太刀持ち供
投稿日を誤って今日に設定していました。すみません
野立を担いだ男が二人を庇う様に立つ笹竜胆泉岳斎國綱の横に立っていた。隻腕となったばかりだろう彼は振り返って二人に野生味のある荒々しい笑顔を向けて。
「このザマだ。手荒で悪いが勘弁してくれよ。ハッハッハ」
六鱗大尉がウンガイキョウから目を離す事なく。
「助かりました閣下、星形准将」
笹竜胆泉岳斎國綱は刀を握り。
「いや大尉。遅くなった。待たせたのう」
隕石の直撃を受け全身罅割れたウンガイキョウを見据え。
「さて」
刀を前に。
「象神結祭逸機闘専」
ウンガイキョウが砕け散った。遅れて落雷の様な音。バチバチと放電する刀を持った笹竜胆泉岳斎國綱だけが立っている。
だが、構えは解かない。破片がカタカタと揺れ始める。それは嘲笑うかの様。砕け散った水晶片が空中に集まっていく。その丸い球体から白煙。
「ミ°イイイイイイイイイイイイイイ!!!」
晴れゆく煙の中から奇声。水晶の掌の先に空間を歪ませたウンガイキョウ。即座に元帥へ襲いかかる。
そこからは死闘。元帥の猛攻、ウンガイキョウの不死とも思える再生力と一撃一撃が必殺の攻撃。空から降ってきた巨獣が加勢し、折敷中将の攻撃が加わり、世成達も加わって寄ってたかって代わる代わるに攻撃を繰り返す。それに三台の01式八〇糎列車加農砲をはじめとする砲兵が降らせた砲弾の雨まで加える。
射線上の全てを消す攻撃。光線をウンガイキョウが放つ暇を奪う程の猛攻。人間の様な打撃攻撃まで加え始める。
そして誰かの首が飛び、四肢が消え、光線に飲み込まれ、一人また一人と消た。それは未だマシな光景。人いところは一部隊が跡形もなく消えていく。
現状は入り乱れ誰がどうなっているかも既に曖昧。世成は自分が生きていて攻撃が来るから避け、ウンガイキョウが目の前にいるから刀を振った。だからダメだったのだろう。
「あ」
それは一瞬の気の緩み。ズルっと誰かの技で濡れていた地面が靴を滑らせた。明確な隙にウンガイキョウの足が落ちて来る。
「がッ……!!」
跳ねる。幾度も跳ねる。何度も叩きつけられても勢いが衰えず。
「っガア……!!!」
幾度も衝撃を受け上も下も分からぬまま唐突に体が受け止められた。それは当然だが人では無くビルの壁。
顔を上げればどれ程に飛ばされたか貫してトンネルの様に開くビル。しかしその光景は微動だに出来ないと言うのに変わった。球体状に歪んだ空間へと。
ウンガイキョウの腕の先、渦が捻じ曲がる球体迫る。その腕が伸びてきて、その腕に刀が突き刺さった。
「立て!! 逃げろ飛鶴!!」
笹竜胆黎明の声に体を動かす。何とか距離を取ってウンガイキョウを見れば、誰かの攻撃を受け止めて消えた。それは視認出来なかったが元帥の攻撃である。
世成は笹竜胆黎明に引き摺られて下げられた。
「黎明……わりぃけど。俺の腰の般若水、かけてくれ。大した傷じゃねぇが頭かデコが切れて血が邪魔だ」
「わかった。血みどろで吃驚したぞ」
「場所がアレだが……ハァ、傷は浅ぇよ」
「それは良かった」
バチャとかけられ傷が塞がっていく感覚。それが終われば地を拭い立ち上がろうとしてよろけた。笹竜胆黎明に支えられる。
「おい飛鶴。無理するな。すこし休め」
「いや、俺アレ。小隊長。無理」
そう言って無理に足を前に出して倒れた。
轟音。目が覚める。ハッと飛び起き。
「軍曹!! すまん!! 状況は!!」
「御無事でしたか!! 良かった……撤退中です小隊長。天下五剣の内、御二方が負傷しました。現在は元帥が御一人で足止めをしています」
「戦闘中に気を失うなんて……すまん」
「いえ。笹竜胆准尉が状況を伝えてくださいました。なるほど……」
周りを見る。トラックの荷台だ。怪我人や疲労困憊の兵達が周りにいる。
