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旅立ち

初めまして。元々pixivの方で二次創作小説を書いていたのですが、オリジナル作品も書いてみたくなって今回筆を取りました。まだまだ拙い部分はありますがお付き合いください

この世界では産まれた瞬間にその人に魔法が一つだけ付与される。その魔法とは、火属性、水属性、雷属性、土属性、氷属性の5種類だ。

魔法は、訓練しないと魔物と戦えるぐらいの使い手にはなれない

だが、大抵の人は生まれながらに、火属性なら人差し指の先に小さな炎が出たり、水属性なら手のひらの隙間から水が出せる程度など、日常生活で少し楽になる使い方しかできない。

これはそんな魔法と魔物が存在する世界を、一人の男とその仲間たちが旅をする物語だ


ふぁ……と大きなあくびをする。

お昼時だからだろうか。外は買い物客で賑わっていた。

そんな喧騒とは裏腹に、店内は静かだ。時刻は正午前。

今は両親が配達に行っており、店番をさせられている。


俺、ラルはそんなしがない両親の間に産まれ、今年17歳の年だ。そして俺には2つ歳下の弟のフォルがいる。

フォルは小さい頃から頭の回転が速いのだが、運動はあまり得意では無いらしい


会計席で肘をつき、窓の外をぼんやり眺める。

道行く人は多く、外は賑やかだ。

その時、カランカランと入口のベルが鳴った。

「いらっしゃ…ってアンかよ」

慌てて接客モードに切り替え、対応しようしたのだが、そこには馴染みのある顔が立っていた

「なによ、その露骨にイヤそうな感じ」

アンは近くに住んでる俺の1個下で俺とフォルの幼なじみ的なやつだ。小さい頃は3人でよく遊んだりもしていた

するとアンはカウンターにいる俺をじろじろ見てふーんといった表情を向けてきた

「珍しいわね、ラルが店番なんて」

「俺だって店の手伝いぐらいするわ…んで、お前は買い物か?冷やかしなら出てってもらうぞ」

カウンターに肘をつき、そこに顎を乗っけながらふんっと鼻を鳴らして聞く

「んーと、今日は注文してた品を取りに来たの。多分お母さんの名前で注文してたと思うから」

「そういうことか。ちょっと待ってろ」

ふぅ…と一息吐いてから会計台の椅子からよっこらしょっと立ち上がる。その様子を見て、アンはおじさんくさい、と笑ったが無視して注文リストを持って取り置きの品を確認する

「この前もおつかいに来たら、おじさんとおばさんが『ラルが全然手伝ってくれなくなった』って嘆いてたわよ。ラルも部屋でなんかしてるっぽいし、なにやらお忙しいみたいね」

