第27話 新たな村へ
この日は強い雨が降っていた。
タカノスを出て西へ。ヨクサ村で食料を調達してそのまま隠れ里まで一気に向かう計画である。
「随分雨と風が強くなってきたね。ミミ、岩陰で少し休もうか?」
「みるるさん、スカイブの首都が北に見えますのでもうすぐヨクサです。一気に行っちゃいますね」
幌に当たる雨の音、ぬかるんだ道はに車輪を取られているのか激しく揺られている。町と町を繋ぐ道には魔法が付与され安定走行できるはずなので道を外れてしまったのだろう。
「ミミ、このまま進んでも危ないから雨風をしのげそうなところがあったら入っちゃって」
「みるるさん、村です。ヨクサ村が見えてきました」
馬車の向かう先、村の影が近づいてくる。青水を使って馬や荷車を大雨から守ってはいるが、降り注ぐ雨の粒は大きく荷車の中にも吹き込んでくる。
簡易的に建てられた柵の合間を縫って馬車は村に入った。
「ミミ、入り口の近くに宿屋があると思うんだ」
宿屋は入り口か広場近辺にあることが多いはず。ミミの隣に座って右に左に宿屋を探す。
……あるのは住居らしき建物ばかり。閉じられた窓からは僅かに光が漏れていた。
「みるる殿、目の前に大きな建物があるでござる」
巨大な倉庫と言うのだろうか、横長のアーチ状の扉が大きく開かれ、屋内からは光が伸びている。
「ミミ、とりあえずあそこに入ろう。怒られたら謝ろう」
村に入ってから揺れは収まっていた。魔法が付与された道に乗ったからであろう。しかし雨風は収まるどころか強さを増して馬車を容赦なく襲う。
「よし! みるるさん入りました」
扉を抜けると雨風はピタリと止んだ。扉が見えない壁となって雨風を遮っているのか、ガラスに水が滴っているような光景であった。
「ふぅ。とりあえずここで雨宿りさせてもらおうか」
建物は巨大な倉庫とでもいうのだろうか、たくさんのテーブルが並んでアニメで良く見る食堂を何倍も大きくしたような内装。
人影はない。雨が止むまで休ませてもらおう。異次元ポケットからパンを取り出してみんなに配った。
それにしてもこの異次元ポケットは不思議でならない。生物以外は何でも収納できる。ポケットの中では時間が経過していないようで、ベオカで買った果物類も新鮮そのもの、魔法の便利さに感心してしまう。
「みるるさんこの建物の中、温かいですねぇ」
「|(゜ω゜)(。_。)ウンウン《大きくうなずく》」
「おかげで服の渇きも早いでござる」
服を絞ると流れ出る水が激しかった雨を想起させる。暖をとりたいが流石に建物の中で火は使えない。って、「ひなつ、あんこ、服、服が透けてるよ」。慌てて異次元ポケットからタオルを取り出し3人に手渡す。
「みるるさんはまだまだですねぇ。一番最初にタオルを渡してあげないと。女性の扱いがなっていません。それじゃあモテませんよぉ」
「ミミはませてるなぁ」
「わたしたち半亜人の村は人数が少ないですからね。積極的にいかないといい相手と結ばれないんですよ。……人形は私たちのこと嫌ってますから恋愛対象になりません」
「ミミ殿は何歳でござるか」
「わたしは10歳、もう少ししたら旦那を探さないとならない年齢ですね」
「(ღ✪v✪)」
「早いでござるな。拙者たちは17歳でござるがまだまだ考えたこともないでござる」
「わたしたちの村では12歳頃から子作りを始めるんです。早くから子供を産めば多くの子を孕むことが出来るので……。個体数が少ないからこそですね」
「半亜人同士で子供を産むと、半亜人の子が生まれるでござるか?」
「ほぼ半亜人が生まれます。わたしは見たことないけど人や亜人が生まれることもあるみたいです。ってあれ、ひなつさんもあんこさんも半亜人じゃなかったでしたっけ?」
「拙者たちは一族は子供が生まれても半亜人か違うのか見た目では分からぬでござるよ。みんな背丈が低いでござるからな」
「そうなんですね。わたしはひなつさんがみるるさんを狙ってなければみるるさんとの子供が欲しいですけど」
