第25話 美波の事情(中編)
「今日はミミの訓練に行ってみないか」
ミミのレベルは2、隠れ里のレベル上げに町の北西にある天狗の森と呼ばれる場所に来ていた。この場所は結奈から初期のレベル上げにとても良いと教えられたからである。
子供に戦闘を教えている町の人たちが何人かいる程度で人は少ない。ほとんど手を加えられていないのか巨木が多く、人々が踏み倒した草が生えなくなった場所が道となっている。
この辺りで狙う魔物は『イムフラワー』。『冒険者ギルドへようこそ 魔物編』によると……
丸い核から生えているような花型の魔物。核を破壊すれば討伐は簡単だが、巻き付く弦がやっかいなので初級冒険者は注意をしましょう。この魔物を倒すした死骸は優良な肥料となるので農業を営む人が買い取ってくれる場合があります。
とのこと。あんこやひなつの武器さばきは流石、弱点を挙げるとすれば、ひなつは凄い魔力を秘めているように思えるが、出てくるのはテニスボール大。言うなればダムほどの貯水量があるのにホースから水を出している感じ。
あんこは聞こえないせいか気配を感じることが出来ない。特に背後からの攻撃には滅法弱く前方に集中していると他が全く目に入らないようだ。
「よし今だ!」
「えーい」
この世界は不思議なことに何かを経験することで、数値として蓄積されているように感じる。まさしくゲームの世界、後ろからイムフラワーを捕まえてミミに攻撃を当てさせるだけで力やスピードが上がっているように見えた。
異次元ポケットから取り出した食材で簡単にお昼を作り夕方までミミの戦闘訓練を続けた。終わってみればLV4までアップ。一人でイムフラワーを撃破できる程度にまで強くなった。
「さーて帰ろうか……ミミ、強くなったね」
「|(゜ω゜)(。_。)ウンウン《ウンウン》……(o^-^o)」
「ミミは中々筋が良いでござる。剣と盾が似合いそうでござるな」
「ありがとうございます。みなさんのおかげで強くなった実感があります。またよろしくお願いします」
和気藹々と村に戻る途中、森の奥に一人の青年を見つけた。
「 優斗……先輩?」
「|( ^o^)/*∞C<(=_=)《袖を引っ張っている》」
「ああ、なんか知り合いに似てたから……」
足早に町の方に駆けて行ったのはまさしく美波先輩の彼氏である優斗先輩。森の奥の方から来たようだけど……。追いかける間もなく消えていった。
「今日はみんなでご飯を食べようか。ミミは魔力の方はどうだい?」
「帽子を買ってくれたおかげで耳を隠さなくて良くなった分、もう少しなら大丈夫そうです」
どうやら『外観詐称』スキルは1カ所隠すだけならさほどの魔力を消費しないが、複数カ所を隠すとなるとかなりの消費量になるらしい。ミミは耳と尻尾を隠していたのが尻尾だけで良くなったので余裕が出来たようだった。
* * *
店の外にまで美味しそうな匂いが香ってくる。この匂いは美波先輩が好きな料理の匂い……美波先輩が来てるんだな。
「いらっしゃーい」
扉を開けると結奈が出迎えてくれた。擦れ違うように美波先輩が「あらみるるくん、わたしこれから仕事だからまた後でね」と走っていった。
「結奈、今日は仲間と一緒に来たよ。お勧めを4つとジュースを3つお願いします、僕はお茶で」
運ばれてきたのはプレート料理が2つと、旗が乗ったプレート料理が2つ。旗付きは、あんことミミの前に置かれた。
「ぐぬぬぬぬ……絶対に拙者のことをバカにしておるでござる」
慌てて僕の料理と交換し「ごめん、後で言っておくから抑えて抑えて」と一生懸命なだめる。
「みるるさん、この料理美味しいですね! 旗がついていてなんだかワクワクします」
「確かにこの料理は美味しいでござる。料理に免じてさっきのことは水に流すでござる」
無言で料理を食べ続ける。みんな笑顔で……これほど美味しく食べてもらえると連れてきたかいがあるってもんだ。しかしひなつだけはじっと結奈を見つめていた。
「ひなつ、結奈がどうかしたの?」
「(o゜-゜o)?」
「マスターになんかあるの?」
「|o(´^`)o ウーン《ウーン》」──声でも聞こえてきそうな表情。
ひなつのジェスチャーが始まった。……ミミがイムフラワーと戦っている……包むように大きく手を広げ……「ああ、さっきの森のことかな」
「|(゜ω゜)(。_。)ウンウン《素早く首を縦に振る》」
走っている……遠く?……町の方へ……「早く帰りたい?」
「|((-ω-。)(。-ω-))フルフル《素早く首を横に振る》」
「ああ、優斗先輩かな」
「|(゜ω゜)(。_。)ウンウン《素早く首を縦に振る》」
「優斗先輩がどうしたの?」
「(゜ω゜)σ」──指さす方にいるのは結奈
「え、結奈と優斗先輩が親子みたい?」
「|((-ω-。)(。-ω-))フルフル《素早く首を横に振る》」
「みるる殿、ひなつ殿は結奈殿と優斗先輩殿が同一人物とでもいいたいんじゃないでござるか」
「(゜ω゜)(。_。)ウンウン《素早く首を縦に振る》」
どういうことだ。結奈と優斗先輩が同一人物って……。あきらかに性別も違うし年齢も違う。たしかに優斗先輩の自宅は飲食店って聞いたことはあるけど……。
「みるる殿、大体何を考えているか分かるでござるが、常識に捉われていてはダメでござる。拙者もこれまで見てきて分かったでござる。色々なスキルがあることを知ったでござるよ」
「スキル!」
勢いよく立ち上がった。椅子は後ろに倒れ結奈の視線がこちらに向かう。勢いよく詰め寄りじっと彼女の目を見つめた。
「結奈は優斗先輩ですか!」
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《登場人物紹介》 IN タカノス
・速水 三流 所持金:金1000:大銅3
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:15 スキル:衝撃波
ミミをデミハーフの村に送り届けるのが今の使命
・日向夏
ランク:3流 ギルド:冒険者(茶)
レベル:18 スキル:猫耳髪作成
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。
・餡子
ランク:3流 ギルド:冒険者(黄)
レベル:16 スキル:武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。
・ミミ スキル:
ランク:3流 ギルド:無所属
レベル: 4 スキル:拈華微笑
ロンリとの交渉人。馬車をひくのがうまい。
タカノス
・高島美波 スキル:選別眼
女子剣道部の先輩。NO4の実力者だった。
・結奈
フリーショップでお店を営む40歳位の女性。影がある。
・木嶋 優斗
美波の彼氏。Aランクのスキルを持つが戦闘が嫌で行方不明