リストの名前と袋に記載されてる名前を1つずつ確認している様子を後ろから見ていたアンが話しかけてきた

「まあちょっとやる事があるからな、こっちはこっちで忙しいんだよ」

「今度は何企んでるの?私にも教えなさいよ」

「今はまだ秘密。っと…ほらよ、ご注文の品だ」

アンの母の名前を見つけ、取り置きしておいた商品を渡す

「ふーん。分かった。商品ありがとラル」

「やけにあっさり引き下がるんだな」

いつものアンならもっと粘って聞き出そうとするのに、と拍子抜けした感じだ

「だってそういうときのアンタって絶対に折れないじゃない。アンタがおばさんの大事にしていたものを壊しちゃった時だって」

「だー!昔話はいいから早くいけって。お前話し出すと止まんねえんだから」

アンを制止しながら、商品のお会計を済ませる

「あらそう。じゃあまたね、ラル」

「おう」

店から出ていくアンの背中を見送り、完全に見えなくなったのを確認してから「はぁ…」と深いため息をついた

「アンさんも兄さんが何をしようとしてるのか気になってるみたいだね。」

「うぉっフォル!?いつからそこに!?」

完全に気が抜けていて、会計台に座っている俺の背後から声をかけられ驚いた

「アンさんが注文の品を取りに来たって言ってる辺りから」

「ほぼ最初からじゃねぇか…それならフォルも出てくれば良かったのに」

「んー、それはそれでアンさんの邪魔をしてしまう、というかなんというか…」

微妙に言い淀んだりごまかそうとしているフォルをみて不思議に思う

「は?どういうことだ?なんでフォルがいるとアンの邪魔になるんだ?」

心底分からんと言った顔でフォルを見ると、やれやれと困った顔をされた

「これはアンさんも大変だな…っと、それより兄さん、僕が店番変わるよ。やる事あるんでしょ?」

話をごまかすようにフォルが手伝いを申し出てくれた

「お、ほんとか?じゃあよろしくなフォル」

「任せて兄さん」

よく出来た弟だなと思いながら店の奥へ行き、自室へと向かった


部屋に戻ると、真っ先に地図を広げる

「…早く俺も色んな国をめぐりたい」

誰に聞かせる訳でもなく独り言が出る


この大陸は5つの国が大まかな物流などを賄っており、五芒星のような形でそれぞれの国が並んでいる

北の火・バーン王国

東の水・サラサ王国

南東の雷・エンライ王国

南西の土・ドラン王国

西の氷・セッカ王国

の5つだ。


この街は水の国、サラサ王国が最も近い場所にある

「そろそろ頃合いだな。母さん達に話そう」

その手には『カレオの伝記』と書かれた一冊の本が握られていた


その夜、話があるからといい、両親に地図と伝記を見せる

「俺、この街を出て旅に出ようと思ってるんだ。このカレオの伝記のような冒険がしたいんだ」

そう話すと両親からは、否定とも肯定とも取れない表情をしていた

「そう…出ていくのね」

少し沈黙があったが、やがて母が小さな声で答えた

もっと反対されるかと思っただけにその反応は少し意外だった

「反対しないのか?」

「だってアンタ止めても聞かないじゃないの。でもね、ラル。旅って言うのはそんに簡単なことじゃないのよ。そこはわかってるの?」

そういう母の顔は少し悲しそうだった

「本気なのか?ラル」

ラルの言葉を聞いてからずっと目を閉じてた親父が口を開く

「俺も本気だ。もちろん一筋縄じゃ行かないことだってのもよくわかってるつもりだ。親父たちから旅の過酷さは小さいころから聞いてたし」

両親はもともと各地を巡り、モンスターの討伐依頼や採取依頼などをこなして、旅をしていた。その時におふくろが俺を身籠ったのをきっかけに冒険者を引退

今は旅の経験や知識を生かして、森の中で採取などをし、それを販売して生計を立てている

両親の目をまっすぐに見つめていると、はぁ…とおふくろが小さくため息をつく

「出発はもう決めてるの?」

「あぁ、明後日ぐらいで考えてる」

許可が下りた!そんな風に考え、食い気味に返答する

「2ヶ月先にしなさい。」

前のめりで返答した俺の前におふくろがずいっと二本指を突き付ける

「なんで2ヶ月なんだよ…?明後日じゃだめなのか?」

「ダメに決まってるじゃない。アンタの実力じゃすぐにやられてくたばるに決まってるじゃない。だから2ヶ月間あんたとフォルをみっちり鍛えるわ」

「マジか…おふくろたちが鍛えてくれるならありがたいな。…でもなんでフォルも一緒なんだ?」

「アンタ一人で行かせるわけないじゃない。フォルも一緒に行ってくれた方が何百倍も安心ね。」

マジか…と思いつつ元々声はかけるつもりだったので一緒に鍛えてくれるならありがたかった

「そういうことでいいわね?フォル?」

おふくろが椅子から立ち上がりながらドアの向こうに向かって声をかける

するとギィっとドアが開き、そこにはフォルが立っていた

「もちろんだよ、母さん。僕も頑張るから兄さんについていかせてね」

決意を固めたような表情でフォルが言う

「よし、それじゃ決まりね。ラルはお父さんと剣の腕を鍛えてきなさい。フォル、アンタはアタシと魔法の特訓だ」

あらかじめ段取りでも組まれていたかのようにトントン拍子で話が進んでいき、特訓が決まった


元々幼少期から基礎は覚えさせられていて、人並みには剣を振れると思っていたので、この稽古も正直舐めていたのだが、地獄のような毎日だった。早朝から素振り、それから打ち込み稽古。日中は店の手伝い、夕方にまた素振りからの打ち込み稽古。

