第一話 神竜〖effulgent dragon〗
「──ここ、は……?」
ヘレナはゆっくりと目を開ける。その時、彼女の瞳に映ったのは──
竜の姿だった──
何も無い、ただ黒で埋め尽くされた空間に一体の竜の姿──……
ヘレナは何度も目をこすってみるが、見えるものに変わりはない。
『──我が名は 神竜〖effulgent dragon〗──……。そなたは……ヘレナ=ルーカスか……?』
体中に響き渡るような、しかし透き通るように綺麗なその声は、目の前にいる竜のものらしかった。
「──そうよ」
──effulgent dragon……光り輝く竜……
その名の通り、その竜の姿はまばゆいばかりに光り輝く、白い翼、白い鱗、そして黄金の眼──……
それは神竜と呼ぶのに相応しい姿──
──いや……
伝説の神竜そのもの──……
神竜と名乗るその竜はヘレナを見据え、そして言った。
『……そなたを待っていた……』
「……どういう、こと……?」
『言葉の通りだ。我はそなたを待っていた──……』
「……どうして……?」
竜の言っている意味がよくわからず、ヘレナは再び問いかける。
『……我に相応しい者──
それが、そなただ──……』
ヘレナは信じられないとでも言うかのように、目を見開き瞬かせた。
『我の言っている意味がわからないようだな……』
「…………」
『それでは聞こう──
──そなたは、力がほしいか……?』
その問いに、ヘレナは少しも迷わずに答える。
「──ほしい──……」
『それはなぜだ……?』
「──皆を救いたい……
皆を守りたい……
だから──!!!」
すると竜は笑みを浮かべ──
『気に入った』
そう呟いた。
「……え?」
『そなた、我と契約せぬか?』
「契約……?」
竜はヘレナに顔を近づかせてこう言う。
『そうだ。そなたに我が力の全てをやる。
その代わり──
──そなたの命を預かる』
「私の命を……? どういうこと……?」
『我が死ねば、そなたも死ぬ。簡単に言えば、そういうことだ』
ヘレナは神竜の眼をじっと見つめた。
そしてふっと笑みを浮かべる。
「……──いいよ。契約する」
『一度契約が成立すれば、もう取り消すことはできぬ。それでもよいか……?』
「別にいい。私は──皆を救うことができるなら、守ることができるなら、それでいい」
竜は微笑み、そして白い翼を広げ空間を光で包み込む。
『我が名は神竜〖effulgent dragon〗──汝、我に命を預け、神竜の力を使い、民を救い、そして守ることを誓うか──……?』
「──誓う──……」
『──その意志の強さ、心の強さ、確かに認めた──……』
次の瞬間、光がヘレナを包み込む──……
ヘレナはあまりのまぶしさに、目をつむりそして再び気を失った──……