第九十話 空白と刻限
【注意事項】
本作品には自殺や精神的に重いテーマが含まれています。
読む際にはご自身の心身の状態を十分にご考慮ください。
心の不調を感じた場合は、無理に読み進めず、専門機関や信頼できる人に相談されることをおすすめします。
※この作品はフィクションです。登場人物・団体・事件はすべて架空であり、現実の自殺や暴力を肯定・助長する意図はありません。
?――「リミットまで、残り一年二か月」
赤林町。
夕暮れの河川敷を、あかしが一人歩いていた。
川のせせらぎだけが静かに響く。
その姿を、数人の男女が遠くから見つめていた。
双眼鏡をのぞく男が、小さく告げる。
「目標を確認。あかしです」
イヤホン越しに返答が返る。
『距離、およそ百メートル』
『周囲に一般人一名。接触可能です』
「あのカバンが気になります」
携帯端末を確認していた男が眉をひそめた。
「カバンから反応があります。しかし、あかし本人からは反応がありません」
『数か月も消息を絶っていた人物です』
『対象よりも、カバンの回収を優先してください』
「了解」
男たちは互いに目配せを交わし、静かに動き出した。
その時だった。
一人のホームレスが、あかしへ歩み寄る。
「よう、久しぶりだな」
「今までどこへ行ってたんだ? みんな心配してたぞ」
あかしは照れくさそうに頭をかいた。
「ごめん。ちょっと散歩に出たら帰れなくなってさ」
「色々あった。でも、もう少ししたらまた戻って来ようと思ってる」
ホームレスは笑う。
「痩せたじゃねぇか」
「ちゃんと飯は食ってるのか?」
「まあ、なんとか」
「お前が帰ってこねぇから、みんな噂してたんだ」
「悪かった」
「無事なら、それでいい」
「無理に引き止めたりはしねぇ。それが俺たちだからな」
あかしも、少しだけ笑みを浮かべた。
しかし、その穏やかな空気を切り裂くように、低い声が響く。
「……それは困ります」
振り返ると、数人の男女が静かに立っていた。
全員が黒いパーカーに身を包み、表情を隠すようにフードを深くかぶっている。
「ようやく見つけましたよ、」
「あんたたち……何者だ?」
男は無表情のまま答えた。
「あなたに名乗る理由はありません。」
あかしは反射的にカバンを抱き寄せる。
「触るな!」
男たちが一斉に距離を詰める。
ホームレスが叫んだ。
「離せ!」
しかし、その声より早く、男の一人がスタンガンを押し当てた。
「あっ……!」
電流が全身を駆け抜ける。
あかしは抵抗しようとするが、二人に押さえ込まれ、膝から崩れ落ちた。
「おい!」
ホームレスが駆け寄る。
もう一人の男が背後へ回り込む。
鈍い放電音。
ホームレスもその場へ倒れ込んだ。
「対象、確保」
「周囲、異常なし。」
「撤収。」
一人がカバンを持ち上げる。
携帯端末を見る。
「……反応を確認」
「慎重に運べ」
男たちは周囲を確認すると、闇へ溶け込むように姿を消した。
いつもご愛読賜りまして、誠にありがとうございます。
重く深いテーマに向き合いながらも、登場人物たちの物語はなお続いております。
彼らの心の揺れや選択の行く末を、これからも温かく見守っていただけますと幸いに存じます。
一歩ずつ前へ進む姿を、読者の皆様と共に感じられますことを心より願っております。
次回も変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
次回もまた、どうぞよろしくお願いいたします。
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次回更新日:8月13日(土)14時(社会情勢によって変動。)
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