第9話 冒険者ギルドへようこそ
【『冒険者ギルドへようこそ』心得より】
①レベルが低いうちは近くにいる羽の生えたフワイムを倒しましょう。
②危ないと思ったらすぐに逃げましょう。
:
:
オレンジ色の玉ねぎに羽が生えてフワフワ浮いている魔物。
──ギュルルルル
素早い突進が持ち前の『フワイム』、ドリルのような突進を絶対パリィで受け流し、
「うりゃぁぁ」
──ボヨーン。
僕の拳がヒットする。フワフワ風に揺られるように流れダメージを吸収される。武器を使えばサクッと倒せそうだが、僕の考えた最強の攻撃である青水を効率よく使うためになんとしても体術を強化したい。
この場所は人が多く青水をおいそれ使えないので絶対パリィを重点的に練習していた。
* * *
その晩、ベッドで横になって考えていた。天井にある模様も目に入らないくらいに。
「拳だけじゃ最弱モンスターも倒せないなぁ……困ったなぁ~、諦めて剣を買うしかないかなぁ」
ひょこひょこと僕の袖を引っ張る日向夏。
「σ(o^_^o)」──一生懸命自分を指差している。
「ひなつが攻撃してくれるの?」
「(゜ω゜)(。_。)ウンウン」──素早くうなずく。
「どうやって?」
取り出したのは古びた杖を2本、50センチほどの細い木棒に申し訳程度の珠がはまった杖。
「(*ノ´∀`)ノ」──両手に持って振り上げる。
「殴ってくれるの?」
「((-ω-。)(。-ω-))フルフル」──素早く首を振る。
杖の根元を持ってゆっくりと引き抜いた。カチッと音がして現れたのは刃。
「仕込み刀……ひなつは剣が使えるの?」
「(o^-^o)」──満面の笑顔。指で⊃の形を作る。
それからは順調だった。絶対パリィで受け流しひなつが斬る。素晴らしい仕込み術、鞘から抜刀しシュッシュッシュと仕事人のように素早く切りつけ撃破する。2本の仕込み刀で2刀流まで使いこなす。
さらには魔法まで──
【冒険者ギルドへようこそ】
:
⑤ある程度余裕が出てきたら、ウシガスキに挑戦しましょう。これが倒せればギルドの仕事もこなせるようになります。
:
:
2足歩行の大きな牛。動きは鈍いが突進スピードはフワイム以上、立ち並ぶ木のように初級冒険者の心を折る登竜門的魔物です。肉は食材になりますので売ることも出来ます。(冒険者ギルドへようこそ 魔物編より)
「ひなつ、突進がいったぞー」
「ΣΣ(゜Д゜;)(゜д゜lll)」──短剣で受け止めるが受けきれずに後ろに吹っ飛ぶ。
「キーック」
勢いをつけてウシガスキに飛び蹴り……硬い筋肉に跳ね飛ばされ尻もちをついた。
ウシガスキの視線が僕にロックオン、足音を響かせゆっくりと近づいてくる。怒っているのか目は吊り上がり口角も上がってねばねばした涎が地面を濡らす。
「━━ヽ(゜ω゜)ノ━━」──立ち上がるひなつ。刀をしまって魔法の杖を振り上げる。小さな石に赤いエネルギーが集まって集約してくる。僕にも分かる密度の濃い魔力。
「(/>_<)/」──思いっきり振り下ろすと杖を介して炎が生み出された。
ぽふっ……ふわ~。小さく波打つようにテニスボール大の炎がウシガスキに向かう。
「(/>_<)/」──更にもう一撃、追撃の炎がユラユラ追いかける。
炎をのっしりと避け、追撃の炎を軽く振り払うウシガスキ。何ともいえない表情。
「ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿」──アワアワ泣きそうになっている。
戦意喪失するひなつ、戦闘態勢はとっているがへっぴり腰。突進するウシガスキが彼女を襲う。僕の場所からだと間に合わない。
『青水は色を消すことも出来るのよ』──脳内に響く間延びした声。
色を消す……透明、透明、透明……そうか!
