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#35
建物へと近づくにつれて周りはどんどん明るく、にぎやかになってくる。
店から漏れる灯り、人のワイワイ言う声、そして熱気。
酔い潰れて路上で寝る人、自然界に存在するとは思えないエグい色の揚げ物を売る屋台、怒鳴り声、悲鳴、ガラスの割れる音、酒や腐った野菜や小便のニオイ。
「王都ってのは、ずいぶんにぎやかなとこッスね。新宿みてえッス」
すっかり感心した様子のテツヤとは真逆に、ハギの顔つきは険しくなる一方。
「いえ……、ここは王都ではありません。王都はこんな、臭くて不潔でゴミ溜めをそのまま拡張して町にしたような場所ではありません」
「そうなんスか?」
「ええ」
吐き捨てるようにハギが言う。
「ここは……、ロボトムの町です」
「ロボトム?」
「そうです。王都や他の町にいられなくなったクズどもや、そいつらを相手に商売をするクズどもが流れつく底辺中の底辺、底の町ですわ」