「衛戍府で合流しよう」
「は!」
「……小隊の損害は?」
「五名死亡、七名が重症、後は軽傷です」
世成は押し潰されそうになった。だがそれを堪えて。
「分かった……報告、感謝する」
通信機から手を離し大きく息を吐く。荷台から空を見上げて気付いた。
「頭伏せろ!!!!! 凛宇創世!!!!!!!!」
飛び降りて解放すれば空からカッと光。世成は円内の移動ではなく壁を作る方を選んだ。味方の兵が多過ぎて円内であっても入れ替えが不可能だった。
水晶レンズの様な壁を生み出し光を受け止める。全てを白く塗りつぶす様なそれは周囲に拡散して消えた。だが光の奔流が消えた所にはウンガイキョウ。
全身がひび割れ腕は三本で足は一本だが目の前に。世成は計らずも元帥から逃げるウンガイキョウの前に立っていた。だからやるしか無かった。
「凛宇……創世……」
ウンガイキョウへ全力で雷を叩き落とした。ピシ、とウンガイキョウから音。頭の様で鏡の様な腹部からヒビ割れ砕けていく。その鏡の中心が黒く染まった。そして世成へと三本の腕が伸びて捕まる。
黒に吸い込まれていく。更に黒に向かって吸引される。重力の位置が変わったかの様。
実物など見た事はないがブラックホール。そう言う印象を受けて。
「凛宇創世……!!!」
振り絞ってもう一度。黒に飲み込まれた。飲み込まれた先は宇宙だった。
「いや、宇宙っぽいだけ……? 何だこれ」
自身を覆う様に死なない為だけの結界を張って周りを見る。観察していると周囲には白い渦が幾つも現れた。その中心の渦の隙間から何かを吸い込み始め。
「これか……? 俺がこうなったら理由」
何故か解放が終わらない。それを幸いとして白い渦に近寄ろうとするが不可能だった。不可視の何かを激流の様に放出する白い渦に近づけない。そしてその白い渦から変な壺の様な物が吸い込まれて目の前に。
その瞬間である。身体が弾け飛ばされた。後日に周辺探索が行われ、ウンガイキョウの撃破地点から凡そ57キロメートル南南西、崩壊した瓦礫の上にて気絶した世成は発見される。
半年後。カフェー・オッティモ。
「んじゃあ頂こうぜ」
いつものメンバー討蛛三期生で集まり世成がコーラを片手に音頭を取る。被害の大きさは尋常では無かったが時間と後処理で乗り越えた皆が続いた。いつまでもクヨクヨしている暇はないと世成の持ち出しで集まったのだ。
何時もよりは落ち着いた。しかし暗くはない程度。宴もたけなわとなり、ふと世成は横に座る青海波乙姫を見て。
「青海波さん」
世成は郷愁を捨てて淡々と語った。ウンガイキョウを倒して悟ったのだ。元の世界には帰れないと。だから責任を取るべき事がある。また淡々コーラを一口。
「良かったら結婚しねぇ?」
小乃字小三治が鼻からサイダー吹き出して悶絶し、三階菱三蔵がワクワクし始めて、笹竜胆黎明がやっとかと言わんばかりの呆れ顔になる。
女性陣が黄色い悲鳴をあげた。二十を越えたら男女問わずに親にせっつかれる世界だ。世成は青海波乙姫の好意を察していたしスゲェ好みで良い子だと思っていた。
一方で青海波乙姫の方はと言うと命の恩人であり文字通り一目惚れ。人柄も普通に好ましい相手だった故に赤く染まった顔を隠す様に、だが確実に確りと頷く。
「て、事で。俺ら結婚します」
全員が歓声を上げて祝いの乾杯。そして笹竜胆黎明がニヤニヤと。それはもう極めて珍しい顔で。
「飛鶴、顔が赤いぞ」
「しゃーねーだろ」
マスターがカウンターから出て来る。
「これは盛大に祝わないといけませんね」
宴席は第二幕へと移行した。飛鶴世成は二男一女に恵まれ八十七歳で老衰。最終階級は剣衛大将、天下五剣となる。
◆◆完結◆◆
此処まで御覧頂き有難う御座います。
おかげさまで完結まで書けました。
暇つぶしにでもなれてれば幸いです。




