番外編:ロウのクリスマス
メリークリスマス!
本編をぶったぎってクリスマス番外編です。
人間界にくる前の話になっています。ロウ視点です。
「ロウ、今日はクリスマスです」
唐突にラナが、僕に言った。
「くりすます?」
「そう、クリスマスです」
首をかしげた僕に、ラナはクスリと笑った。
「イエス=キリストの誕生を祝う祭事なんです」
「いえすきりすと?誰?」
「神の子らしいです」
「どの神様の子供?」
この世界にはたくさんの神様がいるんだって、前にラナが教えてくれた。
光の女神シャイラとか、太陽の女神サンドラとか、そのほかたくさんの神様が存在しているんだって。tk、神様の子供ってことは魔族の怨敵なんじゃないかなぁ・・・。
「キリスト教では神は唯一無二と考えられているんですよ」
「そうなの?」
そんな宗教があったんだ。初めて知った。
人間界のこの大陸において一番有名な宗教は、光の女神シャイラを信仰するシャイリア教らしい。
「まぁそんなことは置いといてですね。クリスマスの前日の夜にはサンタクロースっていう真っ赤な服をきた白髭の優しそうなおじいさんが、いい子にプレゼントを贈るんですよ」
「さんたくろーす・・・プレゼントくれるの?」
「ということで」
ラナはごそごそと何かをとりだした。
それは、赤の包装で、緑のリボンで飾られた四角い箱。
「ロウはこの1年間とてもいい子でしたので、サンタの代わりに私からプレゼントです」
「ラナから、僕に・・・?」
「はい、そうです」
ラナからと言われて、すごく嬉しくなった。
緑のリボンをほどいて、きらきらした赤の包装をやぶらないように剥がした。
「これって・・・・」
中からでてきたのは、真っ白な毛糸でできた何かよくわからないものだった。
横に長くて、縦に短い。真っ白の毛糸がキレイに編みこんであって、複雑な作りになっていた。
「なに?」
みょーん、とのばして遊ぶのかな?
そう思ってのばしてみたら、ラナに大笑いされてしまった。
「そっか、この世界にはマフラーないのか・・・」
「まふらー?」
ラナは笑いながら、僕ののばしていたそのまふらーなるものを手にとった。
それで僕の首に手をのばし、まふらーなるものを首に巻きつけた。
「これはマフラーって言いまして、こうやって首に巻くものなんですよ」
「首に巻いて、どうするの?」
「え?ああ、首に巻いたらあったかいでしょう?冬にはかかせない防寒具なんですよ」
なんと。
防寒具の一種だったとは・・・。
「ロウは人狼ですから、人形態でも人より体温も高めですし寒さには耐性はあると思いますけど、やっぱり首元寒いじゃないですか。この世界、暖炉はあってもストーブも炬燵もないですしね」
「すとーぶ?こたつ?」
聞きなれない言葉だ。ラナはよく、不思議な言葉を使う。3人寄ればもんじゅの智恵、とか。もんじゅぼさつって意味らしいけど、僕にはなんのことかさっぱりわからない。
「ストーブは放熱して部屋を暖める家庭用の電気器具で、炬燵は布団と机をたしたみたいなやつです」
「へぇ・・・」
全くわからない。
「放熱とは違うの?」
「それは魔法だから誰にでもできるわけじゃないですが、ストーブは電気があれば誰でも簡単に扱えるんですよ」
「そうなんだ、すごいね?」
理解できないけど。
「このまふらーとかいうやつってラナがつくったの?」
「あ、はい、そうです。昔から家庭科は得意なんですよ、見た目と違って。あ、髪を編みこむとかそんなヤンデレなことはやってないですからね?」
また不思議な単語がでてきたなぁ・・・。
でも、ラナが僕の為に作ってくれたものなんだと思うと嬉しい。このまふらー、大事にしよう。
「クリスマスケーキも作ったんですよ」
「ケーキ・・・!」
ラナの作ったケーキはすごくおいしい。
僕は特にシフォンケーキっていうのが好きだ。
「ロウの好きなシフォンケーキですよ」
「やったー!」
ラナはニコニコと笑いながら、シフォンケーキをおいた皿を机にだしてくれる。
シフォンケーキに色々飾り付けられて、てっぺんに黄色い星のついた小さな木が乗っていた。
「この木は何?」
「クリスマスツリーです。がんばってチョコで作ってみました」
「くりすますつりー、かぁ・・・」
ラナから手作りのプレゼントをもらえて、いい子だと誉めてもらえて、シフォンケーキも食べられるなんて、くりすますってなんて素敵な日なんだろう。
「僕、くりすます好き!」
2015.2.10
前書きのところで「人間界にくる前」が「きてから」になっていたので修正しました。
人間界に来る前なのでラナがロウに敬語を使っています。
ちなみにルーキフェルには魔法書をあげました。