お約束な捨て台詞
「・・・・嘘だろ・・・!?」
「あのジャイドを、デコピン一発で・・・!?」
ざわめく観衆。ジャイドの腰巾着2人は、ギョッとした顔で倒れこんだジャイドと私をみている。
驚いているのは彼らだけではない。デコピンした張本人である私も、顔にはださないけどかなり驚いている。
まさか、デコピンで気絶するなんて誰が思う。
某七つの玉を集めると願いが叶う漫画にでてくる、敵を舌だけで倒した殺し屋でもあるまいし。
私って魔王城最弱なんて言われてるんだよ?まぁ、最弱ではないと思うんだけど。
魔力はチート並みにはあるし、技の威力は弱いけど長期戦に持ち込めば成人した高位魔族は無理でも、中位魔族になら勝てると思うんだよなぁ。攻撃力だけなら魔王城最弱って言われても仕方ないんだけど、スピードは結構自信ある。
私のことが気に入らない方々から散々逃げ惑ってたし、風属性が一番得意だからね・・・・あれ、言ってなかったっけ?
まぁ、そんなことは置いておいて。
この状況、どうしようか?
「じゃ、ジャイドの兄貴がこうもあっさり・・・」
「き、きっとアイツが何か、セコい真似をしやがったんだ!」
おやおや?
「てめぇ、なにをしやがった!?」
「何って・・・君達も見てただろう?」
ただデコピンしただけだよ?
「あんだと、てめぇ!しらばっくれてンじゃねぇよ!!」
腰巾着その1が、腰にひっさげていた盗賊がもってそうなナイフを抜いて、切りかかってくる。
やっぱり、遅い。スローモーションみたいに見える。
急所の首筋を狙ってきたところを最小限の動きで避けて、鳩尾に蹴りを叩き込む。
「ぐ、がぁっ!?」
ぶっとんで、観衆の中につっこんでいく腰巾着その1。
ぶっとんでいった方向の観衆の中に女性子供はいないことは確認済みだ。
残った腰巾着その2は顔面蒼白になっている。
かかってくるかなぁ、と思っていたら、
「てめぇ、覚えてやがれよ!!」
と、テンプレな雑魚キャラの超お約束な捨て台詞を残して、走っていってしまった。
「えー・・・・。ジャイド達、連れて帰ってくれないんだ・・・」
ひどいなぁ、それでも仲間なのか。そんなことを思っていると。
ぱちぱちぱちぱちぱち・・・
観衆達が、私にむかって拍手を始めた。え?なぜ?
「すげぇよ兄ちゃん!あのジャイド達をあっという間にのしちまいやがった!」
「見た目と違って、どえれぇ強えんだな!」
「ジャイドめ、ざまぁみやがれ!!」
周囲のおっちゃん達から賛辞の声が。って、ジャイドってやっぱり嫌われてたんだ?
「えーと、ありがとう?」
とりあえずお礼を言っておく。
あー、なんかすごいテンプレな展開だなぁ。
まぁ、目だっても大丈夫だとは思うけど。
ルー様やトレニアが私を探すことはないだろうし(むしろトレニアは邪魔者が消えたと喜ぶだろうね)、探すにしても私は冒険者として、しかも男として居るわけだし。魔王城に居た頃は、質素で動きやすいとは言え、女物の衣装を着てたし魔力も完全に隠蔽してた。まぁ、女物を着てても男に見えたんだけどさ。
・・・大丈夫、だよね?
「一瞬だったね、ラナ。かっこよかったよ・・・?」
ロウがくすりと笑って誉めてくれた。
「相手が弱すぎただけだよ」
や、本当に。
私的に言ってみたい台詞ランキングの上位だから使っただけじゃないよ?本当に弱かったんだ。
「それでも、かっこよかったよ」
「ん、ありがとう」
こうして、私とロウの愉快で退屈しない冒険者生活は、幕を開けたのだった。