親父との打ち込み稽古も、まったく太刀打ちできない

気が付いたら俺が地面に倒れている

動き方などを聞いても親父は寡黙な人で説明するよりも体に覚えさせた方が早いとのことだった。そのせいで俺は親父に転がされ続け毎日体のあちこちにアザを作り、薬が絶えない日々だ。

フォルの方も大変なようで、フォルも俺と同じように、戦えるぐらいには魔法は使えるのだが、精度の向上や、魔法のバリエーションを増やすのが大変みたいだ

特訓が始まり、ちょうど一か月ぐらいでようやく回避の仕方が体に染みついてきた。元々剣が触れるだけで回避はからっきしだったので、親父はまずそこから鍛えることにしたみたいだ。

俺はどうやら勘がかなり鋭いようで、致命傷になりそうな攻撃だけは今まで避けていた

そのため気絶などしなかったせいで時間いっぱい転ばされ続けていた

そのおかげか致命傷以外の攻撃もようやく避けられるようになっていた

フォルの方も順調なようで、水属性だと多い補助魔法を色々覚えていた

最終的に俺は親父から三本先取で勝ち越せるようになり、フォルもおふくろから教えてもらった初級魔法をすべて習得していた


そんな2ヶ月を過ごし、ついに旅立ちの日だ。

「アンタたちここまでよく頑張ったね。アタシたちから教わったアンタらならそんじょぞこらのやつには負けないだろうね。これは餞別だよ、受け取りな」

俺は親父から新調したであろう剣を貰い、フォルはお袋から、柄の長い杖を貰った

「ありがとう。おふくろ、親父。俺行ってくるよ」

このままここにいると涙が出そうになりそうだったので、足早に背中を向け、歩き出す

「いってきます。母さん、父さん」

その様子を見た両親に挨拶をし、フォルが追いかけてくる

「そういえば兄さん、最初はどこに行くの?」

両親が見えなくなったタイミングでフォルが話しかけてくる

「ん?ああ、最初はエンライに行こうと思ってる。でも、その前に嵐の森を抜けなくちゃいけないからな」

サラサ王国とエンライ王国の間には『嵐の森』と呼ばれる、大きい森があり、2つの王国の国境のような役割を担っている

「そうなんだね、わかった。二人で頑張って嵐の森をぬけようね。」

気合が入ったようでふんすと聞こえてきそうな感じだった


そんな話やいろいろなことを話しながら歩いていると、町の外側までたどり着いた

「いよいよだな」

「そうだね、気を引き締めていこう」

ゴクッと生唾を飲み込みそうな緊張が二人を包む

そうして二人で町から出る

「遅かったじゃない」

その時、町のすぐそばにある木陰から聞き馴染みのある声が聞こえてきた

「は!?アンじゃねえか!こんな朝っぱらから何してんだよ?」

皆まだ寝てる時間帯なのに、なんて考えていたが、アンの恰好を見て色々察しがついた

銀でできた籠手を着けていたり、腰にはレイピアを携えていた

「…着いてくるってことか」

きっとお袋に言われたんだろうな、と思いながら額に手を当てる

「そういうことよ。安心してちょうだい、ちゃんと戦力にはなるわ」

実際アンは強い。元々アンは戦士の都であるバーン王国出身のため、一家総出で鍛錬している。

「アンさんも来てくれるなら心強いよ!ね、兄さん」

と嬉しそうなフォルを横目にはぁ…とため息をつき、諦めた

「…わかった。一緒に行こう、アン。言っとくけどいつここに帰って来るかなんてわかんないぞ」

「上等。私だってもっと強くなりたいもの。そのためにはどんなことだって乗り越えてやるわよ」

アンもそれなりの覚悟があるようだった

「…それにラルが心配だし」

俯きながらつぶやくようにいっていたのでよく聞き取れなかったのだが、いつものことなのでスルーする

「そうか。なら俺から言えることは何もないな。んじゃ、サクッと嵐の森抜けちまうか」

「最初は嵐の森なのね。ワクワクするわ」

これからどんなことが起こるか考え、楽しそうにするアン

「アンさんもいるならきっと大丈夫。サポートは任せてよ兄さん」

ニコッと笑顔を向け、嬉しそうなフォル

そんな二人を見ながら、嵐の森へ向かうのだった

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