ええ、泊まれないので、街で会うことになっていますが、保護者の方達は用事があるみたいですし」


 俺がそう言うと、普段は真面目な雲龍さんが、ちょっとニヤニヤしながらこう言った。


「デート?「違います」――あ痛っ」


 雲龍さんに割と本気のデコピンを叩き込んで、俺は小さくため息をつきながら、飛行甲板を構えて戻ってきた九九式艦上爆撃機を回収する。


「俊和とはそういう関係ではありませんよ。でも、意外ですね。雲龍さんがそう言うことを聞いてくるなんて」

「いたたた……、私だって、女の子だからね。やっぱり、そう言うのは気になるよ」

「そう言うものですか?」

「うん、そうだよ。私を生み出してくれたのは女の子だったからね、島風ちゃんやチハちゃんみたいにはいかないし」

「あー、そう言えば、あの二人はそうでしたね」


 島風とチハを生み出したのは男性だ。

 そういう関係一歩手前、友達以上恋人未満と言う感じだ。


「皆、やっぱり気になるみたいだよ。まぁ、そう言うことは諸刃の剣だけれど、大事なことだと思うし」


 前線の兵士と恋仲になった戦女子は、その兵士が戦死すると人間の女性と同じように心が折れる可能性がある。

 だから職場恋愛は非推奨だし、戦女子には男性兵士は出来うる限り近づかないように通達されている。

 ま、お互い仕事だからどうしても接触はするし、心はどうしようもない。

 結果として、ドロドロな三角、四角なんてものも時々起こるようだが。


「大事にしてあげなよ。その男の子」

「ええ、もちろんですよ。弟みたいなものですから」


 俺がそう言うと雲龍さんは何故か可笑しそうに吹き出していた。

 何か変なことを言ったか?



△▼△▼



「ものの見事に島風ちゃんから借りた少女漫画みたいなことを言っていたなぁ」


 訓練終了後、自室へ戻ってきた雲龍は机の上に置いてある島風から借りた少女コミックを手に取る。


「私達は兵器。けれど、心もある。なんで人の形を心を持って生まれたのかは分からないけれど、せっかくだから、楽しんだ方がいいよ。信濃さん」


 雲龍は手に取った少女コミックを本棚に置くと、訓練のレポートを書く為に椅子に座った。



△▼△▼





「ふぅ、やっぱり、お風呂は良いですね」

「ええ、本当に」


 夕食後、俺は大鳳さんとチハ、島風、涼風の五人で戦女子専用の浴場にきた。


「浮いてる……」

「ええ、浮いてるでありますね」

「二人とも、見ない方がダメージは少ないわよ」


 涼風、チハが俺と大鳳さんを見て、目が死にかけている。

 島風はある程度慣れたらしいが、それでもダメージを受けるみたいで俺と大鳳さんの胸を見ないようにしている。

 うん、俺も初めはこの浮く二つの母性の固まりに驚いたけどね!

