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閉じた世界の機甲兵  作者: ライザ
第二章 崩れる自己
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無意識


 敵機を補足。ガトリングを放ち、ボディに直撃させる。

 こちらに気が付き、敵機もこちらへ接近。


 敵新型機がミサイルを撃ってきた。回避行動をとって、敵に猶予を与えるわけにはいかない。

 ガトリングでミサイルを撃ち落としながら、敵機へと近づく――が次の瞬間にはもう、敵新型機は目の前へと迫ってきていた。


 ランスによる突きが俺を襲う。

 スラスターを左右に吹かし、回避。

 そしてその隙をかいくぐり、多連ニードル射出機構を振りかぶる。

 

 敵は機体を横へと走らせ、それを回避。

 離されてはいけない。

 ニードルガンでの牽制を行いながら、俺は再び多連ニードル射出機構を敵ボディに叩き込もうとする。


 だが。


 敵機はあろうことか、こちらの右腕を掴みとり、それを防いだ。

 

 マズイ。


 動きを止められた。隙を与えてしまった。だったら次は砲撃が来るはず。あの、味方機を一撃で半壊させた、あの砲撃が。


 なんとか、回避を。


 俺は右腕を分離。そして、機体をねじらせ、なんとか砲撃の射線から逃れようとする。

 

 敵新型機の背中から、砲弾が放たれた。


 片側はなんとか回避したが――もう一方は避けきれなかった。

 多層高位無化装甲が損傷。連続した発光が絶え間なく起き、一気に二十層、ほぼ半数の多層高位無化装甲が削り取られていった。


 なんて貫通性能だ。

 これはスパイラルニードルか? 何時の間にこんなに小型化を――


 スパイラルニードルとはニードルを複数搭載し、貫通特性を強化した機構だ。巨大な弾丸の中に、通常のニードルをスパイラル状に配置。弾丸が着弾すると、中のニードルが着弾点に時間差で打ち込まれ、連続した消滅反応を引き起こす。


 敵新型の強力な砲撃は、このスパイラルニードルに酷似している。

 しかし、スパイラルニードルはその巨大さと重さ、そして弾速の遅さ故に、ウェア戦への採用を見送られていたはず。エイプリルは研究を進めて新装備に転用したのか。


 二撃目を喰らうのはダメだ。しかし、距離を取ってしまえば追いつけなくなる。このまま近接戦でケリをつけるしかない。


 スパイラルニードルはその構成上、どうしても通常よりも巨大化する。いかに発展型と言えど重量もスペースも必要になるわけで、ウェアに搭載できる砲弾にはかなりの制限があるはずだ。無駄打ちをしていないのがその証拠。

 この砲撃はそう何度も撃てないはず――


 しかし、相手は再び砲撃を放つ。機体を上空へと加速させ、回避。その途中で、分離させていた右腕を装着する。


 ダメだ、おおよその弾数が分からなければ読み切ることもできない。今はとにかく気を付けつつ、隣接していくしかない。

 だが、俺の思惑を読んでいるのだろう、相手はランスを俺に向かって突き出した。

 俺はランスを寸前で回避――だが、ランスの先端からニードルが射出。俺の装甲に着弾し、装甲を削り取っていく。


 射撃武装も兼ねているのか、だったらより近接戦を挑むしかない。


 ランスの弾丸を受けながらも、俺は敵機へ接近。装甲が減っていく。その間に、相手は後方へと退避しようとしていた。


 逃がしはしない。加速する隙を与えて堪るか。


 右腕を射出。敵が加速しきる前までなら、こいつでどうにか追いつける。


 敵機は右腕を回避。反応がいい。機体性能もだが、恐らくパイロットも相当目がいい。

 しかも、このパイロットは静的な動きが極めて得意だ。ランスでの攻撃は全て、正確に多層高位無化装甲の少なくなった部分に叩き込んでいた。


 クソ、エイプリルもとんでもないものを……っ。

 

 俺は敵ウェアのランスを躱しながら、ガトリングを打ち込んでいく。そして、絶え間なく右腕を突撃させ、相手に落ち着かせる余裕を与えない。


 が、相手は右腕を蹴り落とす。

 そして、俺へとランスを構えて急接近。


 マズイ、動きが単調になったか――


 これ以上ダメージを喰らう訳にはいかない、回避だ。


 俺は左腕のスラスターを吹かし、真横に移動。ランスを回避しようとするが――


 ――いや、違う。


 脳裏にその言葉が浮かび。

 気が付くと俺は、真横への移動動作を切り替え、上空への回避動作を行っていた。


 ランスが空を切る。完全に、俺の動作に対応できてなかった。

 真上を取った。

 いける。


 敵の背部、砲門へとガトリングを叩き込む。 

 砲門にニードルが着弾。発光が起き、砲門を半壊させた。


 ――なんだ、今のは。


 意識しての動きではない。体が自然とそう反応していた。まるで、何度も何度も繰り返した動作のような――


 だが、俺はこういった動作を無意識的に行うほどやってきたつもりはない。だったら、今のは一体。

 いや、それは今はどうでもいい。

 とにかく、これで突破口が見えてきた。


 こいつは極端にフェイク動作に弱い。一度動かした機体を細かく制御するのが難しいのだろう。つまり、相手の動きをフェイクで誘ってやれば、そこにカウンターを入れ込める――

 

 俺は敵機の背後を取り、回し蹴りを叩き込む。体制の崩れたところに、ガトリングを乱射。そして、蹴り飛ばされた右腕を直撃させた。


 敵機が体勢を崩す。このまま一気に決めてやる。


 敵機がミサイルやニードルガンを放つ。俺はそれの直撃を受けぬよう、左腕のスラスターを噴射して、切り替えし――と見せかけ、全身のスラスターをコントロールし、ステップ。そして、真っ直ぐに突撃した。

 相手はその動きに対応できず、もろに体当たりを喰らう。

 俺はそのまま相手に隣接し、右腕を装着。多連ニードル射出機構を敵の薄くなった多層高位無化装甲に押し付け、乱射する。


 よし、いける。このまま装甲を消し飛ばして――


 そう思った直後、機体が大きく震えた。

 アラートが鳴る。それは多層高位無化装甲が吹き飛ばされたことを示していた。


 左腕の損傷。装甲が全て貫通され、破壊されていた。

 一体なんだ、敵援軍か。

 違う、攻撃は恐らく一発。この威力は、スパイラルニードルしかありえない。


 敵機の半壊した砲から、スパイラルニードルが放たれたのだ。

 先ほどの攻防で使用不能になったと思ったが、そうではなかったのか。


 もし、ボディに直撃を喰らったら確実に耐えきれない。

 一度撤退して回避を――いや、ダメだ、今この体勢から逃げ切れるわけがない。


 選択肢はない。

 奴が次の弾丸を放つよりも先に。

 装甲を削り取るしか。


 どちらが速いか。


 俺は多連ニードル射出機構を更に相手に押し付け、装甲を削っていく。

 その間に相手はもう一度砲を起動させ、俺にスパイラルニードルを叩き込もうとする――


 そして、同時。

 俺はボディにスパイラルニードルの直撃を喰らい。

 俺の放ったニードルが、敵の多層高位無化装甲を突き破り。


 俺達は互いに、地へ落ちて行った。

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