第一章:未来への一歩と、夕暮れの観覧車
第2期・第1章。婚約を果たし、家族としての最初の一歩を踏み出した和樹と山城先輩。
親たちが去り、再び二人きりになった部屋で、彼女はふと心の奥に隠していた「大切な人を失う恐怖」を吐露します。和樹はそんな彼女の不安を優しく包み込み、元気づけるために特別なデートへと連れ出します。初めての遊園地、お互いを選ぶコーディネート。少しずつ深まる二人の初々しい新婚生活の始まりです。
初詣から戻ると、和樹の両親は「若い二人を邪魔しちゃ悪いわね」と笑顔で帰っていった。
静まり返ったアパートの部屋。山城はソファに腰かけると、隣の和樹を見つめてぽつりと言った。
「……和樹。私といて、本当に幸せ?」
「なんだよ急に、変なこと聞くなよ」
和樹が苦笑すると、山城の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「だって……私は今まで、大切にしたいと思ったものを全部失ってきたの。だから、あなたまでどこかへ消えてしまうんじゃないかって、怖くて……」
和樹は何も言わず、彼女の細い身体を強く抱きしめた。
「どこにも行かないよ。俺はもう、あんたの旦那さんになるんだから」
彼の胸の温もりに触れ、山城はしばらく声をあげて泣いた後、ようやく安心したように涙を拭った。
「よし、気分転換に買い物に行こう」
和樹の提案に、山城は嬉しそうに頷いて私服に着替えた。
賑わうショッピングモール。山城はいくつかの服を試着してみたが、自分の大人びた体型にどんなカジュアル服が合うのか分からず、鏡の前で悩んでいた。
それを見た和樹が、ラックからいくつかの服を選び出す。
「これなんかどうだ?」
和樹が選んだのは、ライトブラウンのトラウザーに、シンプルなホワイトのトップス。そして、その上に羽織るブラウンのオーバーコートだった。
試着室から出てきた山城の姿は、彼女の洗練された美しさと柔らかい雰囲気が見事に調和していて、モデルのように完璧だった。
「……どうかしら?」
「最高に似合ってる。これにしよう」
自分のために服を選んでくれた和樹の優しさに、山城の顔に自然と笑みがこぼれた。
その後、二人は近くの遊園地へと足を延ばした。
15:00 — 入園。和樹が売店で真っ赤な風船を買って手渡すと、山城は子供のように目を輝かせて微笑んだ。「子供みたいだな」と和樹がからかうと、彼女は少し頬を膨らませた。「……だって、遊園地なんて生まれて初めてなんだもの」
16:30 — 絶叫マシンやアトラクションを巡る。怖がりながらも和樹の手を離さない山城。和樹はその無邪気な笑顔を、スマートフォンのカメラで静かに写真に収めた。
18:00 — すっかり日が落ち、イルミネーションが輝き始める。デートの締めくくりに、二人は大観覧車へと乗り込んだ。ゆっくりと上昇するゴンドラの中で、美しい夜景を見つめながら、二人は言葉にせずとも同じ未来を想っていた。
帰宅後、山城はキッチンに立ち、エプロンを締めた。
「夕飯は私が作るわ」
「いつもは俺が作ってるだろ? 無理しなくていいのに」
和樹が声をかけると、山城は振り返って和樹の頬にそっとキスをした。
「私はもう、あなたの『奥さん』だもの。これくらい当然の役目よ」
少し恥ずかしそうに、けれど誇らしげに「奥さん」と言い切った彼女は、耳まで真っ赤に染まっていた。
美味しいディナーを終えた後、和樹はそっと山城の身体を抱き上げ、寝室のベッドへと横たえた。驚く彼女の額、そして唇に優しく口づけを落とす。
「和樹……?」
少し驚き、上気した顔で彼を見上げる山城に、和樹は愛おしさを込めて微笑みかけた。
過去のトラウマを乗り越え、和樹の「妻」としての自覚と幸せを噛み締める山城先輩。遊園地でのデートを経て、二人の心の距離は完全に一つになりました。
次回、新学期が始まり、二人は学校へと戻ります。指輪をはめた山城先輩の姿に、クラスメイトやあの和泉、沙羅がどんな反応を示すのか? 周囲の目を気にせず、堂々と愛を育む二人の新たな学園生活が幕を開けます。次回もお楽しみに!