 ちなみにサイズ的に、俺の方が大鳳さんよりも一回りくらい大きい。


「立派な物をお持ちですね」

「いえ、そちらこそ」


 俺と大鳳さんは苦笑いを浮かべる。

 うん、胸は重いが。俺の場合戦女子(兵器)補正? 的な物のお陰で、あまり重さを感じない。

 人間の身体だけれど、人間とは強度がやはり違う。

 こう言うところは、便利な身体だと思う。


「いいわね。貴女達は」

「いえ、大きければ良いと言う訳ではありませんよ、島風」

「そうは言うけれど、やっぱり女としての魅力を考えるとねー」


 自分を生み出してくれた適性者の男性のことを考えれば、もう少し大きくしたい。と思うのが人情か。


「いいですね。そう言うの」

「何が?」


 大鳳の言葉に俺は首を傾げる。

 すると、大鳳はちょっと拗ねたように言った。


「女所帯ですから、そういう恋愛などの話はあまりないのですよ」

「ああ、そういうことか。…………って、何で全員私を見る?」

「いやぁ、この中で一番進んでいるのはアンタじゃない? 信濃」

「は?」


 何を言っている島風。俺にそう言う相手はいないぞ。と思ったが、先ほどの訓練での雲龍さんとのやり取りを思い出して、俺はまたか……、と内心頭を抱える。


「そうでありますな。数日とは言え、同棲していたのですから」

「はわっ、同棲ですか?!」

「しかも同衾していたとか」

「貴女達ね……」


 チハと涼風が馬鹿なことを言いだしたので、俺が溜息をつくと肩に手を置かれた。

 見てみると大鳳さんが詳しく! って、感じで、目をキラキラさせながら、俺を見つめていた。


「いや、恋愛感情は無いよ。ってか、弟みたいな。保護者とみたいな立場だからね」

「いやいや、さっき脱衣所で、次の休みには俊和に会えるって、すごくうれしそうだったじゃない。ちょっと笑顔が気持ち悪かったわよ」

「島風、流石にフィルター掛け過ぎじゃない!?」

「いやいや、可愛いショタッ子に会いに行くのが楽しみでしょうがないって顔をしていたわ」

「違うって!」

「まぁまぁ、落ち着くでありますよ。信濃殿、島風殿」


 俺と島風がヒートアップする前に、チハが止めに入った。ちょっと呼吸を整える。

 ここは風呂だ。人間よりも熱に強いが、頭に血が上り易くなる。気を付けないと。


「具体的に、その子とはどうなのですか?」

「どうって、弟みたいな。家族みたいな」

「憎からず思っているでしょうね、一緒に眠ったんだから」

「ふんっ!」

「あたっ!」


 不用意にこちらに近づいてきた島風にデコピンをくれてやる。

 まったく、からかうなっての。


「俊和は、私にとって弟みたいな、守りたい存在ですよ。恋愛感情は無いです。それよりも、島風達の方が恋愛しているんじゃないの」

「え、あー……」

「あははは、そういえばそうでありますな」

「あ、あぅ……」


 島風、チハ、涼風を産み出したのはそれぞれ男性だ。

 詳しくは聞いていないが、会える時はデートをしているらしい。

 特に島風を産み出した適性者の男性は、休みのたびに会おうとして仕事が原因で会えないと血涙を流して悔しがるらしい。


「あ、あの変態には感謝しているから会うだけで、恋愛感情なんて無いわよ」

「そう言う割に、送られたプレゼントを大事にしているでありますな」

「チハ、うるさい!」


 ばしゃっとチハの顔にお湯をかける島風、チハはどこ吹く風だ。


「それで、島風の方はどうなの?」

「言うわけないっ、……そうね。教えてもいいわ」


 頬を紅くしながら、ツンデレみたいに反論しそうになった島風だったが何故か、数秒かたまり、何事か考えるようになった。


「……いいわ、教えてあげる」

「「「「え!?」」」」


 その言葉に俺達全員が驚く。突然どうした?


「ただし、信濃。貴女、次のデートの内容を教えてもらうわ」

「はい?」

「まぁ!」

「ほほぉ、良いでありますな」

「あ、あぅう……」


 目をキラキラさせる大鳳。面白そうに笑みを浮かべるチハ。デートと聞いて恥ずかしそうに俯く涼風。


「いや、二人で買い物に行くだけだぞ」

「そうね。信濃は買い物。けれど、俊和は分からないわよ」

「あのなぁ」

「ま、買い物なら買い物でいいわ。けれど、いくつかミッションを設けるわ!」

「いやいや、勝手に決めるな」


 そこから、俺を置いてきぼりに色々と話し合う女性陣。

 俺は仕方が無いと小さくため息をつく。


「ま、買い物に行く参考にはなったかな」

「そうでしょう? これでもあたしは結構街にリフレッシュしにいっているしね」


 無い胸を張って、自信ありげに言う島風。

 確かに、俊和と何処へ行こうとかあまり話しあっていなかったな。

 そう言う意味では、島風達の話はためになった。

 まぁ、少女マンガでしか行かない様なファンシーショップが実在していることに驚いたけれど。


「それじゃあ、そろそろ上がりましょうか」

「そうでありますな」


 大鳳さんの言葉に全員が頷き、俺達は腕で胸を隠しながら湯船から立ち上がる。


「…………」(゜ロ゜)

「凄いでありますなぁ。おっぱいの滝」

「ええ、二人同時におっぱいの滝が見れるとは思わなかったわ」

「貴女達ねぇ」

「え、あっ……」


 湯船から上がった時、俺と大鳳さんはタオルが無いので(お湯に付けるとかありえない)、片腕で胸を隠していたのだが、胸の谷間に残ったお湯が滝の様に下へ落ちて行く様を見て、俺と大鳳さんの正面にいた涼風ちゃんは、驚きのあまりに停止している。


「上がるぞ」

「え、ええ、そうですね。あ、上がりましょうか」


 俺は流石にもうこの身体に慣れたので、冷静にそれだけを言ってその場から歩きだし、少し恥ずかしそうなに俯きながら大鳳さんも後に続いた。


「ああ、これが持っている者と持たざる者の差かぁ!」

「胸囲の格差社会でありますな!」


 ――イラッとした。何を馬鹿なこと言っているんだ、この小娘共。


「ふんっ、はっ!」

「痛っ!」

「あだっ!」


 浴場を出る前に、馬鹿なことを言っている島風とチハに入り口付近に置かれている風呂桶を二つ投げつけてから、俺は浴場を出て脱衣所へ移動した。


「まったく」

「あははは……」


 この後、自由時間になった俺は着替えながら、休日の俊和との買い物で夜店をどうするか、あれやこれや調べて悩むことになった。


誤字指摘など、ありがとうごさいます!


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