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第四刀

オーガ殲滅戦だよ、全員集合!

 オーガの襲来。その話は、村の者達に爆発的に広まり、若者達がオーガの来る場所へ、武器と呼べるのかも危うい桑や鎌を持って集った。

 が、彼等の目の前には見たことの無い服を着た、見知らぬ若者が槍と剣を携え、佇んでいた。

 誰だアレは。あんな冒険者、この村に居たか?とザワザワと会話がされるが、彼、虚空鬼式はただジッと前を見つめている。

 腰には刀、背中には槍。それを引き抜くこと無く、目を閉じ集中する。その真後ろには鬼式の肩をつかんで背中に隠れるローリー。そのラリった目と相まって凄く動揺してるように見える。実際に動揺しまくっているのだが。


「……来たか」


 鬼式は目を開き、ローリーの手を肩から外し、槍に手を添える。それと同時に、道の先からオーガ達が現れ、一気に若者達が騒がしくなる。

 だが、その瞬間、鬼式は槍を抜いた。


「我が名は鬼式。虚空鬼式。魔を滅し人里を守護する者、虚空が一人なり。妖怪変化、魑魅魍魎共よ。我が(ツルギ)の前に恐れ戦き、天へと還るがいい」


 石突を地面に叩きつけ、そして一瞬で構える。


「伊座、参るッッ!!」


―――奥義、八艘飛び!―――


 音も無く鬼式が跳ねる。超低空をジェット機の如く、たった一歩で跳ね、距離を詰める。

 だが、それをジッと見守るオーガではない。オーガ・キングの号令により、持っていた石を鬼式へ向けて投げつける。

 一つ一つが人の頭部並に大きく、硬いそれはとても一般人では反応できない速さで投げられた。

 だが、鬼式はそれを槍を回転させ、全て弾いた。それを見たオーガは第二射を投げるが、それを八艘飛びを横へと繰り出し、まるで瞬間移動したかのように移動して避ける。

 ジグザグに八艘飛びを繰り出し、攻撃を寄せ付けず八回の跳躍を行い、残す距離は一足一刀。オーガ・キングは既に鈍器のような剣を引き抜き、鬼式へ振り下ろす準備を済ませている。

 だが、鬼式はそれの上を行く速さを持っている。


―――無明槍、神速三段突きッ!!―――


 八回目の跳躍が終わり、足が地面に付いた瞬間、縮地を使い、一足一刀の間合いを一瞬で槍の間合いへと持っていく。

 そして、その手に持った槍を構え、稲妻の如く三度、オーガ・キングの額へと突き出した。

 トンッ。そう軽い足音だけが響き、空気を切り、音を超え、槍はオーガ・キングの額を抉る。

 鬼式がオーガ・キングとすれ違い、その背後へと足を下ろしたその瞬間、時間差でオーガ・キングの額からは血が吹き出し―――炸裂。


「我が槍、蜻蛉切に貫けぬ者無しッ!」


 オーガ・キングの頭部はたった三度の突きの衝撃に耐えることが出来ず、破裂。血肉を撒き散らし絶命し、その鋼の体は地面へと伏した。

 静寂が訪れる。人間側もオーガ側も、オーガ・キングが目にも止まらぬ早業で、たった一撃で殺された事が、信じられなかった。

 そして、歓声が巻き起こり、怒りの怒声が巻き起こる。


「すげぇ!!」

「たった一突きでオーガ・キングを倒しやがった!」

「しかも、目にも止まらない程の速さで走っていたぞ!!」


 後ろのガヤが五月蝿いが気にしない。槍を手の中で回し、構え、腰を落とす。そして、頭の中でオーガを倒す道筋を組み立て終わった瞬間、怒りの咆哮を上げ続けるオーガへと縮地で肉薄する。

 腹を貫き、槍を引き抜き、手の中で槍を回転させ、超高速でオーガを縦に切り裂き、血と肉に紛れ縮地で二体目のオーガへと肉薄。横へ一閃し、腹と腰の半ばから体を切断し、もう一度、回転してから槍を振り抜き、首を切断する。今度は槍を地面に差し込み、三鈷剣を抜刀。振り返り様に接近してきたオーガの腕を跳ね、返す刀で両足を跳ね、最後に残った腕を跳ねてから首を斬る。


「次は……ドイツだ?」


 鬼よりも遥かに鋭い眼光でオーガを睨めば、戦意を喪失して武器を落とす。だが、そんなの関係無い。もうオーガに対する刑は決まっている。

 死刑だ。


「逃げんなよ……殺せねぇだろ」


 平晴眼の構えを取り、縮地で肉薄。脳天を突き出した刀で抉り、抜き取ったそれを縮地をしながら振るい、もう一体の首を跳ねる。残り七体。

 その残りも我先にと逃げ出す。だが、逃げるのなら追うまで。


―――奥義、八艘飛び―――


 音も無く跳躍。すれ違う度に刀を振るい、その全てでオーガの首を刈り取っていく。回転し、飛び、逆さになり、アクロバティックに、相手の初見の動きを試み続けながら、隙の無い動きをする。

 それが数十秒。たったそれだけ続いただけで、他のオーガは全て首を無くし、斬首死体となっていた。

 まさに修羅。人の鬼である。


「……つまらん。期待してみたらこれだ。日本の鬼より遥かに弱い」


 日本の鬼なら、三段突きですら一度は耐えて見せた。なのに、オーガはたったこれだけで、十以上も片付いてしまった。期待外れもいい所だ。

 歓声を上げる村人達の方へ刀の血を振り落としながら戻り、木の影で隠れていたローリーの首根っこを持ち上げる。


「フヒッ!?」

「行くぞ。とっとと報酬貰って次の街だ」


 期待外れでしか無かったオーガには溜め息が出たが、もしかしたら次に行く街では面白い敵にでも会えるかもしれない……と、期待するしか出来ない。

 米俵を担ぐようにローリーを肩に乗せ、歓声止まぬ村の中へと彼は足を踏み入れた。

まぁ……鬼式はトンでもなく強いんで。鬼すら一人で倒せちゃうキチなんで……ww


しっかし……八艘飛び強すぎィ!!


無明槍、神速三段突き

ただ、槍で三段突きをやっただけ。刀で出来るのに槍で出来ない道理なんて無い

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