20話 見かけを信じてはいけない
あの魚の倒し方、よーく観察してたらわかったよ。
あの女の子がさ、魚を食いながら次々と仕留めてたんだよね。
軽々とポトポト落ちてくるんだよ、あの凶悪な魚がさ!
倒し方は簡単だ。
あの魚をよーく見てれば、時々水面に顔を出すんだ。
んで、空気を吸ってるらしい。
それをなんかの方法で邪魔してやればそのうち溺死……。
魚が溺死って、なんでだよ!?
いや地球にだって肺呼吸の魚とかいるけどさ……!
うん、もう気にしないでおこう。
この異世界は気にしたら負けだ……。
で、あの子は魔法か何かで魚の呼吸を妨害して、落ちてきたのを小鳥達がトドメを刺してたみたい。
うん、前の濁った川だと無理だけど、完全に透き通った空に浮くクジラ型の水の塊なら動きが丸見えで簡単だよねー!
……保存食にするつもりみたいで、俺の枝から魚の干物が実みたいになってるけどね……。
食べれない程の量を獲るのはどうかと思うぞ?
……全滅させるのはいいんだよ!
って、なに? 根っこ引っ張ってどうすんのさ?
ん? 着いてこいってか?
なんだろう? あの子が……あの子、あの子って名前ないのは面倒くさいな。
よし、エルフっぽいしエルとでも呼んでおこう。
安直だけど、誰が聞いてるわけでもないし良いだろ。
おおっと、エルが早く来いって睨んでるよ!?
幼い顔しておっかねぇな……。
さてさて、一体どこに連れて行かれるのやら?
あ、道っぽい場所に出た。
あーエルは普通に道覚えてるのか。迷いが全然ないわ……。
……もしかして俺、あの亡くなった女の人の意思を受け取り間違えたのか……?
……さすがにそれは嫌だなぁ。
お、なんか村みたいなとこに辿り着いたね。
よし、なんか予定とは違ったけど人里に送り届けるのはこれで完了かな?
あとはあの女の人の分を遺品代わりに杖にでもして渡して立ち去るかな。
俺みたいな木の化物が人の村にいて良いものでもないだろうしね。
……正直、ちょっと寂しくはあるけどもさ。
……って、あれ?
なんで村人がみんな勢揃いっぽいの?
なんでエル崇められてるの!?
なんで俺、囲まれてるの!?
そのクワはなに!?
なんでロープを握り締めてるの!?
うん、嫌な予感!
回れ右! 猛ダッシュ! 戦略的撤退!
小鳥達も急げ! って君たち、いつも早いな!?
ギャーやめろー!
風の魔法で切り刻むな!?
火の魔法で焼くな!?
水の魔法で道を崩すな!?
土の魔法で閉じ込めんな!?
アハハ、多勢に無勢だよ……。
魔法だらけで全方位から攻撃されて逃げ切れるかよ!?
あーあ、捕まってロープで縛られて引き摺られていってる最中だよ……。
俺、命の恩人だよね? なんでこんな事になってるのさ!!




