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刹那と永劫の狭間に  作者: 吉岡 澪
叶わぬ願い
20/72

談笑

「ふぅ、元寇の後の日本ってこんな感じだったんでしょうかね」

「いやいやエリオット、俺たちはあくまでも自力で勝ったからな? あっ、暴走した古賀が暴風雨か」


 傷だらけの刹那、髪が乱れた永劫と志願して古賀を背負ったエリオットは貯蔵庫を片付け、会長社長室へ向かっていた。諸々の報告と再び暴走する恐れのある古賀の引き渡しがあるのだ。


 直通エレベーターまで辿り着く途中で、壊れた社内を修復する他の御庭番衆たちを大勢見かけた。

 永劫は労いの言葉をかけ、ひどい怪我をしている者は治療してやり、エリオットは戦いで疲弊した者たちにアルファ波を用いて精神の治癒を行った。


 そしてエレベーター。中ではいつぞやのエレベーターガールが以前と違う制服を着て刹那たちを待っていた。

「みなさん、お疲れ様です。会長もお喜びのことでしょう」


「だといいな。イッキに会長社長室へ頼む」

 エレベーターはぐぐっと加速し、あっという間に目的のフロアに到着した。


 もう何度目か分からない会長社長室。

「失礼します」

「おぉ、入れ」


 上機嫌の会長がそこにいた。それもそのはず。敵の戦力を削るばかりか、メガエネルギーの防衛を成し遂げたのだから。他の三企業に対して優位に立つことができたのだ。


「それで? 勝手にメガエネルギーを取り込んだ馬鹿はどこだ?」

 一方社長は機嫌が悪い。まだ早いと言っていた摂取を古賀が事故とはいえ、行ってしまったからだ。古賀は相変わらず気絶しているのだが。それを忌々しげに睨み、舌打ちする社長。


「古賀ちゃんはこのあとどうなるんです?」

 エリオットが会長に尋ねる。フッと笑う。

「新しくできた太平洋沖収容所に送る予定だ。能力はそこそこのものらしいからな。それにしてもエリオット、古賀のはどんな能力だったんだ?」


「俺にはよく分かりません。手から黒い塊を出していました。Sクラスのバーバラを一撃で葬り去るほどの威力のようで」


 ここで、刹那が口を挟んだ。

「おそらく……影を操る力かと」

 漫画などでもお馴染みの力だが、抽象的なだけに強い。エネルギー元も無尽蔵で、殴る蹴るの効かない相手にもバカ効きである。


「なるほど。ものにすればヤギシフの大戦力となる、か。早く収容所の手配をせねばな」


 最後に会長は永劫たちに尋ねた。

「今回の活躍は見事だった。ボーナスは何がいい? なんでも言ってみろ」

エリオットがまず答えた。

「表の役職での昇進をお願いします」

「よし、じゃあ課長にしてやる。刹那と永劫は?」


「それなんですけど。しばらくの間俺たちに休みをいただけませんか?」

「お願いします……」


「なんだ? 夫婦水入らずってか」

社長がまぜっかえす。


「はい、俺はまだ刹那に新婚さん気分をプレゼントしてやれてないので」

「永劫……」


 会長は頬を染める刹那を見て、ニヤリと笑って言った。

「よしいいだろう。期限は設けないからこれでもかっ、てくらいイチャイチャしてこい。好きなタイミングで戻ってくること!」


「ありがとうございます」


 こうしてヤギシフ御庭番衆たちの戦いはひとまず片がついた。

 強敵を打ち破った刹那と永劫。そして戦いの間ヤギシフ本社ビル内での爆発音などを、その能力をフル稼働し外へ全く漏らさなかったエリオット。望み通りの報酬を手に、会長社長室をあとにした。


 エレベーターガールとともに急降下していった永劫たち。彼らが去ったのを見届けて、社長は会長に話しかけた。

「永劫たちに休暇を好きなだけ与えるなんて。戦力が落ちてしまいますよ?」


 会長はカーテンを手で弄びながら返す。


「いや、いいんだ。ヤギシフにとってもう刹那と永劫は用済みだからな。最後の休暇をやろうというわけだ」


 驚く社長。

「えっ、あの二人の能力は攻守に優れていると前に言ってたじゃないですか」


「誰が能力が使えないと言った? 要らないのは刹那と永劫という人間そのものだ。イチから面倒を見てやったのにサイボーグ手術を渋るわ、強化パーツも入れないわで我慢ならん。能力のDNAサンプルはとってあるから速さ・再生はいつでも再現できるしな」


「はぁ。なるほど」


「それにとある筋からの情報によるとやつらは◯◯の潜伏に一枚噛んでいるらしい」


「◯◯……。あっ、ドクターSですか!」


「そうだ。最後にそれだけは聞き出しておきたいところだな」

「なるほど。ではいつ始末しましょうか?」


「何年か先でいい。どうせやつらは長く休むつもりだろう。その隙をつけばなんでもないことだ。刺客は誰に任せるかだな」


「心酔しているエリオット以外ですね。しかしあいつらを倒すとなると……」

「いや、一人だけ適任がいる」


 会長は窓の外を見つめながら呟いた。その表情は社長もぞっとするものだった。


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