平和-8
「それじゃあ次の質問です。どうしたら強くなれますか?」
「強くなれるか...か。方法は二つあるね。一つ目は時間をかけてコツコツと努力をすること。二つ目は自分に合った戦い方をすること。後でどちらが良いかためしてみるから。」
「は、はい!」
その後はシャメルやへレーナと(俺が一番入りにくい)女性ならではの話をした。女性って大変なんだなぁ...
俺は今シャメルと一緒に練習場に向かっている。練習場は1~4ブロックに分けられた巨大な練習部屋で構成されている。練習場は騎士団の本棟から少し離れたところにある。
「我々が使っていいのでしょうか...」
「良いだろ別に。へレーナからも許可もらってるし。」
練習場は許可制で俺らは2ブロック目の練習場を使うことになっている。
「さてと、早速練習場についたし早速だけどまずは質問。君の長所を教えて欲しい。」
「自分の長所ですか...?」
「そう、自分の長所。」
シャメルは少し考えた後に答えを返してきた。
「私は生まれつき特殊な目をしているんです。」
「特殊な目...?」
「はい。『魔眼』と言う能力です。この能力は眼それぞれで効果は違いますが、私は『拡大』と言う能力を持っています。」
なるほど...確かに剣を操る時点ではそんな魔眼なんて必要ないな。だが『銃』ならば十二分に生かせるだろう。更にフェアリー族は空を飛べる。通信機器さえ持たせれば『UAV』のようなこともできる。爆弾を落とせば爆撃もできる。これは戦争の常識を覆せるだろう。もしも敵の竜騎兵に遭遇したとしても撤退しながら魔眼を使いながらスナイパーライフルで敵を撃ち抜けばいい。
「シャメル、一つ提案がある。」
「はい、何でしょうか?」
こんな人材は第三騎士団には勿体無い。是非とも我々(ボッチ)のような部隊に配属されるべきだ。
「我々の遊撃隊に来ないか?君が望む強さを私は提供できる。」
「...それは本当ですか?」
「あぁ、本当だ。俺的には君がこちらの部隊に入るだけで、我が隊の戦力が数倍に膨れ上がる。」
「えぇ!そんなにですか!?」
嘘は言って無い。実際にシャメルが加われば戦術の幅はかなり広がるだろう。
「さぁ選ぶんだ。君の未来は君が決めろ。」
ここで我が隊を選んでくれれば俺はこれから毎日君を強くするための訓練を行うことが出来る。
「...分かりました。私はエイジさんの部隊に入ります!」
「...そうか。選んでくれてうれしいよ。善は急げだ、早速へレーナに頼んでみよう!」
俺はシャメル御姫様抱っこしてへレーナがいる団長室に向かう。STRが結構高いので楽々と持ち上げることが出来るな。
「ふぇぇ!?善は急げって何ですか~!?っていうか下ろしてください~!」
どうやら善は急げと言う言葉は無いらしい。まぁ異世界だもの。仕方ないよね。
俺は団長室の目の前でシャメルを降ろし、部屋の扉をノックする。
「誰だ?」
「デレスト王国騎士団 遊撃隊隊長のシラフ=エイジです。」
「入ってくれ。」
俺は言われるがままに団長室に入る。中には団長のほかにもう一人いた。見た目は委員長のような女性だ。...女性率が高くないだろうか。
「へレーナ団長にお願いしたいことあります。」
「なんだ?」
「シャメルを我が遊撃隊に移籍していただきたく参りました。」
ピリッとした空気が部屋を埋める。ここで引いたらだめだ。シャメルは我が隊の将来生命線になり得る人材だ。ここで手放すには惜しい!
「...何故シャメルなのだ。」
「はっ、シャメルはフェアリー族の為に飛行が可能です。更に魔眼の拡大能力を利用すれば我が隊に大きな戦力をもたらすと考えたためです。」
「第一騎士団や第二騎士団のトップの者はダメなのか?」
「剣や弓、魔法が得意ならば我が隊には必要ありません。我が隊に必要なのは戦争の常識を覆せるような力を持った者のみです。」
「...」
へレーナは少し考えた後に結論を出した。
「分かった。シャメルを第三騎士団から遊撃隊への移籍を許可する。」
「ありがとうございます。」
俺は団長室を後にしてシャメルと共に部隊の部屋に戻る。
「ここが明日からシャメルが来る部屋だ。」
俺はそういって扉を開ける。中には俺が午前中に整理していた本棚以外は綺麗になっている部屋が視界に飛び込んでくる。
「意外ときれいですね...」
「それじゃあ今日は遅いから解散だな。」
俺がそう言うとシャメルは「分かりました。明日からお願いします。」と言って寮の方へ向かった。
「さてと、最後の仕上げをしますか。」
俺は本棚の前に座り、本を整理し始めた。だいたい60冊前後ある。更に色々と書かなければならない書類がある。今日は徹夜しないといけないかもしれない。