準備と宣戦布告
林に覚悟があるかを問うた日の夜
義昭は、自分の部屋にある数少ない荷物を学生鞄に詰めていた。
「結局返事は聞けなかったけど、これに関してはOKを貰ったから良いかな。」
すると、珍しく義昭の部屋がノックされた。
ノックする相手は1人しかいないので、義昭は開けていいと許可を出した。
「兄さん。ゴソゴソと何してるの?」
入ってきたのは義昭の妹である日出 氷菜
物音が気になったようで、怪しい目を向けている。
部屋を見渡した氷菜の目に映ったのは、多くない荷物が通学カバンに入れられている光景だった。
「え、兄さん何してるの?」
見られてしまった義昭は、特に誤魔化す事もせず正直に話した。
「今日から少しの間、木森さんの家にお世話になるんだ。」
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同じ日の夕方、義昭と林はこんな会話をしていた。
いつも通りとなった帰り道で
「そういえば、明日とかで木森さんの家に世話になることって出来るかな?」
歩きながらそう話す義昭と、聞いた林は違う反応をしていた。
「ウチに?」
戸惑ったのかその場で、止まった林に義昭は近付き
「うん。今後の事について話したくていきなりだったからダメかな?」
身長が低く、少し高めな声の義昭に上目遣いをされ、少しドキッとした林だが冷静に返した。
「一人暮らしだから大丈夫だけど、私も女だし準備したいから明日でいい?」
良い返事が聞けたので、義昭は満足して歩き始めた。
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「て事があってね。もう時期いなくなるから安心してね。」
と話して、義昭は氷菜を部屋から追い出した。
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次の日の昼休み、義昭は屋上でベンチに座り、一三二を待っていた。
特に待ち合わせをしている訳ではない。
だけど来るだろうと義昭は思っていた。
すると重い音を響かせながら屋上の扉が開いた。
義昭は来たと思い、視線を移した。
だが、そこにいたのは
「お、お前会長に何吹き込んだ!!」
呼んでないどころか誰なのかさっぱり分からない、メガネの男子生徒だった。
状況は理解出来ないが、怒っているのは疎い義昭にも分かっていた。
ただ何に起こっているのかは一切分からなかった。
国民から完全に虐められている状態の義昭は、これ以上の悪化を防ぐために、無干渉を続けている。
そのせいか、クラスメイトの顔をあまり覚えていないのが残念だった。
「えっと、どちら様で?」
その態度が気に食わなかったのか、さらに顔を赤くさせズンズン近づいて来た。
「私は!生徒会の会計を務めている!針棚康二だ!」
義昭にとって生徒会の人間は一三二以外は知らない。
義昭から絡む事もないし、向こうも何かする訳でもないから、印象が薄いのは仕方なかった。
だけど、今はこんなのに付き合う時間はない。
「あの、僕は生徒会長を待ってるんだけど。」
目的を告げるが、気に入らなかったらしい。
「あ、お前如きが会長を軽々しく待つな!」
来た時から声の大きさが変わらない事に感心しながら、義昭はどうしたものかと思った。
悩んでいる間にも針棚 康二は口々に捲し立てる。
「大体貴様は!」
「あらー、何してるのかなー?出しゃばるなって言わなかったっけー?」
言葉を紡ぐ前にゆるさを感じさせるような話し方とは裏腹に、屋上の扉を蹴り飛ばして生徒会長の留萌 一三二が入ってきた。
すると、さっきまで大声だった会計は、萎縮してしまいボソボソと喋るようになってしまった。
そんな会計の腕を掴みながら、一三二は義昭の方を向き
「ごめんねー。ちょーっとお話ししてくるね。」
掴まれた会計が言葉にならない悲鳴を上げているので、力を込めて掴まれているようだ。
仕方ないので、このまま戻ってくるのを待つことにした。
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数分して、手をパンパンしながら一三二が戻ってきた。
少し表情は穏やかだった。
「ごめんね。前に一回お灸を据えたはずだったんだけど効いてなかったよ。」
「いえ、何かされたわけでもないので大丈夫です。」
その後は義昭の隣に座り、一三二は話し始める。
「さて、君はいつになったら私と殺りあってくれるのかな?」
どうやら待たされている事で気が立っていたようだ。
目的は一緒だったので、単刀直入に義昭は
「お待たせしてすみません。準備が出来たので正式に話そうと思って」
と言った瞬間、一三二の眼に光が宿った。
欲しいものを買ってもらった子供のように、足がパタパタと忙しなく動いている。
「やっと出来たんだね!お仲間も1人増えたみたいだし、闘ってくれるなら何人でもいいよ!」
どうやら、宇浦を味方にしたのがどこからかバレていたらしい。
義昭は立ち上がり、一三二の前に立ち
「留萌 一三二、明日の夜にこの学校で僕たちと闘え。」
普段の義昭ではしない口調で、一三二に挑んだ。
その言葉に舌なめずりをしながら、妖艶な表情のまま
「もちろん。日出 義昭、出し惜しみせずかかってこい!」
こうして、闘いの誓いは結ばれた。