──ズシャッ
ウシガスキの胸には風穴が開いていた。「ウモ~」と気の抜けるような断末魔とともに地面を揺らした。
拳は伸び、やり切ったポーズ、ドヤ顔の僕。硬化した青水を拳から伸ばして攻撃したのだ。
イメージ作りが下手なせいか先っぽが剣山のように荒々しくて突き抜けてしまったが……かえって良かったのかもしれない。
伸ばした拳を天に突きあげる。完全に自分に酔っていたであろう。
冷静さを取り戻すと、吹き抜ける風がとても冷たく感じる。照れながらも拳をゆっくり下ろしていくと──ドギャーン、物凄い衝撃に襲われ地面に吹き飛んだ。
ん? 柔らかいぃぃぃ、ひなつ……。涙を流している。
「ひなつ、無事で良かった」
「(゜+.(◕ฺ ω◕ฺ )゜+.」──パァーと明るい表情。
「ごめんな、危ない目に合わせて」
「((-ω-。)(。-ω-))フルフル」
太陽が空の頂から温かい光を届けていた。そもそもこの世界の天体は不思議な動きをする、が、気にしたってどうすることもできない。昼食時だしそっちを優先しよう。
倒れているウシガスキ、突進で倒木した枯れ木、やることは一つしかない。
「ひなつ、もらった本にウシガスキは食べれるって書いてあったから食べてみようか。刀を借りてもいいかな」
「(゜ω゜)(。_。)」──大きくうなずく。
刀を使って肉を捌いていく。
僕の両親は事故で亡くなりとあるお金持ちに引き取られている。とは言っても、ひとりで何でも出来るようにとお金だけ出してもらってひとり暮らしをしているのだが……肉や魚の捌き方、料理やサバイバル飯なんかも義父のお抱え料理人に教えてもらった。
「捌いた肉を枝で作った串に指して……」
「o(´∇`*o)(o*´∇`)o」──ワクワクが止まらない。
「薪を集めて組み上げる」
「(゜ω゜)(。_。)」──僕の一挙手一投足を目で追っている。
「ここにひなつの魔法を打ち込んでもらっていいかな」
「ΣΣ(゜Д゜;)」──急なことに驚いたようだ。
「ここに火を点けて肉を焼くんだよ」
ひなつの炎によって薪に火が点いた。炎は薪を燃料に空気を吸って一気に大きくなる。徐々に薪は炭化すると小さくなっていく。パチパチと炭の弾ける音がBBQ感を醸し出した。
「ひっくり返して」
串に刺したウシガスキ肉を回転させてしっかり両面を焼いていく。初めての戦利品で食中毒になったらたまらない。
細い煙が空に舞い上がる。まったりとした時間を楽しむように木に寄りかかって空を見上げた。雲一つない青空、この空は日本まで繋がっているのだろうか…… (まぁ、ないだろうな)
「そろそろいいかな」
地面に刺した串を1本抜いて彼女に手渡す。香ばしい肉々しい匂いに「(ღ✪v✪)」。どうやら気に入ってくれたようだ。
「ねえひなつ」
「(o^-^o)」──満面の笑顔。
「一緒にレベルを上げて頑張ってみないか」
「(^ω^)(。_。)ウンウン」──笑顔で大きく頷く。
僕たちはまだ駆け出しかもしれない。高校で僕のように扉に飲まれた人たち、一葉もそうだ。どこかで会うことがあるかもしれない……青水、鍵。分からないことが沢山ある。いつかはひなつの故郷にも行って両親に元に帰らせてあげたい。
みるるは、ひなつは故郷の両親と離れ離れになったと思っているようです。そうかもしれないしそうでないかもしれません。正解はそのうちに出てくるでしょう。
《登場人物紹介》
・速水 三流
三流: 茶:LV1:絶対パリィ
所持金:金貨999枚 ギルドの仕事をこなす登竜門的魔物を倒した。
・日向夏
?:無:LV?:?
みるるに拾われた(助けられた)猫耳ヘアーの女の子。喋れない。




