13.24層は満天の星空
満天の星空が広がり遠目には森林や山が見える。今、翔達が立つ所は草原の只中。
だが此処は地下墳墓24層。本来満点の星空などある筈が無い。星と思しきものは、上階からの木漏れ日に違いない。そう頭では分かっていても星空にしか見えい・・・遥か上空に煌めく星にしか・・・。
「さすが、神様が創った世界だよな・・・地下にこんな世界を創れるなんて・・・」
「ってゆうか、無茶苦茶。数十メートル階段下りたら、星空がある地下なんて。数十メートルどころか数百・数千メートルある様に見えるぜ? 」
「まぁ・・・ゲームを元に創ったって言われてたから、細かい事は気にしない方がいいんじゃない?」
そう。翔は違和感を感じていた。これ程の世界を創れる神が、何故地球の、否、人間の争いを引き起こすためにわざわざ時間をかけて地球に悪魔を創造しようとするのか・・・この街に転送された人間は、ほぼ日本人だということも気になる。地球規模の厄災が迫って居るというのに、日本人だけというのはおかしい。他の国の人間は、別の場所に転移させられているのだろうか? こちらも今のところ確かめようが無い。俺達は人類を救うため、地下墳墓でモンスターと戦っている・・・争い事が好きな神からすると、それこそ望んだ展開なのでは無いだろうか・・・そんな想いがふと頭を過ぎった。
「翔君! 何か胸騒ぎが・・・」
カオルの声で我に返り辺りを探ると、いつのまにか異様な雰囲気に辺り一帯を支配されていた。
「おぃ! なんか鳥肌立ってきたぞ・・・ゾクゾクしてきやがった」
普段は鈍感なナベも感じる程の重圧を全員が感じ取っていた。これまで、感じたことのない圧倒的な存在感・・・。
風がひと吹きしたかと思うと靄が立ち込め、、遠くの森林や山の姿も徐々に見えなくなってしまい、いつのまにか辺りは霧で何も見えなくなってしまった。
ボコッボコッ 地面から伝わってくる音。 「うぅぅぅ・・」うめき声があちこちから聞こえてくる・・・
「この霧は何?一体何が起こってるの・・・光球!」
光の玉が放たれたが、霧で光が乱反射するだけで、辺りの様子は殆ど分からない。
「霧を払わなけれりゃダメだ! 翔!」
ナベが翔に声をかけた直後、「爆炎の壁」長大な炎の壁が翔達を周取り囲む様にそびえ立ったか思うと、辺りの霧を吹き飛ばした。と同時に、燃えさかる炎の中で蠢く無数の人影が目に入った。炎の壁が収まろうかという時、無数の人影の正体がみて取れた。
ーアンデット。ゾンビ・スケルトンといった元人間の変わり果てた異形のもの達だった。そしてそれらの更に奥には一際異様なオーラを放つ者が存在した。
一見スケルトンがローブを羽織っているだけにも見えるが、漆黒のローブは艶やかに光沢を放ち、時折見える真紅の裏地も僅かに輝いて見える。あれは間違いなくマジックアイテムであり、単なる雑魚モンスターでは無いことは明らかだ。
ローブを着たスケルトンは右手を上げると横へ払った。それに呼応するように、アンデット達は一歩さがった。
「我はロード・オブ・リッチィィィ 不死を司る者であぁぁぁる。死を怖れる者は去ね、死を怖れぬ者にはその身をもって恐怖を知れぇぇぇ!」
直後、リッチの右手にはめられた黒い指輪が輝き、黒い霧が辺り一帯に拡がった。同時に翔達は恐怖という感情に支配され、身体の自由を奪われてしまった。不意を突かれたとはいえ、敵の魔法をもろに受けたのは初めての事で、翔もパニックに陥ってしまった。
「どぉぉだ恐怖が支配した感想はぁぁぁ? 」
「聖なる加護!」「死霊・帰還!」
カオルは、立て続けに魔法を発動。一つ目の魔法陣はカオルを中心に広がり、黒い霧が薄まった様に感じる。同時に恐怖からの支配が若干弱まった。二つ目の魔法陣は、ロード・オブ・リッチを中心に広がり、アンデット達が魔法陣の中に吸い込まれていった。但し、リッチを除いて・・・。
「中々どうして・・・やるではないか! 嬉しいぞ」
骸骨の頭部がカタカタと震えている。表情からは読み取れないが、笑っている様に思えた。
リッチは右手を突き上げると、周囲のアンデット達が地中に消えていった。
「邪魔者は退場させよう・・・」
「死霊・帰還が効かないなんて・・・」
「気をつけろ! 次がくるぞ」
「地獄の業火!」」」
リッチの指先から、黒い炎が現れたかと思うと、カオルめがけて放たれた。
「煉獄の炎! 」
リッチが放った黒い炎に合わせ、真っ赤な炎を放った。元々リッチに向けて放つ予定であったが、咄嗟に合わせた格好だ。
黒と赤の炎がぶつかると炎は一瞬激しく燃え上がっかと思えば炎は収縮し消え去った。
「ほぉぉぉ。 煉獄の炎で打ち消しおったか・・・面白い。 では、これではどうだ!フィールドマジック 地獄の苦痛!」
翔を中心とした足元に広範囲な魔法陣が現れた。側にいたカオルはもちろん、少し離れてところにいたナベも逃れることはできなかった。魔法陣からは無数の黒い蔓のような物が現れたかと思うと、翔達に絡みつき、と同時に激痛が襲った。翔は太刀を一振りすると、蔓は霧のように拡散した後再び蔓にもどった。見た目は蔓だが、そこに実体はなく物理的な解決方法が無いことが分かる。
翔は全身を襲う痛みにかろうじて意識を保っていた。カオルとナベは気絶することもゆるされず、痛みに身を委ねるしかなく、その場でただのたうちまわっていた。
リッチは、終止符を打つべく魔法の詠唱に入った。今まで無詠唱で繰り出していた事をかんがえると、十中八九高位の魔法であろう。
だが、そこにこそスケイル隙がある。翔はリッチの周りに魔法陣が展開し始めた事を確認すると、リッチに向けて炎龍の咆哮を放った。炎は渦を巻きながら、辺りの蔓を巻き込みながらリッチを呑み込んだ。




