最終話 神の鉄槌
最終話 神の鉄槌
フリップは八振りの凶兆剣の中の一振”双剣エピタフとスターレスを戦場に立つ。
「こんな数の魔獣は初めて見た フリップ、本当に大丈夫なのか? 」
シンフィールドが心配し後ろから声をかけるが、フリップにしてもこんな数の魔獣は見た事がなかった。
「教授の話では、八振りの凶兆剣の一振りで敵を殲滅した記録が古い文献に記されていたそうだ 特にこのエピタフとスターレスは多数との戦闘に向いていると教授が言っていたからな 俺は教授の言葉を信じるよ 」
フリップは両手に持った双剣を構え、以前使用した時の事を思い出す。
・・敵を殲滅する 強く意思を持て ここに居るノッコたちを必ず守るんだ ・・
フリップが意識を集中する。右手のエピタフから碑文が浮き上がり、左手のスターレスからは暗黒空間が広がっていく。その圧倒的な力は戦場全体に広がっていった。そして、その力にいち早く気付いたのはギルモアとバレットだった。
「これは? この異様な気配は? 」
「この嫌な感じは前にも感じた事があるね 」
ギルモアとバレットは、双剣エピタフとスターレスを構えて戦場に立つフリップを確認した。
「あの者は、あの時の…… いかん、ライト退くぞ バレット、メイスンに伝えろ 」
その時、イノもこの異様な気配に気が付いていた。
・・この気配はまさか…… 教授か、フリップか ・・
躊躇なく撤退したギルモアたちを追おうとせずイノは振り向く。その視線の先には八振りの凶兆剣を構えたフリップの姿があった。
・・ダメだ、フリップ その剣をもう一度使ったら確実に死ぬぞ ・・
イノは駆け戻り止めようとするが、距離がありすぎた。とても間に合いそうになかった。
「やめるんだ、フリップ!! 」
イノは走りながら叫ぶが、八振りの凶兆剣の力に怯えた魔獣たちの咆哮に邪魔され声が届かなかった。
「いくぞ、エピタフ そして、スターレス 」
フリップが剣を振り下ろそうとした瞬間、フリップに飛び付いてきた者がいた。そして、転がったフリップに更に二人が飛びかかり押さえつける。
「ダメだよ、おじちゃん それ使っちゃ 」
「ノッコ、ドーバ、ハーシ 」
最初に飛び付いたのはノッコだった。その後にドーバとハーシが飛び付きフリップを押さえつけている。
「バカ、早く放せ お前たちやみんなを守るためにはこれしかないんだ 」
「嫌だよ、おじちゃん またあの時みたいな思いはしたくないよ 」
「そうだよ おじちゃんが死んじゃったら意味がないよ 」
「僕たち、おじちゃんに心配かけないように頑張ったんだ 信じてよ 」
そこへイノが駆け付けて来た。
「良かった、フリップ それは使うな それを使うとしたら、この世界が終わる時にしておけ 」
「だけど、この現状をどうするんだ、イノ? これを打破するには、この剣が必要だ 」
「確かにな でも、もう、その剣のお陰で厄介な神将たちが退いていった こうなれば後は問題ないさ 」
イノがフリップに手を貸し立ち上がらせる。フリップはノッコたちを見て微笑んだ。
「お前たち立派になったな 」
「俺たち何時だってあの時のおじちゃんの背中忘れないで頑張ったよ おじちゃんみたいに誰かを守れるようになりたかったから 」
フリップはノッコたちの頭を嬉しそうに撫でていた。
* * *
「くるぞ、カシギ 早くここから全軍退避させろ 」
「くる? 何がくるんだ、ラプラス 」
「早くしろ、全滅するぞ 」
ラプラスの尋常ではない様子にカシギも即座に撤退の指示を飛ばす。いつの間にか「見守る者」の姿が消えていた。
「撤退? あともう一歩なのに? 」
ヘンズレーを追い詰め、その剣”レインボーデーモン”の破壊まであと一歩の所での撤退の指示にユーナは何故と疑問を抱くが、ブラックレディの二人がユーナを無理矢理連れ戻す。
「ユーナさん、カシギ様の指示ですから残念ですが退きましょう 」
三人は戦場を離脱すると、そのまま足を止めず走り続ける。そこへ1台の馬車が走って来た。
「早く乗れっ! 」
シンフィールドが馬車を止め叫ぶ。馬車の中にはイノやフリップたちが乗っていた。
「どういうこと? 」
馬車に乗り込んだユーナがイノたちに尋ねるが、イノたちにしてもカシギの指示という意外は分からなかった。
「先生、他の隊の人たちも全員撤退中だよ マゴット先生やコッコ先生もヒーロー隊のバイクに乗せてもらってる 」
馬車の横を飛びながらノッコが報告する。
「まさか、テクノポリスで何か起こったのか? 」
突然の撤退指示に、それ意外考えられないと馬車の中で全員が不安になっていた。
* * *
戦場から離れた小高い丘の上にカシギたちは立っていた。そのカシギの見つめる前で戦場の上空に銀色に輝く球体が浮遊してきた。そして、その球体から白い光線が撃ち出され地上を焼き尽くしていく。その無慈悲な攻撃は、戦場であった一帯を魔獣や木々諸とも破壊し一面を焼け野原に変えた後、消えていった。
「天雷…… トールハンマーとも呼ばれる神の鉄槌だ どうやら神を敵に回してしまったようだね 」
「神? いったいどういう事だ、ラプラス 」
振り向いたカシギの目にラプラスの姿はなかった。忽然とその姿を消していた。
・・・”ラプラスの魔” あの男の言った事には必ず意味がある 神とは一体? ・・・
カシギは、この時点から時代の流れが大きく変わっていくのを感じていた。




