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通された部屋は雅で華やかだった

木組みの壁は幾何学模様を綺麗に描き艶やかな朱や黒の漆が施されている


「和だな」


またもや私の知らない言葉をつぶやきながらレオは荷物を置く

つかの間の二人の時間にレオは重々しく口を開いた


「お嬢わるい・・・ここじゃ俺は何の知識も持ていない」


「どういう、意味ですの?」


彼が作った物語の世界だというのなら彼の手の届かないところなんてないはずだ


「俺が作ったのは5か国までなんだ」


その言葉にキョトンと首を傾けるとレオは腰を下ろししっかりと私に向き合う


「いいか、俺が作ったのは第一作目、舞台はコンセプトの異なる5か国攻略対象は10人だった」


「タイトルは七か国ですわよね?」


私の言葉に深く頷くと彼はまた言葉をつづける


「お嬢が持ってたPSP・・・えっとあの箱だと容量が少なくてな

すぐに次の・・・新作の箱が出る予定でそっちならたくさん入るから・・・あぁもう説明が難しいな

すぐリメイクして7か国で攻略を14キャラに増やす予定だったんだよ」


「えっと・・・?」


知らない単語に困惑する私に何度かうなった後レオはまた口を開いた


「つまり、作りかけってことだ

前にレヴィリアが没キャラだって話したのを覚えてるか?

あれも残り二か国の案の一つだ、なんて名前か忘れたが・・・確か初期からずっと俺に突っかかってた女・・・まぁそれはいいとしてメンバーの一人が考案したんだ

世界観に合わないしパワーバランスが悪いから却下したんだが、そしたら魔族に対抗できる種族として獣人族って言うのを提案してきてな

コンセプト合ってないし、プレイヤーが付いてこられないから却下したんだ

そんなのが急に現れたらとっ散らかっちまってストーリーにブレが生まれるだろ?」


私が付いていけるようところどころ頷くのを確認しながら話してくれていたレオだったが最後は苛立たし気に眉間にしわを寄せた

若干分からないところも多いがまぁ、話を進めてもらった方がよさそうだ


「私たちの世界には、、、獣人も魔族もいますわよ?」


私の言葉にレオはうーんと頭を抱える

ところどころ曖昧な記憶を掘り起こしているようだ


「あぁ・・・深夜だったし、俺も熱くなって・・・何度も何度も持ってこられるその案に『お前には才能がない、邪魔になるからもう帰れ』って怒鳴って

泣きながら帰るそいつに言い過ぎたなって思いながら仕事して・・・

翌朝の始発で電車を待ってた時に後ろから誰かに押されて・・・それで・・・」


そこまで言葉を紡いだレオはハッと顔を上げる


「完成前に馬車の前に突き飛ばされて死んじまったって感じかな?」


なんだかいたたまれなくて少し視線を下げた後口を開く


「十中八九その女性の仕業ですわね」


私の言葉が意外だったのかレオは目を見開いた後フッと笑う


「まぁ、こっちの生活も悪くはないからな・・・ある意味感謝でもしてやろうかな

無茶ばかりする主人がいなくなったら暇で暇で、もとの世界じゃ物足りねぇや」


軽口をたたくレオを小突くと赤い指輪のついた手を隠すように手袋をはめてもらう


「きっと、大丈夫だわ・・・あなたと、わたくしなら」


なんの情報もないこの世界でだって戦っていけるはずだ。

そもそも、知識があったからって上手くいった試しなんかない気もするが



「そんなんで兄上に会えると思うなよ」


「なんなんですのもう!礼節だか何だか知りませんが、片腕が使い物にならないことをお忘れですの??」


向かいで偉そうに踏ん反り返るスザクを睨みつける


「それにしても君の従者は優秀だな」


「恐れ入ります」


恭しく頭を下げるレオにイラっとした


「この正座とかいう座り方・・・拷問としか思えませんわ!!」


どうやらここでの礼儀作法というのは他国とは大きく異なっており

正座とかいう足を折りたたんだ座り方をして頭を垂れなくてはいけないようだ


この座り方自体も何とも言えない苦行だが、頭を下げるのはもっと苦行だ

片手だけではバランスが取れず、重みに耐えかねて顔面から前につんのめってしまうのだ

それに何よりこの衣服

正装だからと着せられた着物という名のそれは本当に動きにくいのだ


歩行もちまちまと歩幅が限られるし

腰に巻かれたこの分厚い布が重くて苦しい


「んもう!!」


イライラと苦しい衣類を少し緩めようとするとレオが慌てて飛んでくる


「お嬢、そんなとこ引っ張ったらとんでもないことになりますよ」


手際よく首周りを緩められ、ふぅとため息をつく


「足がびりびりしますわ・・・」


足首をくるくる回しながら嘆くとレオがちょいちょいと私を呼び、座らせる


「もっと背筋を伸ばして、背筋にも負担を預けるイメージで」


ぐっと肩を引かれ後ろに絡むく体にうんと頷く


「その姿勢のまま、腰を入れて少し前側に重心を置いて、腹筋意識」


フンッとお腹に力を入れると少し体が安定した


「お尻を上に上げるようなイメージで足に乗せないで座るんだ

座ってるけど、座っていないイメージだ」


入れた腰を少し浮かすようにすると足の負担が一気に減った


「座るとき、拳一つ分足を開くともっといいかもな」


コクコクと頷くがうまく呼吸ができない

腹筋にも背中にもこんなに意識を集中させながら座らなくてはいけないなんて・・・


ぶはぁと息を吐きながら体を横に倒す


「筋トレでもしようかしら・・・」


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