「Σ(ОД○*)」──いざるように僕に近づき袖を掴んだ。
「やっぱりそうですよね」
あれ? なんであんこは普通に会話してるんだ。耳が聞こえないなんて思えないほど普通に話してるけど……
「あんこ、普通に話しをしているけど聞こえてるの?」
「違うでござる。みるる殿は喋るときにこつでんどうとやらで話してくれるであろう、ミミ殿はスキルを使って話してくれるでござる。ひなつ殿は元々喋れないから会話に支障がないのでござるよ」
「Σ(ОД○*)」
奥に見えるのはキッチンとカウンター、かなりの数のテーブルとイスが並び今まで見たものより一回り以上大きいサイズである。さすがに勝手に建物内を見て回るわけにはいかないので入り口付近で雨が止むのを待っていた。
* * *
「おい、おい。いつまで寝てるんだ」
「ん……んん」
ああ、いつのまにか眠ってしまったのか。ひなつたちは馬を背にしてまだ寝ている。僕を起こしたのは……。
重い瞼をこすりながら声のする方へと顔を向ける。
「おお、待たせてすまなかったな。すぐに準備をするからこっちに来てくれ。彼女たちはきちんと保護しておくからな」
数人の男たち、普通の人形だが体がでかい。2メートルは優に超えていだろう。首には『W』の文字が刻印されている。
「僕はどこに連れて──」
僕の声をかき消すほどの声量で雑談を続ける男たち、一体ヨクサ村とはどんな村なのであろう……
「今日の男は随分弱そうだな」
「見た目で油断するなよ。ユニコーン族は精鋭を送り込んでるだろうからな」
ユニコーン族? 精鋭? 一体何のことだ。
「あの、僕はいったいk──」
「気にするな、ユニコーン族の精鋭を邪険に扱ったりしないって、安心して付いてこい」
「いや、そうじゃなくてk───」
「ああ、一緒に来た仲間たちか、大丈夫だちゃんと丁重に扱っている」
「もしかして、かんちg──」
「ははは、それほど彼女たちが心配なんだな。勝っても負けても無事に返してやるから安心しろ」
何を言っても無駄かもしれない……。この男、早とちりが過ぎる。もしかしてわざとか。
大声で笑う大男。今までの話しを総合するとユニコーン族の精鋭がこの村にある何かと戦うために派遣された。もしかして僕を派遣してきたんじゃないかと思われてる? ……いや、もしかしなくてもそうだろう。
食堂を出ると村の奥の方へと連れられていく。昨日は暗闇と雨風で気付かなかったが住居が多い。1軒1軒が大きく建てられている。窓の隙間からうかがう人、「今日の相手は可愛いらしいなぁ」とヤジる者など様々。
あれ、僕と背格好が同じ女性が歩いている。僕より少し背が低いくらいだろうか……。
「あの人は……?」
「ああ、俺の名前か? ジアンだ、セーメイオンのジアンだ。折角だから君の名前も聞かせてもらっていいか」
「セーメイオン? 僕はみるるです」
「みるるか、ユニコーン族にしては変わった名前だな。もしかして助っ人に別種族にお願いしたのか。まさか今回は諦めていたりしてな、ハッハッハ」
「ちょっと人違い──」
「着いたぞ。気を引き締めろよ」
目の前にはいつもの扉。扉を前におちゃらけていたジアンの顔が引き締まった。
緊張した面持ち、扉の先には何があるのだろうか。入口は七色の光がうねるように渦巻いていた。
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《登場人物紹介》 IN タカノス
・速水 三流 所持金:金1,000:大銅2
ヨクサ?でユニコーン族と間違えられ案内されている。
・日向夏
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。
・餡子
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。
・ミミ
ハーフデミの子、馬車を牽くのが得意。意外におませさん
その他
ジアン 2メートルを越える身長。早とちりすぎる




