第二十一話:余興
「ガッハッハあああぁ!!!いけええぇぇ!!ディストスううぅぅ!!!
全身紫色のこの世の物とは思えない生命が動き出す。一歩一歩迫って来ると、辺りの気配が動く様なんて生温い物ではなく、空間が歪む様であった
「っ……なんなのだ、この異様なオーラは」
そのままディストスは数歩進んだ所で歩みを止めた
「む、何を……」
そして、近くにあった木を一本、片手で引き抜く。10mはあるであろうそれを片手で
「は?」
さらにそれを我めがけて放り投げた。ジャベリンの様に
「なっ……!?」
「いいぞおおぉぉ!!ディストスううぅぅ!!」
弧を描いて木は飛んで来る、このままでは打撲、出血多量……いや、圧死が先か
「ふん、拒否っ!!」
木は我の寸前で停止する、攻撃の不命中に驚く事なくディストスは次の木を抜いた
(どうする、逃げるか?見せかけではないあの剛腕、もし接近して殴られれでもしたら……それに、奥にいる豪錬 武勝も同時に襲い掛かって来たら?流石に我であっても勝ち目はない)
思考の間に次の木が投げられていた、拒否は同時に一つまでしか発動できぬ、早急な判断を迫られていた
「……最後まで食らいつく牙、であるか」
答えは最初から出ていた、我は空中に停止した木に飛び乗る。そして枝を折り、採取しながら駆け上がって行く
後方で大きな衝突音が鳴り響く。先程からずっと豪錬 武勝の声を聞いてる身からすると大して気にならぬが
「っ……なぜ我のデュークは我自身に使えぬのだ……!」
苦言を漏らしながらも採取した木の枝をなんとか人の形にする、そこに我の服を被せたらおとりの完成である
「しかし、抑えてないと崩れるな……やむを得ん」
「なんだああぁぁ!?降りて来ないのかああぁぁ!?」
「焦らずとも、今降りてやろう!」
木にかけた拒否を解除しながら飛び出す、そしておとりを放り投げた。崩れる事を拒否したおとりを
「な、なああぁにいいぃ!?二人になったぞおおぉぉ!!??」
(人工太陽を逆光にしているとはいえ、そこまで分からぬものか)
そして先に落ちて行ったおとりをディストスが殴りつける。あの剛腕であれど、崩れる事を拒否された木枝の塊は砕けぬらしい
「ならあぁ!こっちが本物だああぁぁ!!!」
豪錬 武勝が我の落下地点を予測し、拳を構えて待っている
「貴様、我を殴ろうとしているのか?」
「そうだああぁぁ!覚悟しろおおぉぉ!!」
「よかろう、許可してやる」
その瞬間、超高速で豪錬 武勝の拳が突き出される。突然のことに何が起きてるか分かってない様だ
「な、何がああぁぐほああぁぁ!?!?」
そして無防備になったところに踵落としを決めながら我は着地した。横を見ると、壊せないことが余程悔しかったのか、ディストスがおとりを殴り続けてる
あまり殴り過ぎると、もう一つ強い武力を顕現されかねないと思い距離を取る
(やはり、あの化け物……知性は低い。そこに、いや、そこにしか勝機はないか)
「ぬおおぉい!ディストスううぅ!!いつまでそんな人形殴ってるんだああぁ!!」
ディストスは何度目かの拳をおとりに叩きつけていた。砕けぬ事への苛立ちか、徐々に拳の速度が増していく
そして切れ散らかしたディストスはおとりを投げ捨てた、この時を待っていたのだ
「返してもらうぞ」
「ぬああぁ!?」
おとりをキャッチし、服を剝ぎ取る。そしておとりを再度二人に向かって投げつけた
「ディストスううぅ!!もうそんな物に構うんじゃなああぁい!!」
「嫌でも構ってもらうぞ」
ある程度飛んで行ったところで拒否を解除する。あのおとりは崩れる事を拒否する事で成り立っていた、解除された今、あのおとりは
「ぬわあああっ!!木くずが大量にいいぃぃ!!」
「目くらましとなる」
ディストスも怯んでいる、あんな怪物でも目に異物が入るのは頂けないのであろうか
「ぐううぅぅ!!クソっ!!どこに……」
「ここである」
二人が怯んだ隙に間に潜り込むと、ディストスの目が一つ、かち合った
ディストスは勢い良く腕を振るう、我の体重と同等はあろう大きさの拳が迫って来た
「拒否」
ディストスの拳は停止した。こちらも突然のことに何が起きてるか分かってない様で、むやみやたらに腕を振ろうとして失敗している
「ぐっ……そこかあああぁ!!」
「素人が」
真後ろから飛んできた豪錬 武勝の腕をそのまま引っ張り、バランスを崩させる
「ぬわあああっ!?」
「拒否」
転倒するのを拒否された豪錬 武勝は間抜けな姿勢で停止する。そして同時に解除されたディストスの拒否、むやみやたらに振っていた腕はちゃんと真っ直ぐ繰り出され──
「ひぐふおおおおぉぉ!!!???」
「ジャストミートである」
剛腕に殴り飛ばされた豪錬 武勝の体が勢い良く吹き飛ばされ、瞬く間に姿を消した
『豪錬 武勝 気絶確認、王城 覇道にポイントが加算されます』
アナウンスが流れ、飛んで行った方向を見る
「ふむ、流石にあの肉体でも耐えれなかったか……いや、死なないだけおかしいか、さて」
振り返ると、ディストスはまだそこにいた。見たところやる気に満ちあふれている
「主が倒れて尚、戦うことを止めぬか」
「まぁ、その主を倒したのは貴様自身であるがな」
こっちも拳を構え直す。気絶しても消えないなら、我が戦って討伐するしかないのであろうか
……改めて対峙すると迫力が凄まじい。だが、戦闘と利用を挟んだ後だからであろうか、先程まであった絶望感は薄れつつあった
「来い、貴様が何であれ我が引導を渡してやろう」
ディストスが大きく腕を振り上げる、第二ラウンドの開幕だ
第二十一話 完




