八話・集結
八話 集結
ノッコの病室に、パンダが飛び込んで来た。その後からショウも血相を変えて飛び込んで来る。見舞いに来ていたミナミを始め隊員たちが何事かという顔をする。
「静かにしないと、また看護師さんに怒られるわよ 」
キャスーが注意するが、二人はそれどころではないとミナミの許に行き、ブラックレディの二人に会ったという。
「出動要請があった 」
ブラックレディから直接隊長に伝えてくれと頼まれたと言う。
「あの二人から? 珍しいな 」
ミナミが呑気に、それで何処へと尋ねる。
「ライディーンへの街道 その途中でイノさんとコッコさんが数万の魔獣と戦っているらしい 」
「なにっ 」
パンダの言葉に全員が声を上げる。
「どうして、二人が? 」
キャスーが両手で口を押さえ言う。
「教授やカイ隊長たちを助ける為に二人が残ったって聞いた 」
「数万って この前の面影村の何倍なんですか 」
ランが青ざめた顔で言う。
「無理だ…… いくら、イノさんとコッコさんでも…… たった二人で…… 」」
ミナミが椅子から立ち上がったまま俯いて呟く。
「そんな事ない 先生は絶対に諦めないからっ 」
「そうだっ 俺たちに一番大切な事を教えてくれたのが先生だっ 」
「そうですよ 僕たちもすぐ救援に向かうべきです 」
ノッコ、ドーバ、ハーシの三人が、俯くミナミに詰め寄る。
「そうだ、隊長 今度は俺たちが助ける番だっ 」
ショウとパンダも叫ぶ。そして、キャスーがミナミの手を取り走り出す。
「いくよっ みんなっ 」
病院を飛び出したミナミたちは、広場を抜け車を止めてある正門の前まで急ぎ足で進む。走りたいのを我慢しているのは、まだ、足が完治していないノッコのためだった。
「ノッコ 大丈夫? 」
多少足を引き摺りながら歩くノッコを、キャスーが気遣う。
「もう、大丈夫だよ それより急がないと 」
ノッコは自分の事より、イノとコッコの方が心配のようであった。
正門前に着くとユーナたちが揉めていた、一緒に戻ろうとしたマゴットをユーナが止めているようだった。
「いい、マゴット さっきも言ったけど教授を守って逃げられるのはあなたしか居ないの 万が一ここが攻め込まれた時に誰が教授をまもるのよ 」
「ユーナ、何か勘違いしてないか 我が一番守りたいのはユーナ、お前だ さっきと今は状況が違う ここなら王も居るし兵士たちもいる 堅牢な城塞もある 」
二人のやり取りを見ながらハーシが小声で言う。
「なんか、ラブラブですね 」
「お前だってノッコがやられた時、僕が守るって言ってたじゃん 」
ドーバがにやにやしながら言う。
「ちょっと、なに言うんですか 」
慌てるハーシをノッコが見つめる。
「そうなの、ハーシ 」
「それは…… あ、あの状況なら誰でも言いますよ 」
「うん ありがとう、ハーシ 」
ノッコにお礼を言われ、ハーシは照れながらユーナたちを見ると、どうやら二人で戻る事で合意したようだった。そして、二人で車に乗ろうとするとゴンタも飛び乗ってきた。
「ゴンタちゃん、あなたは駄目だよ 」
ユーナがゴンタを降ろそうとするが、ゴンタはシートに爪を立て降りようとしなかった。ゴンタの目に、絶対に降りないという強い気持ちが表れていた。ユーナとマゴットは顔を見合わせる。
「ゴンタちゃんも、イノが心配なんだよね 」
ユーナはゴンタの頭を優しく撫でる。マゴットがユーナを見て頷いた。そして、ゆっくりと車を発信させる。
「よし 僕たちも急ごう 」
ミナミの号令でノッコたちも車に乗りアクセルを開けた。
* * *
キャスタリア村にも一報が届く。
慌ててシンフィールドがフリップの家に行くと、なんとフリップは立ち上がっていた。そして、入って来たシンフィールドに手を挙げる。
「フリップ、お前、大丈夫なのか? 」
「ああ、たった今、直った 」
とても寝てはいられない、という表情だった。確かに快方には向かっていたが、こんなに急に立ち上がれるものなのか、シンフィールドは疑問に思ったが口には出さずにいた。
「イノさんとコッコが、ユーナたちや教授を逃がす為に数万の魔獣の中に二人で残ったらしい 」
「聞いたよ まったく、イノとコッコの奴、かっこつけやがって…… 」
「それで、テクノポリスから全軍で救援に向かうと連絡があった 」
「だが数万の魔獣だ 全軍といっても数百だろう? 桁が違う…… だから、俺も行く 」
シンフィールドは嘘だろと驚きの表情をする。
「ちょっと待て、フリップ それなら病み上がりのお前が行っても焼け石に水だろう 」
「心配するな、シンフィールド あれを持っていく 」
フリップは机の前に行くと引き出しから、二本の剣を取り出した。それは、双剣エピタフとスターレスだった。
「ふざけるな、フリップ 今度こそ死ぬぞっ 」
「いや、シンフィールド 一度死に掛けて分かった事がある 俺を信じろっ 」
シンフィールドはフリップの顔を見つめ言う。
「だったら、俺も行く お前の言うとおりなら、俺も守れるだろう 」
「まあ、いいさ それなら馬車の御者をしてくれ 少しでも体力を残しておきたいからな 」
シンフィールドは、分かったと答えると馬車を用意するため部屋を飛び出していった。一人残ったフリップは、エピタフとスターレスを腰に備えると大きく深呼吸した。
・・・俺が行くまで死ぬなよ ・・・
自分が動けない間、自分の子供の様に思っていたノッコたちの面倒をみてくれたイノとコッコには感謝しても仕切れない恩がある。シンフィールドにはああ言ったが、彼らの為なら自分はどうなろうと構わないという思いがフリップにはあった。




