とある侍女の陰謀
まさかまさかのイルジーナ視点です。
トレニアの侍女さんです。
「聞いたか、イルジーナ!」
「マグフォス。あんたね、聞いたか、だけじゃなんのことかわかりゃしないわよ」
そう言ってやれば、目の前の男はむっとした顔をみせる。この男は対して強いわけでもないくせに、プライドだけは一丁前に高いのだった。
「魔王陛下の放った捜索隊が全滅させられたんだってよ。それもヒトの手によってな!」
その言葉を聞いて、思わず眉をひそめた。
まさか、ヒトごときにやられただなんて!
「捜索隊が出発してから2日も経っていないのに?落ちこぼればかりを集めたのかしら。あの半魔族ごときに割く人員を惜しんで?」
脳裏に浮かぶのはあの半魔族。オリベ様、だ。
たかが教育係。それも半分は下等種族の血の流れた身でありながら、女淫魔の中で最も格のあるトレニア様を差し置いて、魔王陛下のそばにいたのである。奴が城を出たと聞いて、どれだけスカッとしたことか!それなのに魔王陛下は何を血迷ったか、奴の捜索隊を放ったのだった。
「ヒトの中にも、俺たちと同等に戦える奴が稀にいる。たまたまそんなやつが近くにいたんだろう。だとしても、10人全員やられるって言うのは相当だが」
「揃いも揃って間抜けだったのね!城勤めの兵士ともあろうものが、情けない」
「蝙蝠男の面汚しであることは間違いないけどな。10人いれば、武器を持ったヒトが100人かかってきても負けないはずだ」
悔しそうな顔をして空を睨みつけるマグフォス。同じ蝙蝠男が恥を晒したのが許せないのだろう。
「間抜けがまとめていなくなってくれてせいせいするじゃないの。それよりも私はトレニア様のことで忙しいのよ」
そう、私は忙しいのだ。
昨夜、トレニア様は初潮を迎えられたのである。トレニア様は15歳、とうとうそんなお年頃だ。
これは女淫魔にとってとても大事なことだ。
なぜなら女淫魔は、初潮をきっかけに異性の魔力を体に取り入れなければならない体に変わるのである。
魔力は体液から入手する。体液ならなんでも良いので、血でも構わないのであるが、吸血鬼ではないので血はまずい。女淫魔にとって美味と感じるのは唾液やらなんやらである。
トレニア様は一途な方だ。
これを機に、魔王陛下との婚約を確実なものにしなければならない。
つまり、今更奴がのこのこ現れては困るのである。
「そうだわ、マグフォス。次捜索隊が結成されるなら、あなたそれに志願しなさいよ」
「そりゃまたなんでだ」
「決まってるじゃない。オリベ様を見つけ次第、不幸な事故に見せかけて殺してしまうためよ」
ね、できるでしょう。
そう言ってしなだれ掛かってみせると、単純なマグフォスは、顔を赤くして頷いた。
誰にも、我が主の邪魔はさせはしない。




