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改訂前:終わりの炎と抗う者達【凍結】  作者: しやぶ
間章 アルテミシアの過去編
9/13

2 地獄が終わった日

村に着いた頃には深夜だった


夜目が利く私は馬小屋を探し、無断で侵入して眠ろうとしたけれど、侵入した途端に馬が暴れ始めたので断念し、路地裏の固い地面で眠った


男の家に居た時も、孤児院に居た時も、寝床にはベッドがあった


それがどれ程幸福なことなのか、私は失うまで解っていなかった


起きたとき、疲れが全く消えていないどころか、足腰が痛くて動けなかった


暫くして痛みが消え、冷静に頭が働くようになり、私は気付いてしまった


心に空いた、大きな穴の存在に


ーーーー生きる目的が、何も無いことに


目的とは欲望のことだ


だが今の私には物欲も、知識欲も、三大欲求と呼ばれる食欲、睡眠欲、性欲すらも無い


いや、本当は一つ欲がある


.....................リンに会いたい


でもダメだ


他人から悪意を向けられるのは慣れている


決して気分の良いことではないが、耐えられる


でもリンに悪意を向けられたら、たぶん私は耐えられずに発狂する


会いたいという気持ちが有っても、会うのが怖いという感情が邪魔をする


だからダメだ


なら生存欲求すら無い私に残された道は一つ


............私は、死ぬことにした



路地裏を出て適当に歩いていると、ハンター用の武器屋を見つけたので、一番小さなナイフを盗んだ


従業員の一人が追いかけてきたけど、対応が遅かったから簡単に逃げ切れた


お店が盗人の警戒をほとんどしていなかったからだ


そういえば路地裏にスラムの気配が無かった


この村の治安はかなり良いらしい


でもこれから死ぬ私には関係ない


そしてナイフを自分に向けると、息は荒れ、手は震え、体温が上がって汗が噴き出す


生きる気力が無い筈なのに、これでは『死にたくない』と言っている様ではないか


それらを無視するために目を閉じ息を止め、刃を首に押し付けーーーーーー


ーーーーーー壁が刃を止める


考えてみれば当然だ


この加護は私の意思とは関係無く、私の命を護る


ーーーーしかし違和感があった


今まで加護で現れた壁と槍は、黒かった


なのにこの壁は、白い


しかも黒い槍は、軽装だったとは言え鎧を纏っていた盗賊も貫いていた


対して白い壁は、半分ナイフの刃が刺さっていた


非力な女児の私でも頑張れば壊せそうだ


私を殺そうとした相手が他人か自分かの違いだろうか?


そんなことを考えていたら、老婆に出会った


『アンタ、こんなところで何してるんだい?』


『見ない顔だねぇ......親はどこだい?』


『いない?孤児ってことかい......?じゃあアンタ、家に来な。アタシは孤児院でっ!?』


孤児院という単語が聞こえた瞬間加護が発動した


逃げなければ


コイツは敵だ


やっぱり孤児院関係の人間は皆クズだ


この加護は、命が危険に晒された時のみ発動する


つまりコイツは、意味も無く私を殺そうとした


おそらく孤児院に居る子供も似たり寄ったりだろう


前の孤児院がそうだったのだから


捕まったら地獄行きだ


しかも次の地獄にリンはいない


今度こそ本当に、回りが敵だけなってしまう


敵に囲まれて生きるくらいなら死んだ方がマシなのに、死ぬことは許されない


そんなの一日だって耐えられる気がしない


なら一生逃げてやる


そう思って足が動かなくなるまで走った


そうしたら、異常にお腹が空いた


ついさっきまで空腹感すら無かったのに


朝起きた時も動けなかったが、痛いくらいの空腹感がある分今の方が断然辛い


「そして蹲っていた私に、あなたが声を掛けた」

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