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最強育成計画  作者: くりーむ童話
6/6

#6

「有力な王位継承権持ちではないとは言え……王家の直系が2人。

 護衛('')はどのくらいの規模ですか?」


 その言葉に、イルマは目を細めて優しく微笑む。

 それは生徒の解答に満足する教育者のそれだ。


「お二人に万が一のことがあっては事ですからね。

 護衛('')は近衛からは団長を中心に2番隊、3番隊、それと騎士団から1騎大隊を予定しています」


"やはり、そうか"


 答えが合っていて、少しの達成感があったが、予想以上の隊規模の編成で驚いた。

 イルマはその答えに満足すると、「この件をアデーレ殿下にもお伝えしなければなりませんので」と退出していった。


 開拓村は、"開拓"と言えば聞こえがいいが、実際は難民の隔離地域だ。

 戦乱はある程度決まった場所や時期に起きているが、それでも毎年、数千人規模の難民がレウムには訪れている。

 数をしぼって受け入れているが、それでも、町や都市に難民があふれれば経済や治安に多くの影響を与えることになる。

 そのため、期間限定の税の免除と衣食住の配給を引き換えに、建前上は希望者の参加、実際は半ば強制という形で難民を辺境に送り続けているのだ。

 税の免除や耕した土地は自分のものになるため、どん底からの盛り返しを夢見て多くの難民が開拓村に赴くが、しかし、実際、開拓が行われている辺境は魔物の巣窟で毎年、数百人もの開拓民が魔物に襲われ命を落としている。

 おまけに難民は移動や移住が制限されている上、国内の防備に騎士団は割かれているため人員に余裕がなく、開拓村は自衛が基本だ。


 駄目押しは、開拓村では一部を除いて商売が出来ない。

 決まりとして禁止されているのではなく、自分達の食い扶持を稼ぐのがやっとの開拓村にはお金がなく、危険な辺境で商売を行おうとする行商も少ないため販売ルートそのものがないのだ。そのため開拓村では売り買いというものができない。


"そう、どんだけ貴重なものを手に入れても売ることはできないし、許可なく別の町に売りに行くこともできない"


 残酷だ。

 どうしようもなく残酷だと思う。


 どうにかしてあげたいと思うが、どうしたらいいのか分からない。

 これが、悪徳政治成敗!とか言える状況ならいいのだが、この政策は国内の混乱を必要最低限にするためには現状必須不可欠。それに誰も好き好んで難民に辺境開拓を強制しているのではない、必要だから行っているのだ。


 国は自国民の安全と権利を守らなければならない。

 受け入れた難民も国民だろうが、と言われるだろうが、今まで国を支え暮らしてきた国民たちのことを考えると、これがギリギリの折衷案なのだろうと思う。


 はぁ、と息を吐いて、胸の中にうずまいていた遣る瀬無さ感を外に出す。


"だからこその、『精霊の落とし子』か……"


 辺境に住む彼等にとって望外の幸運。

 詳しい決まりは分からないが、恐らく『精霊の落とし子』を儀式に使うのを了承した代価に、騎士団の兵力で魔物を掃討が約束されたのだろう。

 つまり、祭に必要なのは王子王女(俺たち)ではなく騎士団、そのため、王や王位継承権持ちの重役クラスではなく、俺とアデーレと言う現状いてもいなくてもいい人間にお鉢が回ってきたのだ。

 辺境の開拓村はルシナだけではない、ルシナで騎士団が大規模の魔物掃討を行えば他の開拓村も黙っていないだろう。しかし、騎士団を動かすのも無料(タダ)ではない、全ての辺境をカバーするのは現実問題として無理だ。

 そのため王子王女の祭への同行という形で対外説明するつもりなのだろう。

 それに、『精霊の落とし子』を使い、辺境の食糧事情が改善すれば双方に莫大なメリットがある。


 状況を整理し、これからすべきことを考える。


"とりあえず、祭でするべきことは多くない。

 適当に飲んで食べて、感謝の言葉を送ればいいだろう。

 政に俺が関わるにはまだ少し早すぎる、ここで迂闊な動きをして警戒されたり悪印象もたれるのは避けたいし……"


 問題は祭以外の部分にある。

 城から……と言うより王都から出るのは年に1,2回あるかどうかのチャンスだ。

 できれば、外の世界を回ってる最中にスキルの習熟や習得をしておきたいし、商人連中とコネクションも結んでおきたい。

 今回は精鋭騎士に魔物と戦う可能性も大きいし、出来れば騎士の戦いをどこか特等席で見ていたいが……難しいか、と思う。

 それと同時に考えが不謹慎な方向に向かっていたのに気づいて、かぶりを振る。


"はぁ、いかんな、実際に経験していないからとは言え、戦いを望むなんて。

 どうやら、異世界まで来てもホネの髄まで日本人の平和ボケは染み付いているようだな"


 戦いを知らないからこそ戦いをどこかゲームの一場面のように考えてた思考に修正を入れる。

 同時にやはり自分は日本人なんだな、思い少し安心する。


「さて、どうなることやら」


 かすれた様に呟いた言葉は、誰もいない部屋にやけに響いた。


○●◎○●◎○●◎○●◎○●◎○●◎○●◎


 七日後。


 イルマから俺たちに説明があった次の日に、王から正式にルシナの開拓村の精霊祭に出席するように下命が下った。

 それから準備をして今は王城を出立して4日目の昼下がり、行程的には目的地まで6分目あたりだ。

 王城から目的地のルシナまでは単純な距離なら5日も掛からない距離なのだが、道中に存在する魔物たちの縄張りを騎士団の行軍で刺激しないために、敢えて時間がかかるがしっかりした造りの街道を使用している。

 そのため通常の旅路より1日2日ほど余分に時間がかかっている。

 魔物は縄張り意識が強いため、基本的にこちらから刺激しない限り縄張りから出て襲い掛かってくることはない。

 例外があるとすれば、生存競争に負けて縄張りを追い出されたか災害などで縄張りが住めなくなった魔物くらいだ。

 縄張りから何らかの理由で出てきた魔物を『はぐれ魔物』と言い、現れた場合は最優先の殲滅対象になる。

 放っておくと人里近くで繁殖したり、周囲の魔物の縄張りを荒らして魔物を被害を続出させる可能性があるからだ。


 また、魔物もただ殲滅すればいいと言うものではない。

 魔物を倒す場合は周囲の縄張りを確認して、出来る限り荒らさずに殲滅しなければはぐれ魔物の連鎖を生み出しかねない。

 そのため行軍の際は出来る限り、魔物との遭遇を避けるルートを取るのだ。


 現在、馬車に揺られて三刻半。

 ここまで何事もなく来れたが、流石に退屈すぎる。

 ちなみに、馬車は一頭立てのものだが「イシュケ」と呼ばれる人に慣らした馬の魔物で引いているためかなり大きい。

 最初の方こそ物珍しさから窓に張り付きお付きの少女、フィーネと大騒ぎしていたアデーレも、3日目当たりからは馬車内ではほとんど寝ている。

 ロランは御者台に座ったまま身動きなしの置物と化している。

 イルマとフィーネも本を読んだり、何かを紙に書いていたりとそれぞれ思い思いに暇をつぶしている。

 俺も持ってきた本はあらかた読んでしまったため、今は本の内容を紙にまとめる作業をダラダラと行っている。

 皆、口こそ出さないが後3日もこの状態が続くと思うと滅入っている。

 はぁ、と心の中で何回目かも忘れたため息をつく。


 このまま何事もなく、退屈なまま後三日続くのかーと思っていた、そう、その時までは。



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