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「だって、カギ掛けたッスよ?」
「従業員はスペアキーを持っています。客が寝ている間に、こっそり忍びこんで荷物をいただくのなんて簡単ですわ」
机でドアをふさいでなければ。
「でも、ここって結構いい宿ッスよね?」
「テツヤさん」
ハギは頭の残念な子に教えるみたいに、丁寧な口調で続ける。
「ここはロボトム、最底辺の町です。テツヤさんの世界や、この世界でも他の町でしたらいて当然の善良な市民は、ここには1人もいないと思ってください」
「1人もって」
テツヤがツッコんだところで、ドアがノックされる。
「朝食をお持ちしました」
早急に机を戻してドアを開けたところで、カートを押して従業員が入ってくる。パンとかサラダとかを運びながら辺りをキョロキョロ見回して、金目のものがないか物色してるようにも見える。




