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魔王の元教育係ですが勇者の仲間になりました☆  作者: レーゼ
人間世界へやってきました☆
21/31

厄介予感がひしひしと

「大気より生まれし強風よ吹きしけ、煽れ。突風(ガスト)


 声とともに銀糸が踊る。

左右から同時に強い風に吹き付けられ、やや体のバランスが傾いた獲物。

 風と一体となり駆ける彼にとって、人間が身動きできなくなるような程度の風では、なんら障害にはならない。獲物の隙を逃さずに風の中へととびこんで、その急所に鋭い一撃を叩き込み、確実に息の根を止めてみせた。


 転がっている小型の魔物べジロップ2匹と、先程息絶えたボーンベア1頭の皮をすばやく剝いで、別々の袋へいれる。

べジロップの生肉は他の魔物を誘き寄せる餌になり、ボーンベアの毛皮もそこそこな値段で売れる。

本日2件目の依頼はDランクで、ボーンベア2頭分の毛皮を獲ってくることだった。


「後、一頭だね」

「うん。早く、おわらせよう」


 後処理をすませ、新たなボーンベアをおびき寄せる為のべジロップを探す。

先程のベジロップはボーンベアに頭部を踏み潰されてしまったから使えないんだよね。


 しばらく息を潜め、足音を消しながら進んでいると、茶色いものがみえた。

あの大きさ・・・間違いなく、ベジロップだ。


私は小声で睡眠(スリープ)を唱えようとした・・・が。


「誰か!助けて頂戴!!」


女の叫び声が聞こえ、その声に驚いて獲物は逃げてしまった。


「今の・・・」

「行くよ、ロウ」

「助けに?」

「ほっといたら目覚めが悪いだろう?」


 そんな会話を交わしながら、声のした方へ走る。

風の力で加速しているから、全速力の馬と同じぐらいにはなっているはずだ。

すぐに、その場へつくごとができた。


 そこには、半壊した馬車と、血を流して倒れている武装した男。

そして2頭のボーンベアと対峙する数人の男達。彼らの背後には、3人の女がいた。

ああ、すごく面倒くさいことになりそうな予感がする。


 おそらく、貴族か商人の一行だ。

商人らしき人がいないから前者だろう。

 あの3人の女性のうち、1人だけやたら動きにくそうなドレスを着ているから、あの女性がご令嬢だろう。あの男達は護衛の者で、残りの女性は侍女と思われる。

 護衛が少数だから、お忍びなのかもしれない。


とにかく、助けるのが先だ。


「ロウはここにいて。万が一フードがとれたら厄介だからね」

「でも、1人で大丈夫?」

「1人で2頭を相手取ったことはないけど、まぁ大丈夫だよ」


不安そうなロウに微笑みかける。


「もし危なかったら、加勢するからね」

「はは、そうしてくれ。くれぐれもフードがとれないようにね」

「もしとれても、耳がみえないようにすばやく殺る」




「じゃあ・・・鋭き風の刃よ、数多を切り裂いてうなれ。風裂刃(ウィンドリップ)


風の刃がボーンベアに襲い掛かると同時に、私は駆け出した。


「!?」


「誰だ!?」


男達が驚きの声をあげているのをスルーして、まずは女性のもとへ。


「あ、あなたは・・・」

「通りすがりの冒険者ですよ・・・ここは危険ですから、むこうへ。仲間があそこで待機しています」


ロウの方を指差す。

しかしだ。


「た・・・たてない・・・」

ご令嬢は腰を抜かしてしまっているらしかった。

・・・仕方ない。


「失礼します」

ご令嬢の脇と膝裏に手をいれ、すっくと抱き上げる。

いわゆる、お姫様だっこだ。


「な!何をするのです!?未婚の淑女にむやみに触れるだなんて、無礼ですわ!」

いや私、同性(おんな)なんですけどね?

私も一応、未婚の淑女なんですけれども??


 きゃあきゃあ喚いているご令嬢を、2人の侍女が必死になってなだめている。

まずいな、こんなに騒いでちゃ、ボーンベアの気をひいてしまう。

今は突如来た風の刃と、武装した男達の方に気がむいているけど・・・。


「お静かに。ボーンベアの気をひいてしまっては、隠れて逃がすことができません」


そういうと、ご令嬢は静かになる。

自分に触られるのと、ボーンベアが襲ってくるのを天秤にかけたら、そりゃ多少嫌でも前者を選ぶよね。


 3人をロウのもとへおくり届けると、戦う男達に加勢する。

男達は、急にあらわれた私に驚いていたけれど、味方であることをしりやや安堵していた様子だった。


それにしてもちょうどよかった。

ベジロップをおとりにつかって、ずっとボーンベアを待ち伏せようと思っていたところを、獲物の方からきてくれたんだから。


「援護します。絶対に、死なせませんので安心してください」












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