表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様蒐集帳  作者: 鈴神楽
9/13

仮設の世界の諦めない女探求者

仮設世界からの移住を企む分身

「これでどうだ!」

 その女性の言葉と共に放たれた魔法の光が空間を歪め、別の世界との道を強引に開けようとした。

 しかし、安定する前に元に戻っていくのであった。

「道は、出来た! 次は、安定させるだけ!」

 諦めた様子を見せずに研究を再開するその女性、この世界の女探求者、ヤバを見送ってからヤオンが言う。

「やっぱり上手く行かなかったか」

 傍に居た白牙が肩をすくめる。

『当然だろう。世界の壁を構築には、多くの神々がかかわっているのだ、例えお前の分身といえ、単独でどうにかなるわけないだろうが』

 ヤオンが頬を掻きながら言う。

「それは、解っているんだけどね。ところで、大地蛇ダイチジャ、ヤバは、完全に八百刃として目覚めているんだね?」

 その質問に大地から答えが返ってくる。

『間違いありせん。私は、その命令でこの世界の大地をしているのですから』

『あの馬鹿が……』

 苦虫を噛み潰した顔をする白牙。

 ヤオンが困った顔をして言う。

「問題は、そこなんだよね。この世界が大地蛇の力で維持されている仮設の世界で、この世界に住む人々を何処かの世界に移住させる必要があるけど、現在、移住に関しては、全面禁止のお達しが出てるんだよね?」

 白牙が頷く。

『そうだ。移住には、複雑な手続きが必要だ。お前が健在の時ならともかく、デビルトライアングルとの戦いも続いている今、とうてい移住を実行するのは、難しい』

「あちきが力を貸せば無理やり移住させる事は、出来ると思うんだけどな」

「駄目に決まっているでしょうが」

 その声に振り返ると、金髪のゴージャスな女性が居た。

「お久しぶり、元気してた金海波」

 それに対してホーリースクエアの一柱、大海神金海波は、溜め息をついて言う。

「元気してたじゃないわよ。大地蛇も、こんな世界維持に余計な力を使ってない。この世界の住人は、かわいそうだけど、一刻も早い八百刃の復活の為に、犠牲になってもらいましょう」

 完全に切捨てる気の金海波の言葉にヤオンが言う。

「どうにかして、助ける方法を探すくらいは、良いと思うけど」

 しかし、金海波は、即否定する。

「時間の無駄。それにもし出来るとして、この世界の住人が救えたとしましょう。ここと同じ、いやもっと悪い世界なんて山ほどあるの。それくらい解っているでしょ?」

 ヤオンもそれは、知っている。

 実際に目の前で無残に消えていった世界も見た事もある。

「それでもあちき、ヤオンは、見捨てるのを容認できないし、ヤバに至っては、絶対に諦めないと思う」

 金海波が言う。

「あたしが直接行って、説得する」

 ヤバの研究所に向かっていく金海波。

『金海波も決して暇じゃないのを、お前が躊躇するのがわかったから、悪役をやるために分身を送って来たんだぞ』

 白牙の言葉にヤオンが頷く。

「それは、解っているけどね」

 そんな時、金海波がヤバの家から弾き飛ばされてヤオンの元に戻ってきた。

「どんな説得しようとしたの?」

 ヤオンの質問に金海波が言う。

「エッチな事をして、あたしに逆らえない体に調教しようかと」

 大地蛇が本気で悩みながら言う。

『どうして、金海波様は、邪神じゃないのですか?』

 白牙が大きく溜め息を吐いて言う。

『本業は、有能で真面目なんだ』

「とにかく、あたし達としては、この世界の為にこれ以上、八百刃の復活を遅れさせるのは、認められない。いざとなったら、強制的にこの世界を維持できなくする」

 金海波の言葉にヤオンが頬を掻く。

「常識を構築する力が遮断されたら、大地蛇の力だけじゃ維持できないね」

 そこにイルカの八百刃獣の一刃、元金海波の使徒、船翼海豚センヨクイルカが現れる。

『交渉は、無事終了しました。受け入れてくれるそうです』

 それを聞いて、ヤオンが安堵の息を吐く。

「良かった。ヤバにもそれを伝えてきて」

 船翼海豚が頷き、ヤバの研究所に向かう。

「この時期に移住を受け入れる余裕がある世界なんてあるの?」

 金海波の言葉にヤオンが苦笑する。

「色々と恩を売ってありまして」



 ヤオンとヤバは、力を合わせて空間に小さな穴を開ける。

 するとその穴が自然と広がっていく。

「あれ、これって大地蛇の力が感じられるけど?」

 その様子を見ていた金海波の言葉に大地蛇が答える。

『はい。向こうには、遠い昔、私が力を授けて者の子孫が居て、こちらの世界との道を固定しています』

 それで金海波が相手の世界を察知する。

「セーイちゃんが行った世界ね。あの世界も、異界壁崩落した時には、終わりかもと言われていたのに、踏ん張ったわね」

 懐かしむその言葉にヤバが言う。

「諦めない限り、方法は、あるんだ!」

 そして、大地蛇の上に住んでいた人々の移住を終わらせて、ヤバが言う。

「ありがとう、助かった」

 ヤオンが頷き言う。

「諦めないのもいいかもしれないけど、力を合わせてやればもっと多くの事が出来るはずだよ」

 ヤバが頷き。

「解ったよ。だから一つになろう」

 こうしてヤバもヤオンと一つになる。

 そして、金海波が言う。

「貴女は、変わらないわね。ホープワールドの時も古き神々は、あの世界の人々を助ける事なんて出来ないと断言していた。それなのに見事に救ってみせた」

 それに対してヤオンは、遠い目をして言う。

「独りじゃ何も出来ません。助けてくれる多くの人が、諦めない人達が居るから可能なんですよ」

 しかし、金海波が言う。

「それでももう時間が無いのも確かよ。失われた最上級神達の穴を埋め切れていない今のままでは、多くの世界が不幸な結末を辿る事になる」

 ヤオンが頷く。

「解っています。そうならない為に頑張ります。少しでも理想に近い結末を迎える為に」

 それを聞いて金海波が笑顔で言う。

「色々言ったけど、あたしも新名も、そして蒼貫槍や天包布だって貴女を信じている。貴女だったら何とかしてくれると。だからこそ一刻も早い完全復活を望んでいるの。それだけは、忘れないでね」

 そのまま消えていく金海波。

『お前への期待は、何時も重いな』

 白牙の言葉にヤオンは、揺るがない顔で答える。

「それがあちきが選んだ道だよ」

 そしてヤオン達は、次の分身を探しに行くのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