14.24層の死闘
炎は辺りの草にも燃え移り、一帯は炎の海と化した。立ちこめる炎の中、うごめく影が見えた。その影の見えたあたりから砂塵が舞い上がったかと思うと四方に広がりはじめ、砂塵は翔達にも襲いかかってきた。小さな粒子が針の様に皮膚に刺さってくるため慌てて顔を覆い隠し砂嵐を回避した。顔を覆うのをやめた時、そこにあった筈の炎は完全に鎮火しており、辺りには砂で覆われた大地が広がっていた。
先程まで延々続くかと思われた苦痛から解放されたのも束の間、間髪入れず砂嵐に晒され痛々しい姿となった翔達。だが、恐怖心には完全に勝ち冷静さを取り戻していた。そしてリッチが想像以上に強大な力を持った相手である事を理解した上で自分にできる事をやれるだけやろうと、吹っ切れたのだった。
「ただの砂嵐とは思えません。注意してください!」
「流石は死霊の親玉ってところか。そっち系以外にも土属性の精霊魔法も使えんのか」
リッチを見ると顔や手のあたりは僅かだが、煤けた様に黒くなった部分が見て取れた。ただし、ダメージがあるかどうかまでは見て取れない。
「炎龍の咆哮か・・・フフフ、楽しませてくれるではないか ・・・」
ドクロの表情からは読み取れないが、声からはリッチが高揚しているのが感じ取れた。
リッチは翔達を見渡し「儂の魔法はまだ終わっていないぞ」そして指を弾いた。
辺りの砂が渦を巻き、穴に吸い込まれていく。
「流砂か!」
「ただの流砂ではないぞ! この穴は冥府へとつづく穴だ・・貴様ら全員で落ちるが良い!」
砂の穴は全てを飲み込むかのごとく砂を飲み込み始めた。3人はリッチに背を向ける事も構わず流砂と逆方法へと全力で駆け出した。幸いリッチは魔法に集中しているのか次の攻撃をする気配はなさそうだ。
「カオル空中浮遊だ! ナベを・・」
カオルは近くにいたナベの手を取り空中浮遊を唱えた。2人は空中へと逃れることができたが、
翔は砂へと吸い込まれていった。
「翔ぉぉぉぉ!」「翔さぁぁん!」
翔を吸い込むと流砂も止まったが、カオルとナベはそのまま空中で様子を伺った。
「畜生! どうすりゃ助けられんだよ・・・」
「仲間の心配よりも己が心配をしてはどうだ?」
リッチの言う通りだ。翔を助け出すどころか、目の前の状況を打破する方法すら思いつかない状況である。
「去ねと言っても聞くまいな・・・雷光の矢!」
無数の光の矢がリッチの掌に現れたかと思うと、ナベとカオルに向けて放たれた。
空中に佇んていた2人は格好の標的となる形となってしまった。
無数に打ちつける光の矢と電撃による痛みとで、遂に力つき墜落した。
「うっっ・・」
「ごめん・・」
2人とも全身に傷と火傷を負ってしまい、辛うじて意識を保っている状態だ。
「戦う気力も残っておるまい。 ここから去ね。 今宵は楽しかったぞ! もっと力をつけ再び我が前に現れる事を強く望むぞ」
「ちょっと待て! うっ・・・ 俺たちを見逃すのか?」
死を覚悟したのも束の間、リッチからは予想外の言葉に思わず確認してしまった。
「そのつもりだが? 久しぶりに強き者達との戦いに心が踊ったのでな。次は勇者と共に来る事を我は強く望む!」
「くっ・・ 」
ナベは気力を振り絞り立ち上がると、リッチに言葉を投げかけた。
「その勇者に最も近いのが、さっきお前が消した翔だ! 勇者と戦いたいのであれば、翔を返してくれ!」
「あれが?」
一瞬リッチが思考かと思うと直ぐにそれは否定された。
「あれは勇者ではない。魔術師ではないか!」
「あいつは剣術も一流だ! それ以上に魔法がのスジが良かっただけで、間違いなく勇者にもっとも近い筈だ!」
「お前達は、自分の状態すら知らないのか?」
呆れるように呟くとリッチは指にはめられた指輪をひとつ取ると、ナベに向けて放り投げた。
「その指輪を身につければ、ステータスを見ることができる。とは言え全てが見えるわけではないが、適正職業、適正階層、スキルの確認ができるようになる」
ナベは受け取った指輪をはめ,リッチを見るが何も起こらなかったが、横にいるカオルを見たときに、ステータス表示が浮かび上がった。
そこには、
ーーーーカオルーーーー
クラス:神聖教司祭
レベル:16
スキル:神聖魔法、水属性精霊魔法、占星術、調理、☆☆☆
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続いてナベは自分の手の平を見つめると・・・
ーーーーナベーーーー
クラス:魔鍛冶師
レベル:12
スキル:鍛冶(中)、付与魔法(中)、解体、採掘、鑑定(中)、鉄拳(低)
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「なるほど・・・・だが、翔は勇者ではなくても俺たちの大切な仲間だ、お前と再戦するにしても翔が居なけりゃ・・・」
「居なけりゃ勝てない・・か? お前達のレベルとあの者のレベルの違いに気づかないのか? お前達のレベルでなぜここまで来れたのか? 本来であれば、12層や16層のレベルで、この24層になぜお前達がいるのか?不思議ではないのか? あの者はこの地にくる資格があった。それ故我も彼奴に手を下した。お前達は・・・」
「相手にするまでもない! という事でしょうか?」
カオルは震える足で、立ち上がり、リッチに問いかけた。
「そういう事だ! だが将来に期待はしているぞ。我を楽しませてくれるとな! フフフフ」
「その体ではまともに動けまい。 女神像まで送ってやろう! さらばだ! 転移魔法発動」
女神像を目で確認したところで、俺は気を失ってしまった。




